童友社彦根城の塗装③仕上げと瓦の話 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

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童友社の彦根城を使ってお城プラモデルの塗装法をご紹介しています。

今日は屋根を中心に質感表現を加えていきます。

瓦屋根というのは、石垣よりも難しいのではないかとずっと思っています。

お城の屋根の瓦には、ほとんどの場合、銀色をした「いぶし瓦」が使われます。
彦根城は平成八年まで改修が行われ、屋根瓦の葺き替えと外壁の塗り替えがされ、ピカピカの姿となりました。改修後間もない頃の写真ですが、このように屋根は美しい銀色です。
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工房から見たうちの屋根もいぶし瓦です。
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そして、このいぶし瓦の大きな特徴は、経年変化によって独特の色むらが出るということです。
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三州瓦メーカー山平さんのブログより。「いぶし瓦と釉薬瓦の違いを分かりやすく書いてみました」)

彦根城も改修前はこのような屋根でした。
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個人的にはこれくらい古くなった屋根が大好きです。

この迫力!
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現在の彦根城の屋根はこのような感じ。
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天守はまだあまり色むらは出ていませんが、付櫓と多聞櫓は色むらが出ています。
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また、厄介なのは、いぶし瓦は見る角度や光の当たり具合で、黒く見えたり青っぽく見えたり、そのまま銀色に見えたり、と色が一定でありません。
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これを再現するには、単色表現では無理ですので、いろいろやっていきます。
付櫓と多聞櫓は丸瓦に色むらをつけていきます。地色のダークシーグレーにフラットホワイトを混ぜて明るくした色を丁寧にのせていきます。
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さらにもう少し明るくした色も使い、色むらを入れていきました。

天守には色むらは入れません。
その後、屋根全体にかなり薄めたエナメルのフラットブラックを丁寧に塗り伸ばしていきます。全体に黒の薄いベールをかけるイメージです。
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これだけではムラが出て薄汚れた感じにしか見えませんので、先ほど使ったエナメルのブラックを少し濃くしたもので平瓦の溝を一本一本なぞっていきます。
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するとこんな感じになります。
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天守は色むらなし。目で見た状態が写真に写りません…薄めたエナメルの効果でほんの少しツヤも出ます。
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前後比較です。
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屋根が引き締まりました。
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自然光に出すと明るい色に見えます。
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(天守の大棟の金の飾り瓦は、金がとっくにはげ落ちているようなので再現していません)

ちなみに、このキットは瓦のピッチが小さすぎます。
ここでついでに瓦割の話も…

城の瓦は平瓦と丸瓦を使った本瓦葺です。
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この丸瓦と平瓦の割付ですが、屋根の大きさによってその都度計算されるようですが、基本的な比率があるようです。

まず、平瓦と丸瓦が均等になるのが最も美しいとされます。ところが、丸瓦は半円に盛り上がっているので、目の錯覚で平瓦の方が広く、丸瓦の方が狭く見えてしまいます。そこで、丸瓦50、平瓦45の比率にすると均等に見えるのだそうです。
オーソドックスな割付は丸瓦の芯芯で9寸5分割。つまり丸瓦5寸、平瓦4寸5分です。土塀などでは8寸5分割も使われるとのこと。
(9寸7分や10寸も見たことがあり、自由度が高いようですが…)

熊本城模型もほぼ図面通りで丸瓦は1.5mmの半円を使いました。つまり5寸丸瓦ということです。
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この彦根城は約200分の1スケールなので、丸瓦は0.75mmくらいが相当ですが、このキットは0.5mmくらいしかありません。瓦のスケールはちゃんと280分の1ということか??

100分の1くらいのスケールだと、いぶし瓦の色合いや色むらも理想的に表現できますが…
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スケールが小さくても、屋根瓦のモールドがしっかり深ければこのように細かい表現が可能です。

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他に手を入れたところは…
窓を全て塞ぎます。エバーグリーンにブラックのプラ板があります。これを窓の裏側から貼っていきます。
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プラ板を黒く塗ってもいけますが、これを使うと塗料の溶け出しの心配がありません。窓がより引き締まります。
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下見板も少し塗り直しました。
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水でジャブジャブに薄めたアクリルの茶系で匂いをつける感じで。
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あと、ごくごく薄めたエナメルで破風板などに陰影をいれています。
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ここまで拡大するとさすがに恥ずかしいですが(六葉の上塗りもできてない…)、この度は水性アクリル塗料の上から薄めたエナメル塗料を重ねる塗装法をご紹介しました。
下見板だから焦げ茶、屋根だからグレーというような単色では表現できない、重層的な色彩が生まれますので、いろいろ応用してやってみてください。


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このあと天守には突き上げ戸などもう少し手を入れて、次回からは天秤櫓とジオラマ部分の製作です!