俺のまとめ -oremato-

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前回書いた山種美術館「ゆかいな若冲・めでたい大観―HAPPYな日本美術―」展の話の続きをもう少し。

展示室のソファに過去の展覧会の図録が備え付けてあったので、一休みしながら何気なく読んでみたら、めちゃくちゃ面白かったので、(今回の図録は買わずに)そちらを購入しました。

2014年秋に開催された「輝ける金と銀―琳派から加山又造まで―」という展覧会のもので、箔(はく)、泥(でい)、砂子(すなご)といった金銀を用いた表現技法に着目し、大和絵や琳派の伝統的表現からそれを踏まえた近現代の画家による多様な試みまでを紹介する内容。

今回の展覧会に出ていた作品では横山大観「竹」と小林古径「松竹梅」が載っていました。

横山大観《竹》(山種美術館Twitter)
絹の裏に箔を貼る裏箔という技法(仏画等で用いられる伝統技法)が用いられているそうです。
今回の展示解説にもそういう説明はあったんですが、ちゃんと理解せずに見てました(笑)。
理屈がわかってなくてもきれいな絵で、今回見た大観の作品では一番気に入りましたが、また機会があればじっくり見てみたいな。

小林古径《松竹梅》(山種美術館Twitter)
扇状の画面に松竹梅がバランスよく収まった作品。
竹の葉には青みを帯びた金泥、梅の枝には赤みを帯びた金泥が用いているということで、微妙な色づかいが洒落ています。

昨年の「琳派と秋の彩り」展で見た加山又造の「満月光」が載っているのもうれしい。

速水御舟の「名樹散椿」は金箔ではなく、砂子を何度も撒いては擦りつぶす「撒きつぶし」という手法が使われていることや、鈴木其一の「芒野図屏風」は、フーリア美術館所蔵の同種の屏風をX線透過撮影した結果、明るい部分の芒(すすき)は銀泥、暗い部分は墨で描き分けられているらしいといったことも初めて知りました。

山種の図録は今回初めて買ったのですが、いつもA5くらいの小さめサイズで1,000円前後のお手頃価格のようです。
何冊か見比べたところ解説の量は展覧会ごとにバラつきがあり、そのぶん値段も900~1,100円くらいで幅があるようで、「輝ける金と銀」のものは値段は確か1,080円でしたが、かなり充実しています。

この展覧会のために色々な技法を再現したサンプルも制作されていたようで、図録だけでも楽しめますが、展覧会に行っていたらもっと楽しめたんだろうなと思います。
鶴亀、松竹梅、七福神、富士といった吉祥モチーフの作品や「笑う門には福来る」ということでユーモアのある作品を集めた展覧会です。

まずはまとめて画像へのリンクを。

山種美術館
伊藤若冲《河豚と蛙の相撲図》《群鶏図》、狩野一信《布袋唐子図》、河鍋暁斎 《五月幟図》

山種美術館Twitter(@yamatanemuseum
伊藤若冲《亀図》河鍋暁斎《浦島太郎に鶴と亀》

ファッションプレス
柴田是真 《円窓鐘馗》《墨林筆哥》

Japaaan
小松均《赤富士図》山口華楊《生》

インターネットミュージアム
川合玉堂《猿》

若冲は、昨年府中市美術館であった「動物絵画の250年」展(僕は行ってません)にも出ていた「河豚と蛙の相撲図」をはじめ、ほのぼのしたタッチの絵が多かったですが、「群鶏図」はユーモラスなだけでなく強烈な筆の勢いを感じる若冲らしい作品。金屏風におさめられておめでたい感じもしました。
かわいらしくシンプルな絵に見える「亀図」も甲羅の部分には筋目描きの技法が用いられています。

ごちゃごちゃした構図が楽しい河鍋暁斎の「五月幟図」は幟(のぼり)に描かれた鍾馗(しょうき)が実体化して鬼を捕まえる図。全身赤一色の鍾馗とカラーの鬼を対比させるのは暁斎らしい趣向。鍾馗は顔の部分にだけ色が入って、生気を感じさせます。

