結婚じゃなくて入籍なのね。別れるって言った一月後に入籍……。色々あったんでしょうけど、今さら私に言うべき言葉は見つからない。「おめでとう」なんて心にもないセリフ、言えやしないわ。
桜は好きじゃない。
あの淡いピンク色も
押し付けがましいほどに咲き誇る様も
風で花びらが舞い散るはかなさも
すべてが嫌いだ。
あの花が毒々しいほど濃い色ならば
ここまで嫌いではなかっただろう。
まるで可憐で控えめなあの人のように。
痛み止めの薬をのんだら
頭がぼんやりしてきた。
まぶたが重くて、なんだかねむい。
くすりでこんなになったのは初めて。
今から外出しなきゃいけないけど
バイクにのったら危ないかしら。
ぶらりと、ひとりで行ってみた。
持て余すかと思ったりもしたけれど
案外それがいい感じだった。
ひとりを満喫するのは
どうしようもない孤独感とのたたかい
ではなくて、
ぽっかりとこころに穴があいて
そこからぽろぽろと
いろいろなものがこぼれていく感じに近い。
広いお風呂につかって、朝寝をして
知らない街をゆっくり歩く。
疲れたらお茶をのんでやすめばいい。
予定のない一日をのんびりとながれる。
そんないつもとかけはなれた日々は終わった。
明日から、また仕事に追われる毎日に戻る。
早朝の新幹線は空いていると思ったのに
10分以上も前から長い列ができていた。
最後尾に並んで
テイクアウトしたコーヒーを飲みながら
ぼんやりと線路の向こうを眺めた。
まだ雨が止まない。
走り回る子どもたちを叱る母親。
見たことのある顔を見つけたのはその時。
いつも通りのスーツ姿で
疲れたように背をまるめて歩いていく。
出張ばかりで大変だと
ぼやいていたのを思い出す。
声はかけなかった。
何も話すことが思いつかなかったから。
10分以上も前から長い列ができていた。
最後尾に並んで
テイクアウトしたコーヒーを飲みながら
ぼんやりと線路の向こうを眺めた。
まだ雨が止まない。
走り回る子どもたちを叱る母親。
見たことのある顔を見つけたのはその時。
いつも通りのスーツ姿で
疲れたように背をまるめて歩いていく。
出張ばかりで大変だと
ぼやいていたのを思い出す。
声はかけなかった。
何も話すことが思いつかなかったから。