熊本城復興への道のり | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

熊本城模型が記事になりました。


熊本城はやっと本格的な修復が始まりました。

復旧までには20年、634億円の費用がかかると見込まれています。

城郭模型製作工房も、復興城主となるべく、手続きを進めています。
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(模型の白線より上は明治の積み直しの部分)

復興にかかる費用のうち、425億円が石垣の復旧のための費用です。

城内各所で崩落した石垣には、現在、落ちた石に1つ1つ番号が振られています。

城内に並べられた石。
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(読売新聞報道写真より)

全てを一つひとつ元の位置に戻していくのだそうです。
気の遠くなる作業です。

しかし。ちょっと待って!
というのは…

今回の地震で崩れた石垣の大部分は、明治の積み直しの部分です。
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(下の模型の白線より上は明治の積み直し部分)

広島大の三浦先生が被災直後に行った調査によると、


●昭和、平成の積み直し部分の50%が崩壊。

●明治に修復した石垣は100%が崩壊。

●清正時代の石垣は2%が崩壊。

つまり、崩れた部分は、地震に弱い積み方になっているわけです。特に明治が下手くそで地震に弱かった。なんてったって全壊。清正時代はさすが!地震でもほとんど壊れていない。しかしこれは大きな教訓です。

石をただ単に元の位置に戻していって被災前のように厳密に復旧しても、それは地震に弱い石組みだから、また地震で崩れてしまう。清正時代の石垣がなぜ崩れなかったのか、その秘密と技術を研究して、より強い石垣にすることも大切だと思います。崩れた箇所は、栗石層が厚すぎたなど、石垣の内部構造の影響もあるそうなので、未来に向けて崩落原因の徹底的な解明をじっくり進めてもらいと強く願います。

このあたりには文化庁の指針もあるようで、文化財の修復といえば元どおりに直す、というのが基本なのですね。そうしないと許可が下りない。積み直しすると修復ではなく改変や新造ということになるのでしょう。文化財の価値を保ちながら将来へ向けて改良していくというのは難しい作業だと思います。

熊本城調査研究センターの方からお聞きしましたが、倒壊した続櫓の瓦の枚数を、被災前の写真から数えてはっきりさせる作業が続けられているとか…
文化財となると、自由がききません。
そりゃ20年かかります。
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(宇土櫓は続櫓が全壊した)

地震から学び、原因をつきとめて、よりよいものにする。それが今まで日本人がやってきた技術の洗練だったと思います。復旧に携わる方のご苦労ははかりしれませんが、私も微力ながら、復旧成る日まで、応援を続けて行きたいと思います。

復興城主は、つい先日からインターネットでも手続きができるようになりました!




さてもうすぐ静岡ホビーショー。私は「夏の陣大坂炎上」と「姫路城における廃頽の美学」の二作品を、日替わりで展示致します。大坂城にはちょっと手を加えるつもりです。

詳細近日!