全国農業問題連絡会 第17回総会・視察交流会 | 専従日誌

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11月16日から17日にかけ全国農業問題連絡会の第17回総会および視察交流会が兵庫県の丹波篠山市で開かれた。総会には8道県より48人が参加、議長には地元兵庫の鍋島浩一さんが選出され進行を務めた。

 

主催者あいさつで、岩中伸司会長は「農業者の高齢化、戸別所得補償の問題など様々な課題があるが乗り越えていきたい」「農業を衰退させる農政を変えるためにも、資本のやり方ではなく、食を守るという観点で組織を強めていかなければならない」と檄を飛ばした。

全国農業問題連絡会 岩中伸司会長


議案の提案では、昨年の総会以降の活動報告やTPP、日米FTAなどの自由貿易協定に反対する取り組み、種子法復活に向けた取り組みや決算報告、2019年度活動方針が竹谷事務局長より提起された。活動方針では、10月16日の「世界食料デー」を全国農業問題連絡会の「食と農を考える統一行動日」とし、各県単位で食と農に関する学習会、討論会、チラシ配布、街頭宣伝等を行い、飢餓撲滅、自給率向上をめざす旨の提案が行われた。全体討論では8人の参加者よりそれぞれの取り組み報告が行われた。「コメを4町作付けしている。地域の人が出来ないので引き受けて集落営農でやってきたが、仕事をしながらやっていくのは難しい」「集落営農で30町の農地を耕作している。体力も落ちてきた。大規模化が大きな壁となっている」「台風15号で23棟中16棟のハウスが全壊したが、仲間が来てくれ早めに片付いた。ハウスが無くなったので露地でトマトを栽培しているが今年は霜が遅いので心配だ」、他にも「福島の農業がどうなっているのか知りたい。学習、視察に取り組んでほしい」などの要望が出された。



総会終了後は記念講演に移り、地元丹波篠山市で「耕しや」を経営する阪東進さんを講師に「家族農業」について話を伺った。阪東さんは父親が出稼ぎで家にいなかったため幼少期より家の農業を手伝い、就職してからも兼業農家として1町2反2畝の農地を耕作してきた。2008年9月からは病院の検査士を辞め、息子の佑貴さんと2人で「耕しや」を立ち上げ、2人で10町を目標に水稲、黒枝豆、黒豆、小豆、山の芋の栽培や味噌の加工に取り組んできた。板東さんのこだわりは①年間通じて働ける作付け②規模拡大をせずに小さいながらも強い農業をめざすで、2019年度の作付けは836.2a(55筆)でコシヒカリ430袋全量販売、黒枝豆2.5トンの出荷となった。夏場は田んぼに水を入れるために毎朝4時半起床で一日3回、それに加えて草刈りも大変と苦労話も交えた。

阪東さんは「最近、野ネズミを食べるヘビが減ってきた」「温暖化でコメの等級が下がっている」「グリホサートが発達障害の原因」と気候変動やラウンドアップ型農業について警鐘を鳴らした。また、国連が小農宣言を採択(2018.11.20)したにもかかわらず大規模化をすすめる日本農政や、年々増え続ける防衛費を批判した上で、無理をしないで健康でゆとりの中、2~3ヘクタールでも生活できる農業を確立するためにも、ヨーロッパ型の家族農業をめざすべきだとし、課題として、所得補償の充実、食料自給率の向上、食の安全、土の環境保全、人の育成を掲げた。また、ベーシックインカムの必要性も訴えた。



【フィールドワークで阪東さんから説明を受ける参加者。昔このあたりには兵舎があった】

 

翌日は、阪東さんの「耕しや」を訪問し、農地やハウス、倉庫などを見学した。阪東さんはコメの乾燥で「農協は15%にしてくれというが食味を上げるために15.5%にしている」「甘味のポイントはマグネシウム(苦土石灰)」と企業秘密を打ち明かしてくれた。

 

耕しやが栽培する黒大豆 正月用の黒豆にするため採らずにおいている

 

ライスセンター並みの乾燥施設

 

阪東さんと息子の佑貴さん(右)

 

ハウスの中を見学

 

農機も充実

 

トラックのコンテナをコメの保管庫として利用

 

湿度を保つためにこの中で精米している

 

最後に阪東さん宅の柿をもらって解散