岐阜城の合間に少しずつ北山大塔も進めています。
屋根はまだ下塗りです。
この朱塗りの色合いが悩みどころです。
まず、建物に使われる朱色は赤や紅、緋色と違って、鉱物から作られる色であるという特徴があります。
日本の古建築の「朱塗り」ですが、一口に朱塗りといっても色合いはさまざまであり、使われる顔料に違いがあります。朱塗りに使われる赤色顔料には、真朱、銀朱、弁柄、鉛丹があります。これを膠で溶いて塗るか、漆に混ぜて塗るかという違いがあり、それによっても色合いが異なってきます。
真朱、銀朱は硫化水銀。
弁柄は酸化鉄、鉛丹は酸化鉛。
このようにいずれも鉱物です。
ひとつずつ見ていきます。
真朱は特に天然のものをいいます。鉱物としては辰砂として産出され、大変高級なものです。赤い色は太陽の色、血の色に通じ、呪術的な意味合いもあり、古墳の棺や内壁が赤く塗られている例は枚挙にいとまがありません。
奈良の古墳群も近くにある辰砂の鉱脈との関係が指摘されています。
色みとしては少し黒みがかった朱色を呈します。
銀朱は天然の真朱に対して、人工的に作り出した硫化水銀です。真朱より鮮やかな色みを呈します。
弁柄は酸化鉄。インドのベンガル地方が良質の産地であったことから色名の源となっています。これは茶系の赤色となります。
鉛丹は酸化鉛でオレンジ系の赤色を呈します。卑弥呼が魏から鉛丹を贈られたという記述がありますが、日本で作られるようになったのは室町時代からと言われています。
(以上文字カラーは『日本の配色』掲載のカラーコードによります。閲覧環境により正確な色が表示されない場合があります)
真朱、銀朱は水銀を含み、木材の防腐の意味もあり古建築に塗られてきましたが、大変貴重なため、飛鳥時代を含む古代の寺院において、朱塗りが全て朱であったか、または弁柄や鉛丹であったかということは確認されていないそうです。
あまりにも高価なため、ごく限られた建物だけに使われているようです。
1998年の台風7号で破損した室生寺五重塔が修復され、朱塗りも美しく蘇りましたが、この時は朱に弁柄を混ぜたものが使われています。落ち着いた色みですね。修復後の宇治平等院もこれに似た色みで、弁柄が混ぜてあることが想像できます。平等院の修復の際の色合いについてはまだ勉強不足なのでこれからです。
今回の北山大塔ですが、下地に弁柄のような茶系の赤を使用したこともあるのか、明かりによって色みが少し変わります。