岡山城本丸模型 中の段の諸櫓 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

岡山城本丸模型は中の段の櫓が月見櫓以外で粗塗りまで終わりました。

こちらは造形完了時。

引き続き下の段の諸櫓に進みます。

丸瓦が膨大で、プラ材を追加しました。
30袋。
総延長75メートル分。
実寸に換算すると22.5キロメートル分。
これでも足りるかちょっと心配だったりします。

櫓を1つずつ見ていきます。
塗装は粗塗りですのでまだ汚いです。お許しください。

【大納戸櫓】
中の段の南西隅にたつ大櫓です。沼城天守を移築したといいます。

本丸のもっとも目立つ場所に建っていることもあり、古写真は比較的残されています。

石井正明氏による復元図面もありますが、この復元図は古写真や絵図と上重の大きさが対応しません。

牙城郭実測図では上重は四間四方となっています。

古写真をよくみると妻側四間、平側はそれより狭く3間半くらいだと思われます。

今回はその寸法で作りました。

計算したわけではなかったのですが、結果的に上重の平側は丸瓦の本数も同じになりました。(模型は五寸丸瓦でつくっています。)

古写真と大変似たプロポーションとなりました。
下二重は復元図面の通りですが、二重目西側の窓の位置も若干違うようですね。

図面と模型ではこれだけ違います。

復元図面は視覚的に影響が大きく、櫓のイメージをこの図面で持っておられる方も多いと思います。より正確な復元図の作成が必要だと思います。

この図面にはもう一つ問題があり、それは大納戸櫓につながる多聞櫓の高さが低すぎることで、この復元図面の高さだと伊部櫓との接続部分で古写真のようなつながりを確保できません。

このように大納戸櫓の一重目庇より高い位置に屋根が来ていたはずです。

古写真にも多聞櫓の棟が写っており、今回の模型でも同じ見え方をします。

【伊部櫓】
中の段の新しい石垣上に建ちます。
建物も石垣と同じく、本丸内では新しいものです。

東西入母屋に直交する上重をのせる二重櫓です。南西隅に石落とし、南にむけて軒唐破風を設けます。

壁面は総塗籠です。
古写真を見ると、窓の格子は塗籠ではなく素木のままです。

牙城郭実測図には高さの記録が無く、現存の月見櫓を参考にしました。つくってみると、二重目の軒高があと2ミリ強低くした方がよかったようです。
つくってみないと分からないこともあります。実物よりスマートな櫓になりました。

【数寄方櫓】
中の段の西側凸部の北西隅の櫓です。伊部櫓とは多聞櫓で繋がっています。

伊部櫓と数寄方櫓はちょうど彦根城の天秤櫓のように兄弟のように並びます。しかしながら、屋根の向きや意匠を違えて、変化を持たせてあります。

数寄方櫓は三方入母屋のような下重に上重をのせる形です。一重目の西側に軒唐破風を見せます。西と北に格子出窓を設けています。

数寄方櫓は古写真がありません。
牙城郭実測図と月見櫓を参考にしました。

【小納戸櫓】
中の段の北東隅の櫓です。西と南に多聞櫓を接続します。

南北棟の入母屋の下重に直交する棟の上重をのせます。東向きに軒唐破風をつけます。

多聞櫓には、さらに廊下門が繋がります(製作はこれから)
あ、石落としを作り忘れてる。
追加しておきます。

それにしても牙城郭実測図は大変正確です。
建築関係者がつくったことが一目瞭然。出し桁の腕木で間数がわかるようになっていて、測量図から起こした地形にぴったり納まるのです。

ほとんど調整なしでいけました。
おそるべし牙城郭実測図。

下の段の櫓にいきますよ!