金閣寺驚きの創建時の姿③ | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

前回の続き。
今回は金閣の色と舟入玄関の存在など。

おなじみの金閣寺です。
私も初めて訪ねた時はその金色まばゆい姿に思わず歎息しました。

現在の金閣は二階、三階が金箔押しで、二階、三階の回り縁の床面は黒漆塗りになっています。

以前作った模型でも

しかしながら、この金色の姿は、昭和の再建以降のもので、焼失前は東山の銀閣と同じように、簡素な素木の姿をしていました。
古写真から、現在は黄金一色の二階部分にも白壁があるのが分かります。

もともと金閣はどの部分に金箔が貼られていたのでしょうか。

『足利治乱記』に
金泥ヲ以テ悉クダミタレバ京童ドモ是ヲ金閣トゾ申シ奉ル
とあり、金で塗りあげた姿から、かなり早い段階で金閣の呼称があったことが分かります。

ルイス・フロイスも『日本史』のなかで
廻廊がついた上階はすべて鍍金されていた
と書いています。

金箔が押されていたことは間違いなく、焼失前の金閣にも金箔が残っていました。
しかしそれは3階のみで、2階には金箔のあとが全くありませんでした
紅葉山文庫の『仕様寸法付之帳』は3階について「内外共に惣金 但し、腰縁は真塗(漆塗り)」と記し、さらに腰組と高欄が真塗りであったことを重ねて記しています。

つまり、3階の外壁と内部が総金であって回り縁と高欄、腰組は漆塗りであったということで、これは実際の金箔の痕跡と一致しています。

金閣の焼失後、焼損材を細かく調査した村田治郎博士も「2階は内外ともに黒漆塗りであったことが明らかになった」とされているそうで、つまり、金箔が押されていたのは3階だけで、3階の回り縁とその腰組、2階は黒漆塗りであった、というのが事実のようです。

ではなぜ昭和の再建では2階まで金箔を押したかというと、ひとつの花器の存在がありました。
それは明治修理の際の隅木の古材を使った舟形の花生けで、それが金色だったのです。
この点について宮上氏は、「隅木はもっとも風化を受けやすいところであり、二階の内部にさえ残らなかった金箔が、隅木に残るなどということは、まずありえない。」とされ、その金色は花器にした際に施されたものとされます。また、この隅木が唐様であり、当初和様で統一されていたはずの創建時の2階の部材ではないと指摘されます。

(一枚板から造り出した火灯窓)

実際の建物でも、3階では壁面を一枚板で、火灯窓も造り出しで金箔押しに配慮してありますが、2階は羽目板を釘打ちにした外壁で、金箔仕上げ向きにもともとなっていない、という点も指摘されています。

二階三階ともに金色となったのは、あくまで昭和の再建以降のことです。

そしてもうひとつ。
今回の創建時の金閣の模型では、唐破風の舟入玄関が付属しています。

これは宮上氏の復原図にある通りなのですが、この部分の根拠は、現在も見ることができるこれです。

金閣脇に一直線、等間隔に並んだ石列。
夜泊石といって、池の中に一直線に並べる庭石をいいます。西芳寺や大覚寺の大沢池、積翠苑の夜泊石が有名です。

金閣脇のこの石列も、あくまで庭石であるという説明がされていますが、この間隔を測ってみると、6.5尺の等間隔で、梁間は13尺というキリのいい数字となっています。明らかにこれは礎石である、位置からして舟入玄関であろう、という見立てがされています。



93年には電気探査による地中の解析が行われ、金閣の東側は間違いなく池であったとされています。

金閣は池の中に浮かぶ姿であったのかもしれませんね。

ここで模型の製作過程をダイジェストで。
金閣はフジミの1/100キットの改造です。実測図を元に開発されたキットで完成度が高いので、2階の屋根を自作するだけで簡単に創建時の姿になります。

屋根を張り

妻面の木連格子。前包みが無く、屋根から直接格子が立ち上がる、室町期の形式です。木連格子は縦の材が手前になります。

破風板、登り裏甲、軒付を造形。
今回、キットの改造で行ったため、2階の軒裏は唐様のままです。また、一階の北面は創建時はすべて開口部であり蔀がはいっていたようなのですが、それも再現できていません。二階東西の窓も作っていませんので、厳密な復原模型にはなっていません。

舟入玄関の製作です。
こちらは透けた建物なので、実際の建物と同じ構造で作成しました。

柱を立て、貫でつなぎ、桁をのせ、虹梁を渡します。

束を立て棟木を渡します。

化粧垂木を並べていきます。

化粧裏板を張り、垂木の先に茅負を置きます。

野桁を置き、野垂木を並べます。野垂木は太い材で簡略化しています。軒先には裏甲を取り付けます。

裏甲の上に軒付を置き、屋根面を張ります。

蓑甲部分を整えて棟と獅子口を置いて造形完了。

本物と同じ構造なので、屋根の断面もこの通り。

塗装前の状態です。


さて次回は、もうひとつの重要な幻の建物、天鏡閣についてです。