岡山城 舂屋の考証と製作 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

岡山城全景模型、エッチングが出来るまでに製作を進めます。

今回は舂屋(つきや)をつくります。

舂屋とは穀物の精製所だそうです。
本丸下の段の南側にあります。
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平面を見てみます。
「御城内御絵図」の舂屋。
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「御城御書院御絵図」の舂屋。
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無名の絵図の舂屋。
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少しずつ違います。
「御城内御絵図」の平面が格子窓や出入口の表記もあり、一番詳細ですので基礎資料としました。

一番の問題は屋根のかけ方です。
古写真に舂屋が写っています。これを見ると南北棟の入母屋の建物に煙出しのついた切妻(?)の屋根がL字に取り付いているように見えます。
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南面と北面の六間が全面格子窓になっているので、ここを一区切りの入母屋部分と推定します。
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土間部分がL字形に取り付くことができます。


問題はその下の濡れ縁のある「御用所拾畳」と「八畳」の部分です。


ここでもう一度写真をよく見てみます。
木の隙間に隅棟が見えます。勘のいい方はお気づきかもしれませんが…
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この隅棟は入母屋部分に繋がりません。
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ということは木に隠れた部分にもう一つ屋根がある可能性があります。
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まず古写真から、入母屋部分の屋根の勾配は7割を割り出しました。

これをもとに屋根をかけてみました。

しかし問題が起こります。
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古写真では手前に内堀沿いの土塀がありますが、この土塀は、下の段の地表から2.8メートルの高さの石塁の上に建っています。

古写真から土塀の高さを割り出し、2.8メートルの石塁の上に置いてみると、黄色のラインまでが土塀に隠れて見えないことになります
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しかしながら古写真では、入母屋の妻面が全て見えています。また、先ほどの入母屋に繋がらない隅棟は、この屋根が入母屋だとすると土塀の上に隅棟が見えることはありません。
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ということで修正するとこのようになります。
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修正点は
●入母屋の妻壁を南北の外壁ラインより一間半内側に入れた。
●座敷部分の屋根を寄棟にした。

こうすることで古写真通りの見え方をするはずです。

製作です。
壁面を立てて
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屋根をはっていきます。
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屋根の完成。雨仕舞が少し気になりましたが、立体にしてみるとそこまで無理はなさそうです。
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こんな感じ。
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古写真との比較。同じに見えるでしょう?
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壁面を作って舂屋は完成です。