展示模型【飯田丸五階櫓の石垣】 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

さて、今月12日より日本橋髙島屋の展覧会で展示されます、熊本城の模型群です。

今回は飯田丸五階櫓の石垣。
飯田丸五階櫓直下の石垣に関しては、詳細な図面を熊本城総合事務所より送ってもらうことができました。
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この図面を100分の1サイズに調整します。
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いつものように石粉粘土だと、これほどの大きさになると無理だと判断し、スチレンボードに線彫りするやり方を取りました。これは情景師アラーキーさんが、あの「西瓜の夏」という石橋のジオラマで使っておられた方法です。
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図面を写しとり、爪楊枝やケガキ棒を使って石を彫っていきます。
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それを芯材に貼り込んでいきました。
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外側の高石垣は、断面図をデータ化し、ガイドをレーザーカットしてもらいました。全ての面で反りが異なります。
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そこに先ほどのスチレンボードを貼り、隅や天端を粘土で調整します。
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熊本城の難しいのはあの石垣の色。
グレーで石色をつくって塗ると、どうしても真っ黒になってしまい、なかなか感じが出ません。
ここでもアラーキーさんの塗装法を参考にさせてもらいました。あの石橋は九州の黒い石なので、熊本城の石垣とそっくりな色合いです。

グレーを使わない塗装法なので、まずは石垣の溝を全て描き起こします。
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表面にモデリングペーストを塗って質感を出した後、下地自体の白い色を利用しながら塗装していきます。
タミヤのフラットブラックとフラットブラウンのみを使用。グレーは使いません。

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少しずつ色を調整しながら熊本城の石垣の感じを出していきます。
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飯田丸五階櫓の石垣は要人櫓跡の石垣と二段になっています。その上部の資料がなく困りましたが、地震被災後の国土地理院によるドローン撮影の映像で概要が掴めました。要人櫓跡は一部石垣の積み直しが行われており、その部分は裏ごめの栗石が露出しています。
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同じように再現しました。
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石垣でも現状と違う部分ができてしまいました。
それはこの西側の盛り土状の盛り上がりなのですが、石垣の実測図面通りにつくるとこの盛り土ができます。
ところが現状ではこの盛り土は取り除かれ、平らに整えられているようです。
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恐らく、飯田丸五階櫓の復元にあたり整地され、実測図面の製作はその前だったのだと思われます。
櫓の復元前の写真を見ると、確かに盛り上がりがありました。
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今回は与えられた製作期間があまりにも短く、予めのリサーチに割ける時間がほとんどありませんでした。まずは図面に全幅の信頼を置いて、とにかく形をつくり、分からない部分が出てきたらその都度実物の写真等をリサーチする方法をとったので、図面には正確でも、現状とは異なる部分ができてしまったのは少し心残りです。

細部修正を残し石垣ができたところ。
要人櫓台など図面が無い部分の石垣は、石積みの雰囲気を似せてつくりました。
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石垣の反りも正確なので(図面が正確ならば)、かなり実景に近い姿を眺められます。
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