制約主導アプローチでは、その競技のキーとなる知覚情報を取り入れる「代表性」とゲームの複雑性を減らすために、局面を切り取る「タスク分解」ではなく、ゲームの自由度に制限(制約)をかけたり、人数やコートの広さをコントロールすることで、ゲームを簡単(単純)にする「タスク単純化」。
さらに、運動を安定させるために反復練習するだけでなく、DFといった「外乱」やそれを受けて心理的なプレッシャーを感じるといった「内乱」が常にあるので、運動を「安定」させるためだけでなく、補正するために「変動性(バリアビリティ)」のある練習が必要になってくる。
変動性の高い選手というのは、色々な動作パターンを持っており、それを身に付けるためには、バリアビリティの高い練習が必要になる。
ゲームの難易度を下げるための「タスク単純化」と「バリアビリティ」の高い練習を作るためには、「制約」を操作することで可能となる。
ラグビーで、例えば「DFのポジショニング」に課題があるとして、「マーカーを置いてそこに向かってポジショニングしてDFする」という「タスク分解」した練習では、ラグビーの「BDを積み重ねることでスペースを作る」という「代表性」がない。
しかし、それをそのままゲームにすると複雑なので、人数を減らす「small side game」で「タスク単純化」を行う。
単純に人数を減らすだけでは、狙いとする「ポジショニング」を効果的に学習できないので、ATのボールの動かし方に制約を加える。
ラグビーのキーとなる知覚情報は「BDの積み重ね」であり、BDが起こる度にATもDFもポジショニングを行う。
つまり、BDの起きる地点に制約をかけることができれば、「ポジショニング」という「タスクを単純化」することができる。
一般的にラグビーのBDは3人で作るので、例えばATを6人にして、BDを3人、残りの3人でラインを作る。
「ATはBDから反対側に移動しない」という制約をつければ、「左から右」「右から左」と攻撃方向を一方向に限定し、DFはATの攻撃を考えずにポジショニングスキルを高めることができる。
DFがこの練習の制約に適応すれば、ATを3人増やして、「左と右」の二つではなく、「左、真ん中、右」と攻撃チャンネルを三つに増やす制約操作を行い、バリアビリティレベルを維持する。
攻撃チャンネルが三つに増えることで、DFは真ん中にBDがあり時、左右の攻撃に対応するために「フォールディング」というスキルが必要になってくる。
制約は「境界線」の効果があり、学習してほしいスキルへ制約を操作する。裏を返すと、スキルの境界線を制約操作によって減らしていくことが目的であり、こうした制約操作を「ガイデット・ディスカバリー」と言う。