豊臣大坂城全景【石垣始めました】 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

ようやく本格的に豊臣大坂城を進め始めました。

方向性に迷いが生じたのが外堀の外側の岸です。

これは妻の模型ですが…
現在の大阪城では外堀の城外側も高い総石垣になっています。
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このイメージが強烈に残っています。私も初めは何の疑問もありませんでした。

桜井先生の縄張り復元図では城内側は犬走りを巡らせた二段石垣、外岸は一段の総石垣になっています。城内側が二段になっているのは、技術の過渡期で高石垣がまだ出来なかったのではということで、本丸が三段の石垣になっているのも同じ理由と言われます。
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冬の陣図屏風の描写も二の丸の護岸は石垣の上に樹木が描かれていて、その上に塀や櫓が建っているような表現になっているので、江戸城の桜田堀沿いのような盛り土が見られたのかも、という推測は以前の記事で書きました。

そうすると堀の外側が一段の高石垣というのも矛盾しているような気がしたのです。(現在の大阪城は徳川期の盛り土でかなり城内が高くなっており、城外の護岸は城内側より低いのですが、豊臣期の二の丸の地表がどの程度であったのかはよく調べられていません。)

そこで同時期の城を見て見ると、案外、城外側の護岸が土塁であることが多い事に気付きました。

会津若松城。写真左側が外側です。
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熊本城。宇土櫓外の空堀は城内側は石垣、城外側は土塁です。
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秀吉の伏見城。こちらは城外側も石垣です。しかしほとんどの石垣は土塁の上に築かれているようです。
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二の丸までの復元CGなどはほとんどが徳川期のように城外側まで総石垣になっているので、今までそうだとばかり思い込んでいました。

困った時はご依頼主にご判断を仰ぎます。
話し合いの結果、二段石垣や芝土居も織り交ぜつつ、イメージの強い総石垣の雰囲気を残しつつ、ということになりました。

広く指摘されることですが、徳川期の大坂城の石垣は、江戸城や名古屋城より立派で日本一。
現在の大阪城に見慣れていると、江戸城の石垣に使われている石のサイズや土塁の多さに、初めは驚いたものでした。

しかし、別の言い方をすると、それだけ徳川期の大坂城が破格であって、豊臣時代の記憶を何としても消し去りたいという、徳川家の思いの強さを改めて感じたことでした。

さて模型です。

石垣の張り込みまで進んでいます。

これは下塗りの途中。
今回は表面に和紙を貼り込みました。
スチレンボードのつなぎ目を隠すために切れ目ない素材で地面を覆いたいと思い、色々試して和紙が一番馴染みました。
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全面に下塗りをして…
この濃い茶色に覆われている時が、工程の中で見た目が一番悪い時です。

桜井先生は、現在の西の丸は拡張されているとおっしゃっておられ、どうするか迷いつつ、現在の外岸のラインと平行して内岸をつくりました。
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かなり小さいのですが、できるだけ角をシャープにと思って進めています。前回のように隅石はあとで処理をするので隙間があいています。
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生玉口の馬出し。発掘調査で堀障子が出て話題になりました。堀障子といえば、東日本に多く見られる、堀内の障壁で、堀を越えようとするためには足もとをとられ、細い畝状の部分を通れば狙い打ちされる、というものです。
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ちょっと古めかしいこの装置が出土したことで、総石垣のイメージのある大坂城の姿が覆されたと指摘する学者さんもあります。冬の陣に際して急造されたかもしれず、使えるものは何でも使うという豊臣家の姿勢が形になって現れたのかもしれません。

現状ではちょっと気持ち悪いですが、発掘調査の図面の雰囲気をそのまま写しています。最終的には畝には草を生やし、窪地には水が入ります。
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ちょっと予定より遅れていますが、熊本城の製作があまりにひどい惨状だったので、製作はどんなに延びても1日10時間まで、土日は休むというガイドラインを決めました。

来年までのご注文を頂いているので、健康であることが質に直結します。いつの間にやら作家を名乗って製作するようになり、1つ1つの作品に対する責任の重さを感じています。

つい先日も、生涯で一度しか作らないだろうという大型のご相談をいただき、そのご依頼が固まるとその次は早くて来年中頃以降になります。今までも実は合間にオンラインショップの受注製作品も出ており、オーダーメイドのお申し込みは一時お休みすることを検討しています。

近日中にはっきりしたことをお知らせいたします。