日本橋髙島屋展示模型 熊本城飯田丸五階櫓・宇土櫓 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

4月12日より日本橋髙島屋で開催されます、熊本復興を祈る展覧会「熊本城と加藤清正・細川家ゆかりの品々」で展示される模型群の製作です。

さて今回は、飯田丸五階櫓の石垣の予定でしたが、前回、屋根瓦について書いていたので、その関連事項を先に書いておきます。

飯田丸五階櫓は一階部分が角が直角にならない不整形になっています。
その模式図。角度を大きめに誇張しています。
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そうなると困るのが瓦の納め方です。
図面を見てみると
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破風の先から伸びる雨水を流すための溝で微妙に角度を調整していることが分かります。

先ほどの模式図に、瓦の流れを大雑把に描いてみました。(平行ラインを引き損ねているところがあります。)
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百間櫓の切断面は直角になっているので、斜めに流れる丸瓦との整合に困ります。その部分は放射状にして納めました。

実際の模型。
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平面の不整形は宇土櫓の西面でも見られ、同じように雨落ちの谷部分で角度を調整しているようです。
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模型では
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この他にも宇土櫓の続櫓の南面が同じく直角ではないので、屋根瓦が放射状になります。
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また、宇土櫓では、続櫓の水平方向の歪みも模型化に当たっては大変です。
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宇土櫓の続櫓は、南に向かって櫓自体が坂を登るように上がっていますし、石垣と建物の接する線が直線ではありません。

飯田丸五階櫓も、城内側に階段を含め複雑な段差がありますので、石垣と建物の合わせ面は初めから懸案で、模型設計に頭を捻りました。
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石垣をつくって、その上に建物を載せるという方法では無理です。

そこで、城内側の地面ラインから芯材を立ち上げ、後で石垣部分を貼っていくやり方を取りました。
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かなり登っていることが分かりますね。
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この方法だと、階段と壁面が合わさる部分なども綺麗にできますし、櫓台の高低や合わせ面の歪みに惑わされることなく製作が進められます。
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続櫓の水平方向の歪みは、建物自体にまで及んでいます。
南西角の石落し。
歪んでますね。
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図面でも。
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模型でも。
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続櫓の二階部分は水平ですが、屋根は南に向かって登っているので、合わせ目のラインが斜めになります。
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模型でも。
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こういう建物の歪みは、この時代の城の醍醐味で、私は大好きな部分です。
のちの時代のきっちり整形になった城はちょっと物足りなく感じますね。

調整が大変な部分はほぼ終わりました。先が見えてきたかな…?