「知覚と行動の結合」 | 井上正幸のブログ

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>集団侵入型ゲームであるラグビーでは、意識的に考えるよりも速く決断を求められることが多いが、これらは本能的な反応ではなく、長期記憶内で符号化された習慣であり、知覚に基づいて行動を決断するよりも速く関連付けられている。

したがって、コーチの仕事の一つは、どんな状況でも効果的な決断ができるように選手を指導することだ。これはよく「知覚と行動の結合」と呼ばれる。
「最高の教師」ダグ・レモフ


コーチングにより、選手はその状況で取るべき行動を理解するが、それだけでゲームで使えるようにならない。
多くの指導者の悩みでもあるが、「長期記憶にエンコード(符号化)されていない」「練習ではできるのに試合ではできない」というものがある。これには、「知覚と行動が一致していない」可能性がある。

長期記憶にエンコードするためには、同じ状況の練習を反復するだけではなく、同じ目的の別の練習を入れたり、違う練習を挟んだり(ランダム練習)、間を空けて練習をする「リトリーバル練習」などを行う必要がある。

「知覚と行動が一致していない」問題については、局面的な練習を積み重ねることで、指導者が理解しているつもりになっている可能性がある。

練習しているその状況とゲームの状況は似ているが同じではない。
指導者が用意した状況が、選手にとっては違うように知覚している可能性は大いにある。

また、ゲームには文脈があり、毎回セットされた局面があるわけではなく、前の局面の影響を受けて、後の局面に影響を与える。

つまり、常に予想しながら意思決定しているのであり、セットプレイでない限り、急にその局面が現れるわけではない。

そういう意味では、ゲームを分解した練習を組み合わせてもゲームを理解できるわけではない。
必要な知覚要素が適度に反復できるよう、段階的に単純化したゲーム(練習)を行い、その知覚要素がゲームのどこに必要で、どう行動をすればゲームにどういった影響を与えられるのかを知る必要がある。

そうして「知覚と行動」を一致させていく必要があるように思う。