◆模型の見どころ(その2)◆
【天守模型】
向かって左側に展示されているのが天守模型です。
この模型のみ1/150スケールです。
こちらはウッディージョーの木製模型を使用しています。周囲を拡張し、ジオラマ仕立てにしました。このキットはもとの造形がしっかりしていることもあり、作り込むとここまで立派になります。
なんといっても見どころはこの「石門」。
昔から抜け穴ではと言われている謎の通路です。
御裏五階櫓の脇と小天守入り口の両方から階段を下りた最下部にある、人が一人通り抜けられるトンネル状の通路です。水抜き穴とも言われますが、その用途は未だ定説がありません。
この複雑な階段と空間を再現しています。
石垣も複雑な構成です。ご注目ください。
製作の参考にした多くの写真の中の一枚。
残念ながら、展示会場では階段部分は覗き込んでも見えません。この石門がいかに隠された場所にあるかをお感じいただければと思います。この部分は、熊本城でも特異な形態を示す、他の城には見られない個性的な部分です。
今回のジオラマは、被災前のコンクリート天守を再現しています。最上階にはガラス、また小天守入り口にはコンクリートの橋を再現しました。フィギュアを配し、つい一年前まで当たり前だった、熊本城の光景です。
(二階バルコニーから撮影)
模型で一足先に復興を遂げました。
天守はつい先日、本格的な復旧作業が始まりました。2年間は足場に覆われ、姿を見ることができなくなります。
【飯田丸五階櫓】
向かって右に展示されているのが飯田丸五階櫓模型です。
この櫓は、熊本城復元整備事業の中で最初の五階櫓の復元でした。古写真をもとに 2005年に完成しました。
宇土櫓と違い、こちらは12年前の新しい建物です。屋根の目地漆喰、下見板、白壁、屋根瓦、全ての色合いを宇土櫓とは違う技法で表現しています。
同じ熊本城の櫓でも、懸魚の形や鬼瓦の形、窓の造りなど、細かいところで宇土櫓とは様式が異なっています。両方を見比べていただければ、いろんな発見があると思います。同じ五階櫓でも、宇土櫓よりは小ぢんまりしていることが分かります(というより宇土櫓が大きいのです)
この模型のもうひとつの見どころは、石垣です。
もちろん、石垣の反りも実物同様です。
熊本地震では石垣が大きく崩落し、隅石数個でかろうじて櫓が持ちこたえている姿は「奇跡の一本石垣」として全国の注目を集めました。
ちなみに、図面の黒い破線より上は明治の積み直し部分で、地震ではその部分が崩れたことがわかります。
模型は石積みも再現していますので、よく見ていただくと、石垣の上部は、石積みの横のラインが揃い過ぎていて、いかにも石どうしが噛み合っておらず、脆弱な印象です。
熊本城唯一の水堀である備前堀水面からの景色を再現しています。二段の高石垣上に聳える被災前の飯田丸五階櫓の姿です。
現在は鉄骨の支えで倒壊防止策が取られています。一早い復旧を願います。
展示模型ですが、実感のない無機質な建築模型にはしませんでした。名城の蘇ることを願う展覧会ですので、現実を彷彿とさせる模型を目指したつもりです。せっかく私に頂いた製作でしたので、模型製作会社だったらやらないだろう模型にしました。こんな展示模型があってもいいのではないでしょうか。
唯一の心残りは…展示ギリギリまで製作だったので、外光撮影が遂に叶わなかったこと。
24日までです!お近くの方は是非とも展覧会へお越し下さいませ!↓↓
★次回作予告★
もう今日から製作を再開していますが、次は「豊臣大坂城全景模型」です。お待たせ致しました。
本丸だけでなく、外堀まで再現した60センチ四方の大作になります!
以前作った本丸全景模型よりさらに完成度を高めることを目指し、石屋模型店さんにお願いし、エッチングパーツを開発しました!
御殿の外壁や高欄など、細密なパーツが昨日届きました。まだ湯気が出ています。