立夏が過ぎたとは言え、空や野には夏の姿が整っておらず、い
まだ「余春」の感が。
この「余春」と言う言葉、古くは万葉集に、「暮春」の意味で使わ
れ、次のように。
余春の媚日は怜賞するに宜く、上巳の風光は覧遊するに足る。
(晩春のうららかな日はまことに賞美すべく、 上巳の風光は遊
覧に充分値する。)
一方、俳句では、夏の季語とされ、次のように。
一片の雲なき空の余春かな 青木月斗
しかしながら、 掲載されていない歳時記が多く、また「夏めく」や
「夏浅し」の影に隠れてか、例句は少ないようです。
ところで、 この時期、酪農にとって、欠かせない大切な作業があ
るとか。
搾乳作業で、乳牛は、乳のはる、この時期に搾乳をしないと病気
になってしまうとのこと。
とは言え、 このところの消費の落ち込みで、搾乳しても廃棄せざ
るをえない状況に、追い込まれているとも。
日本人と牛乳とのかかわりは古く、 645(大化元)年に、搾乳法を
習得した人物の記事が。
初めのうちは、もっぱら薬用として用いられたとか。
それもそのはずで、カルシュウム、たんぱく質、各種のビタミンな
ど、健康に必要な栄養素をバランスよく含んでいます。
二人の子が、 幼いころに、競って牛乳を飲み、牛乳びんのふた
を集めていたのが、思い起こされます。
[合同作品集『金蘭』より自解]
平成二十五年
・十字切る飛行機雲や秋隣
周知の通り、飛行機雲は大気中の温度の低いところを飛ぶ時に、
尾を引くようにして出来る人口雲。
青空に、くっきりと描かれた十文字が、今でも思い出されます。
平成25年8月、NHK学園俳句友の会秀作、倉田紘文選。
・キャンバスのナイフの跡や土用波
油絵を描いていた、若いころを思いだしての懐旧句。
今では、たくさん溜まってしまった油絵の処分に問題が。若い人
には、大きなものや、額縁無しは敬遠されるようです。
平成25年8月、NHK学園俳句友の会入選、鍵和田 秞子選。
・仏壇の褪せし勲章終戦日
幼いころに遊んだ、道具箱の勲章類。いつのまにか散逸し、一
つだけ残ったものを母親が父の仏壇へ。 母親も亡くなり、仏壇
は我が家へとやってきました。
平成25年7月、NHK学園俳句友の会コンクール秀作、星野椿選。
[今日の一句]
・牛乳を温めなほす余春かな
[俳句を始めたいかたへ]
9年間の俳句生活で学んだことを、初心者向けに、131回に亘って、
綴っています。
「はじめまして」
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