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城郭模型製作工房

城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

前回以降、下二層の丸瓦の貼り付けに、延べ18時間を要しました。まだ腰屋根の丸瓦が残っていますが、大天守の丸瓦、ほぼ完了です。

ひとつ大きな山を越えた気がします。

このような単純な作業を延々と繰り返す時は、少しでもモチベーションを保ちつつ、先に進めていくために、いくつか工夫をしています。

【工夫①】
瓦を飛び飛びに貼り付けながら進める。
こうすることで、まだ埋まっていない空白を早く埋めたい!と自分に思わせます。石垣を数千の単位で彫る時もこの方法は有効です。


【工夫②】
キリのいいところで休憩しない。
休憩はキリのいいところで取りたくなりますが、キリのいいところから少し進めて中途半端にしてから休憩します。そうすることで早く次の段階に進みたいという気持ちを保ちます。
今回も、丸瓦が終わったところで寝たかったのですが、ちょっと頑張って窓の柱を入れたところで休みました。そうすると次の日に窓を早く進めたい!と思いながら寝ることができます。
建築は大量な部材の寄せ集めかつ、その単純な繰り返しが美しさの元です。模型作りはその繰り返しの作業に耐える精神的な粘り強さが必要だとつくづく感じます。

だいぶ形が出来上がってくると、ここまで頑張って作業してきた甲斐を感じます。


これは東面。初重の窓は現在のコンクリート天守とは形状が違います。これは天守の平面古図の記述通りに窓を配置した結果です。

これから窓と破風に進みます。

小天守が手付かずなのが波乱の予感です。

ホビーショーまでに間に合うか!?
熊本城の明治期の古写真を再現した模型の製作です。
1/150スケールです。
ウッディージョーの木製模型の芯だけを使って、外側はプラ板とプラ棒で自作しています。

これはホビーショーに出展したあと、さらに拡張して西は御肴部屋櫓、東は御裏五階櫓、南は耕作櫓御門あたりまで再現したものにするつもりです。

今になると一月から少し進めていて本当によかったと思います。
今日から膨大な瓦地獄に突入します。
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全国のヨドバシカメラから1mmハーフラウンドのプラ棒を買い占めて品薄にさせているのは私です。すみません。
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大天守の上三層の丸瓦が終わりました。

しばらく地味な作業が続きそうです。



ホビーショーに出展する2作品のうちの1つ、フジミのブロンズ薬師寺東塔が完成しました。
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絶版キットを出してみようという趣向です。

なんとも言えない高級感と存在感。

2日で完成の予定通りに作業が進みました。製作過程の昨日の続きです。

屋根の腐食処理をしていました。
屋根にサンポールを塗って一晩乾かした状態です。すでにだいぶ腐食が進んでいます。
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これに塩水を塗っていきます。
説明書に従うと、水50ccに対して塩100gとなっており、飽和状態を通り越して塩を塗りこむような感じです。その結果、以前は屋根に塩の結晶が吹き出てしまい、あまりきれいに仕上がりませんでしたので、今回は勝手にアレンジして、濃いめの塩水を塗りました。
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するとさらに腐食が進みます。説明書だとこれで処理は終わりですが、今回は最後に水に浸して、浮き上がった錆を流して表面を馴染ませました。
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屋根を自然乾燥させている間に相輪の塗装。
実物では銅製の相輪はこのブロンズキットではあべこべに銅被膜が施されていません。
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何色にするかかなり迷いました。塔の本体が錆の出たナチュラルな風合いなので、相輪は金で引き締めることにしました。
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金が剥げた古色仕上げもやってみたのですが、うるさすぎてボツにしました。
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屋根の乾燥が終わると組み立てです。パーツが変形して屋根の反りが合わなくなっているので、クリップで止めて流し込み接着剤で接着しました。
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銅被膜が施された面同士はプラモデル用接着剤ではくっつきませんので、多用途の強力接着剤で固定しました。重しをのせて圧着させます。
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組み立てが完了したところです。台座はフジミの陽明門のケースの台です。
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銅の腐食のやり方は何種類かあります。基壇の色が屋根と違うのがお分かりかと思います。
これはサンポールを塗って乾かしたあとに、屋根はそのまま塩水を塗るのですが、基壇は塩水の前に一度水に浸して表面を流しています。塩水を塗る前に水で流すだけでこれだけの色の違いが出るのです。
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柱や斗栱などの木部は銅被膜をワイヤーブラシでこすって銅の鈍い輝きを出しています。
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屋根の腐食は化学変化に任せるしかなく、思い通りにいきません。そこがこのキットの面白いところです。今回は綺麗な錆が出たと思い、満足しています。
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光の当たり具合でいろんな表情が出ます。
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実物をご覧になりたい方は静岡ホビーショーにて!
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いかん!ホビーショーが迫っている!