同じく暁斎の「浦島太郎に鶴と亀」は鶴の羽毛の精緻な描写や墨のにじみを活かして表現された岩がかっこいい。暁斎は2点だけですが十分な存在感でした。

柴田是真の「円窓鐘馗」は円形の窓の内側にいる鐘馗が外に逃げていく鐘馗を睨む描き表装風の趣向に是真らしい機知を感じます。
「墨林筆哥」は色漆(いろうるし)で紙に絵を描く漆絵と呼ばれるもの。
琵琶を弾く蛙は理屈抜きにかわいいのですが、それだけでなく漆ならではの深みのある色彩も堪能できました。

増上寺の「五百羅漢図」で有名な狩野一信は「布袋唐子図」は子どもたちがかわいくないのが印象的でした(笑)。目の端がうっすら青く塗られているのも気持ち悪いし、あかんベーをしている子にいたってはホラーの領域。水面に映る布袋の顔も不気味(笑)。
一信のもう一点、「七福神図」(画像なし)はそんなに変な絵ではありませんが、やはりあの「五百羅漢図」の一信と思わせる濃密さ。

今年の干支の猿を描いた作品の中では、自ら猿を飼っていたという川合玉堂の「猿」がよかったです。同じく玉堂の「春渓遊猿」(画像なし)は雄大な山水風景の中に小さく描かれた猿の親子がかわいい。

「幸福な情景」というテーマでは4点の作品があり、川﨑小虎の「春の訪れ」(画像なし)という作品(なんか天女みたいのが飛んでる絵)はピンとこなかったのですが、他の3点はいずれも素晴らしかった。

鏑木清方「佳日」(画像なし)は穏やかな春の日、外出する親子の姿を描いたもので、僕が持ってた清方のイメージとは違う、淡いタッチの作品でした。

山口華楊の「生」は薄暗い納屋の中でこちらを見つめる仔牛を描いたもの。実際にそのような光景を見て感銘を受けた華楊が数年後にものにした作品だそうです。

伊東深水の「春」(画像なし)はモダンな着物、モダンな髪型の女性2人がお喋りに興じる様子。
深水はこういう美人画のイメージが強いのですが、もう1点の「富士」(画像なし)もなかなかでした。

富士山を描いた作品では小松均の「赤富士図」が強烈でした。
夕日の赤というより、炎の赤、あるいは血の赤を思わせる赤に染まる富士。
今回の展示の中では浮いている感じもしましたがインパクトは一番でした。

若冲は11点、大観は8点ありますが、1、2点でも印象に残る画家が多く、いい意味で、それほど若冲、大観が主役という感じがしませんでした。テーマは若冲、大観よりも「ゆかい」「めでたい」「HAPPY」でしょう。

正月らしい企画ですが、3/6(日)までやってます。
松涛美術館の石黒宗麿展に行く前に、近くの戸栗美術館に立ち寄りました。

もともと予定してた訳ではないのですが、ぐるっとパス(※)で無料になるし、陶磁器専門の美術館なので石黒宗麿展の前に寄るのにちょうどいいかなと思いついたのです。

ぐるっとパス…2,000円で2ヶ月間いろいろな美術館・博物館が割引または無料になるチケットブック

鍋島焼展 妥協許さぬ技術と品格の美(産経ニュース)
チラシでも主役扱いの「色絵 十七櫂繋ぎ文皿」は舟の櫂(かい、オール)をモチーフにした変わったデザイン。

ここは写真撮影OKなので、気に入ったものを写真で紹介します。クリックorタップで大きくなるよ。

染付矢車花紋皿
薄瑠璃釉にモダンな感じの文様。

色絵椿柴垣文皿
こういう柴垣に草花を配する意匠は鍋島によく見られるものだそうです。

染付吹墨月兎文皿
初期伊万里。こういう素朴なのも好き。
てか兎かわええ~。

瑠璃釉色絵双鶴文皿
柿右衛門様式。薄瑠璃釉に抑えた色彩で瀟洒な趣き。
薄瑠璃釉好きかも。
てか鶴かわええ~。

色絵魚藻文鉢
金襴手様式。豪華絢爛。
やっぱり動物柄が好き。

軽く立ち寄ったつもりがそこそこ長居してしまったのでした。
「鍋島焼展」は3/21まで。