うらめしや~ | 俺のまとめ -oremato-

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8月初めのことですが、東京藝術大学大学美術館で開催中の「うらめしや~、冥途のみやげ」展に行きました。

インターネットミュージアム > 取材レポート > うらめしや~、冥途のみやげ展

展示の中心となるのは、幕末から明治の落語家・三遊亭圓朝の幽霊画コレクション。
圓朝の菩提寺である谷中の全生庵で毎年数点ずつ公開されているそうですが、今回は前期・後期あわせて50幅全てが展示、僕が行った前期ではそのうち約半分を観ることができました。

圓朝のコレクションでは鰭崎英朋「蚊帳の前の幽霊」、尾形月耕「数珠を持つ幽霊」がよかったですが、結構バラエティに富んだコレクションで、面白いところでは、日本における洋画の草分け的存在である高橋由一や幽霊画を描きそうなイメージが全くない中村芳中、鈴木其一の次男である誠一の作品なんかも。
其一の息子では長男の守一の作品は琳派関連の展覧会で何度か観てますが、誠一は初めて。
雪が舞う中に幽霊のシルエットが浮かび、舞う雪が目と口に見えるという趣向の「雪女図」という作品です。
幽霊そのものは描いていないものの幽霊話を題材にしているという今村紫紅の「月に鵜図」や、幽霊が出そうな風景が描かれた菊池容斎の「風雨の柳」といった作品もよかったです。

圓朝コレクション以外も、幽霊画の王道である円山応挙の作とされる作品やそのスタイルを踏襲したもの、歌川国芳、葛飾北斎といった有名絵師の浮世絵から明治期の作品までめちゃくちゃ充実していて、1点ずつですが長沢芦雪、曾我蕭白の作品もありました。

国芳は久しぶりにまとまった数の作品を観ました。
最近は弟子の河鍋暁斎や月岡芳年の方に興味がいっていたのですが、改めて国芳もいいなあと思いました。
北斎は百物語シリーズから前期は「お岩さん」「こはだ小平二」、後期は「さらやしき」が展示。どれも有名な絵です。
いずれも有名な物語に登場する幽霊(「お岩さん」は『東海道四谷怪談』の於岩(お岩)、「さらやしき」は『番町皿屋敷』のお菊)を描いたものですが、奇抜な姿形でどちらかというと妖怪っぽい。

明治期の作品は美人画の要素の強い繊細な作品が多く、鏑木清方(幽霊画の「朧駕籠」の他に重要文化財の「三遊亭円朝像」もあって、どちらも見事でした)の存在を改めて認識するとともに、伊藤晴雨や松岡映丘といったこれまで知らなかった画家にも興味を持ちました。

その中でも出色は月岡芳年の「幽霊之図 うぶめ」。

月岡芳年「幽霊之図 うぶめ」(慶應義塾図書館デジタルギャラリー)

最初の10日ちょっとの短期間の展示だったのですが、もともと好きな絵だったのでこの絵の展示期間を狙って行ったのです。
期待どおり素晴らしかったです。
幽霊というのは怖いだけでなく、悲しい背景を持っている場合が多いのですが、妊娠中や出産時に亡くなった女性が幽霊となったものと言われるうぶめもその典型で、上半身をはだけ、腰巻きに血が染みた後姿で描かれたこの絵には恐ろしさとはかなさ、子どもに対する母の愛情、妖艶な美しさといった様々な要素が同居しているようです。

芳年は他にも「偐紫田舎源氏」「平維茂戸隠山鬼女退治之図」といったいかにも芳年らしいスタイリッシュな武者絵風の作品もありました。
後期には人気シリーズ「月百姿」からの作品や自身の描いた幽霊が絵から飛び出てきて驚く応挙を描いた戯画「応挙之幽霊」等も展示されています。

芳年の「うぶめ」をはじめ、今回の記事で紹介された作品の多くは既に展示終了していますが、図録を見ると後期の作品もかなり充実しています。
僕は一つの美術展に複数回行くことはまずないのですが、正直また行きたいくらいです。

特に目玉は図録やポスターにも使われている上村松園「焔」で、こちらは9月1日からの公開となっています。
会期は9月13日まで。

出品作品リスト

書楼弔堂 破暁/集英社
¥2,052
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京極夏彦の本で芳年の「うぶめ」を表紙にしたものもあるみたい。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)/講談社
¥864
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うぶめは「姑獲鳥」または「産女」と書きます。