今年の作品を振り返る | 城郭模型製作工房

城郭模型製作工房

城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

早いもので今年も残すところあとわずか。


時間の許す限り製作に励みました。このブログを立ち上げたのが5月のことです。ブログの記事にしたものが19作品、うちお城が13点、寺院が5点、その他1点です。


実はブログの記事にしていないものが3点ありまして、それは雪の松本城、800分の1姫路城、松江城です。






これらは以前に作っていたもので、試しにヤフオク出品してみたところ、入札いただいてとても嬉しかったことを覚えています。

それまでは自己満足で模型づくりをしていましたが、自分以外の人にも満足していただけるものが作りたい、と思い、勢いでブログまで立ち上げて製作にに打ち込みました。


雪景色は好きで、松本城のあとも今年は2作品つくりました。ひとつは金閣、もうひとつは今年最後の清水寺です。
image


image

雪は紅葉や桜と違って、短ければ一日で消えてしまう景色です。模型にすることで時を止めてしまう面白さがあります。雪の日のぴーんと冷たい空気まで表現できたらいいなと思いながら製作しましたが、雪はとても難しかったです。しかしどれも気に入っていて、いろいろうるさい妻も、雪の金閣は珍しくおめがねにかなったようで、本当に出品しちゃうの?と引き止められました。


四季の景色としては秋の銀閣を作りました。

image
これは植栽など作庭にこだわり、ありとあらゆる実景写真から色づいたもみじの位置や色味も再現しようと努力しました。また、松の木に少しオーバースケールながら尖った葉を表現しました。


これらの他、寺院は興福寺を2作品製作しています。ひとつは猿沢池まで拡張したもの、もうひとつは100分の1スケール、高さ約50センチにおよぶものです。


image


image

どちらも屋根瓦の塗装に手間をかけています。お城や古建築のプラモデルの作例は屋根を単色で表現することが多いので、この古建築の古色の出た瓦の表現はやりがいがあります。


この屋根瓦の塗装を最初に研究したのが広島城でした。


IMG_20150610_205152656.jpg
この時は石垣の彫り直しやベースの拡張、水面の表現、樹木の製作など、さまざまな技法を一度に研究できるよい機会になりました。

これとほぼ同時に進めていたのが豊臣大坂城。こちらは既存キットの切り貼りによるスクラッチの技法の研究でした。


IMG_20150612_180428810.jpg
落札頂いた方から、「広島城のキットが出たときに、誰かが豊臣大坂城に改造するだろうなと思っていましたが、ついに現れましたね」とおっしゃっていただき、また「写真より実物の方がいい」とのお言葉を頂いたのが励みになりました。

今見ると粗がありますが、忘れられない作品の一つで、ブログの表紙画像にも使っています。


豊臣大坂城といえばそのあとの全景版。これは製作に2ヶ月以上を費やしましたし、そこに至るまで、小学生の頃からの長い憧れの先に作り上げたものですので、私の代表作と呼べるでしょう。手放すのが本当に惜しかったのも正直なところで、しかし評価いただいた落札額も超弩級のものでした。身が引き締まりました。
image
これの製作のために、今まで揃えていたあらゆる資料を再読した上、新たに櫻井先生の書物も購入しました。その中で自分でもさまざまな発見があり、思索を深めることができたのは本当にうれしかったです。落札下さった方は櫻井先生製作の模型に衝撃を受けられ、またお仕事先の先輩が櫻井先生の教え子さんであったというご縁のある方で、そのようなやりとりをさせていただけたのも嬉しかったです。


素人ながら自分でも考察を加えながらの製作でしたので、「復元」という言葉の重みを感じました。自分が作っているものを復元模型と呼んでいいのかどうか。これ以降、安易に復元という言葉を使わなくなりました。


秀吉の城はもう一つ、肥前名護屋城をつくっています。

最近「名護屋城プラモデル製作過程」の検索ワードが急上昇しておりまして、単に入力間違いなのかなんなのか・・・


同時代の城ということで松本城の、しかも当初の姿の復元。
image
足駄塀まで再現した超レア作品です。当の松本城にもこの姿の模型はないでしょう。そもそも松本城がはじめはこのような形であった(かもしれない)ということはあまり知られていないのではないかと思い、立体にしてみました。



これからも織豊城郭はいくつか作っていくつもりです。


資料をもとにできるだけ厳密にと思ってつくったものはもう一点、名古屋城の昭和初期復元模型があります。
image
これは艮櫓の形状はもちろん、御殿もできるだけ忠実に再現しており植栽も図面や古写真をもとに製作しました。こちらの作品は、国立特別支援教育総合研究所の先生が高田馬場に開設なさった「手と目でみる教材ライブラリー」に納められました。目の見えない子供たちに、日本の城に触れて学んで欲しいということでした。予約をすれば見学できるようです。

名古屋城は古写真が数多く残っており、それをカラー、立体化してみたい!と思っていたことが制作のきっかけでした。


城の古写真から再現したものは熊本城。


image

木造時代の天守の傷んだ姿を分かる限り忠実に再現したもので、これもお気に入り。希少価値は高いです。「古色表現は想像以上でした」と言っていただき、努力が伝わったことに喜びました。


この世界観の延長から創作したのが姫路城の廃墟。



基本姿勢として、需要の大きさは考えないのですが、これなんかその典型で、欲しがる方があるんだろうかと思いましたが、喜んでいただくことができました。

このシリーズはいろいろ作っていこうと思っています。需要は少ないでしょうが、自分の世界観を思う存分発揮できます。


ジオラマの面白いのは、同じお城や建物でも、人によってぜんぜん表現が違うことで、この人にはこのお城がこういう風に見えているんだー、といつも新しい発見があります。


番外編の東京タワー。これもお気に入り。

ここまで、全部ではありませんが、いろいろ作ったなあと思います。縮尺も1/100から1/1500まで。大きなものと小さなものでは表現の仕方がだいぶ違いますが、大きなものが作れないと小さなものも作れないし、小さなものが作れないと大きなものも作れないと思っています。これから、もっと指先の正確さを高めていきたいです。接写に耐えうる作品づくりが目標です。


最後に来年度作品をちょっとだけ。醍醐寺と安土城です。

{D85BAB05-C0B1-40B2-8F20-EAD5D631146D:01}

{427DF1B3-444C-47A9-A820-79DA20A1D7CC:01}

5月には静岡のホビーショーがあるので、その作品作りにしばらく没頭すると思いますが、時間の許す限り来年もいろいろ作っていきます。


皆様よいお年をお迎えくださいませ。


ありがとうございました。