京都迎賓館はスーパー割烹か?
京都建築ネタの蔵出しシリーズ:
国を挙げて国賓クラスをもてなすための施設としては、
元来、赤坂の迎賓館があった。
しかし、赤坂迎賓館は、明治の鹿鳴館の延長線上になるのか、日本なのに洋館である。
それに老朽化し、暖房はあれど冷房が無く、利用限界があるようだ。
そこで、国際的な観光都市である京都に、和の建築様式の迎賓館をつくるべきだとの声が上がり、京都御所の一角を使って、京都迎賓館は2005年に開館した。
完成直後、建築雑誌に迎賓館の写真が掲載され、
和の伝統技巧を駆使したまさにこれ以上の贅は考えられないほどの建築で驚いた。
特に切り石なども用いられた斬新な日本庭園が素晴らしくみえて、
ぜひとも訪れてみたいと 思っていた。
開館以来、年1回10日間限定で公開していたが、2016年7月から通年公開になり、
観光客でも見学しやすくなった。これはラッキー。ということで見学した。
外観は大きな平屋づくりなために、屋根が印象的です。
軽やかに銅板葺きにすることもあるだろうが、
錆びた緑青は毒物だから、池の鯉を殺すだろう。
(との説明がありましたが、「緑青については30年前の調査でほぼ無毒であると証明されてます。」とのご指摘が読者からありましたので加筆しました。 )
そこで、耐候性に優れているニッケルとステンレスを圧着した複合材が使われました。
酸化ニッケルそのものの色が暗緑色で、周囲の緑と調和して穏やかです。
外壁の仕上げは、限りなく本物を追求し、
「本聚楽土」を主原料として、四国化成が京都迎賓館のために開発した外装用塗り壁を塗っている。
「本聚楽土」は、京都の聚楽第(西陣)付近で採れる上質な土のことで、極めてプレミアムな土である。 参考までに、オーガニックスタジオにおける最初の物件である「長崎新田の家」というリノベーション物件の、玄関ホールで用いたのも、この「聚楽壁」である。
しれっとデビュー作ですごいことがなされていた。↑↑↑
なんともいい色合いで大変好評であった。 (今は販売していないようだ)
外部の庭は、切り石使いもモダンで、池を広く取り、
さながら現代の寝殿造りである。
山古志の錦鯉が雅やかに泳ぐ様もよい。
内部は、接待の場であるので、自然と巨大な「割烹風」である。
建物の内部は、蒔絵(まきえ)・螺鈿(らでん)・有職織(ゆうそくおり)・西陣織・といった「伝統工芸」の技がこれでもかと投入されている。
象徴的なのが「桐の間」
56畳の「和の晩餐室」。座卓は長さ約12メートルのスーパーロングな漆塗りのテーブルが備わる。脇の控えの間には、天井に照明装置が仕込まれていて、
舞妓さんの演舞を眺めながら会食ができるようになっている。
感想としては:
来館前の期待を100とすれば、来てみての感動は40点程度か。
エイジングというか風格というか、
最低でも50年程度経過して、独自の文化財的な空気感を醸してないと、
我々の抱いている「古都京都」のイメージとのギャップがあるのだなと思いました。
国を挙げてのスーパー割烹である、「京都迎賓館」は、
建物延べ床面積16,000㎡(4,840坪)
総工費は208億と言われているので、ざっくり坪430万円也。
なかなか いいお値段である。
の建築費が、 現代の貨幣価値で坪1100万円というので妥当なのか?
国賓をもてなすという外交的事情での運用につき、
内閣府が赤坂迎賓館と共に管理運用しているが、両方合わせて年間8億の維持管理に費用がかかり、年で(たった)18回程度の利用がされているという。
1回あたり4400万円也。 せっかくならもっと使えばいい気がするが、
もてなす国賓に対するランクに明確な規定があるようだ。