この時期に突然とある雑誌から作例の依頼が舞い込み、ひさびさに焦りながらの製作でした。
またお知らせ致しますのでお楽しみに。

そして原稿の執筆も終わりひと段落したところで、ホビーショー作品が止まっていることに気づく。
いかん!

しかも今年は2作品の出展です。まずひとつ終わらせて少しでも荷を軽くしたいところ。

ということで今日と明日の2日日でブロンズの薬師寺東塔を仕上げます。
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このキットは前にもご紹介しましたが、フジミの建築プラモデルに銅の被膜を特殊加工したものです。

もちろん絶版で店頭で見かけることはほぼありません。
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このシリーズがあることを知ってから、その魅力にハマってしまい、ヤフオクでたまに出品されているのを見ると落札してきました。
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現在、興福寺五重塔、薬師寺東塔、陽明門、名古屋城、姫路城を所有しています。部屋にズラリと並べたいですね。

ところがなかなか完成に至らず、詰みプラモになっていますので、今回、ホビーショーに出展!ということで強制的に完成させる手はずで会の方に申請したのでした。

それでは製作です。

これが銅被膜特殊加工が施されたパーツ。独特の濃い緑っぽい色をしています。
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ワイヤーブラシが付属していて、それで磨くとこのように銅の鈍い輝きが出ます。
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今回は2日で完成させるため、製作は効率よく手順を組み立てました。

まず白壁パーツをエアブラシで塗装しました。
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これが乾くのを待つ間に、先ほどのワイヤーブラシで木部パーツを磨く作業を行いました。続いてランナーからの切り離し。
銅被膜の加工は、プラパーツに大きな負荷がかかるのか、このようにパーツが曲がっていることがよくあります。
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姫路城の石垣などはもうぐにゃぐにゃ。これを矯正することを考えるとなかなか手が出ないというのも完成に至らない原因で…(笑)
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東塔は少し反りが出ているくらいでしたので、このようにクリップで止めてから流し込み接着剤で白壁と接着していきました。
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組み立ててみると、銅の鈍い輝きが重厚です。
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続いて屋根。
屋根は薬品処理をして、緑青を吹かせます。

銅に錆を出す処理方法の説明書には2つ種類があるようで内容が違っています。
片方はトイレの洗剤と酢を使うやり方でこれは名古屋城に入っていた説明書。もう片方は酢酸を使うやり方で、こちらは名古屋城以外のキットに入っていました。
酢酸は近くの薬局で売っておらず、入手できなかったので、トイレの洗剤を使うやり方の説明書に従いました。
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トイレの洗剤サンポールを筆で丁寧に塗っていきます。独特のにおいがするので換気はしっかり。
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これを日陰で乾かします。乾くまで6時間以上かかるので、その間に屋根以外の部分の組み立てを終わらせます。

こちらは作りかけの興福寺五重塔。薬品処理が終わって緑青が出ています。東塔の屋根もこのようになる予定です。
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明日は薬品処理の続きをやって完成までいきます。
先日から岡山城の本段御殿を作る中で、古絵図に出てきた「日相」と読める文字。
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ツイッターでは呟いたのですが、意味が分からず困っていました。
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崩し字辞典を見てみると「桐」の方が近くも見えました。

「白桐」では、というご意見もいただき、豊臣の紋である桐が本段御殿の中庭に植えられている…という想像はとても惹かれるものがありました。

その後、他の絵図も見てみると、見つけました。
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「日相」が並んでいる。

「日相」と書いてある部分の特徴は、一坪くらいの、中庭状に建物に囲まれた狭い空間であることです。
そういう場所を指す古語なのか??

そこで役に立つのが
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国語辞典。

にっそう、じっそう、にちそう、にちあい…などで引いてもなかなか出てこない。

そして…
たどり着いたのが恐らくこの言葉です。
ひあい。
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家屋と家屋の間を「ひあい」というらしい。

別の辞書では
「建て込んだ家の廂と廂が突き出て日が当たらないところ」となっていました。

「ひあい」の当て字で「日相」となっているのでしょう。「壁合」と書いて「ひあい」と読ませる場合もあるようです。昔の文献は当て字の場合、言葉の音をまず見当をつけてから探さなければならないので、ちょっと遠回りになりました。

一つ氷解…

本段御殿の製作は今止まっていますが、そのわけはまた近日中にお知らせします!