「どうしたの?」立ち止まった私に美和子が言った。


「二階の打席に行こうか」と私は再び歩きだした。


二階に行く階段の手前の打席に杉原さんがいる。


私はドキドキしながらも黙って横を通り過ぎた。


「さぁ、さぁじゃないのか?」


杉原さんだ。
杉原さんが私を呼んでいる。


私は再び立ち止まった。
美和子に先に二階に行ってもらい杉原さんの方に振り返った。


「さぁ…元気だったか?」


「はい」


「そうか、離婚したって?」


「はい。杉原さんは帰って来られてたのですね」


「うん、こっちにいるよ。ゴルフしてたのか?」


「たまーにです。練習も久しぶりなんです。」


「携帯電話持っているか?番号を教えてくれ」


「杉原さんの番号を言って下さい。私、今かけますから」と言い、自分の携帯から杉原さんの携帯に発信した。


「友達と来てるので…行きます」


「あっ、あぁ、またな、電話するからな」


「はい、それじゃあ」と私は美和子が待つ二階の打席に向かった。


美和子は「知り合いでもいたの?」と聞いて来た。
「うん、若い時の。久しぶりだったわ」と答えた。


美和子には杉原さんとの不倫と別れは言ってなかった。


わざわざ説明する必要もないとも思っていた。


美和子も元気になり、タイトルの再々会の話に入ります。


初めて来た新しい練習場。新しいだけあって綺麗だ。いつも行っていた所とは雰囲気が違う。


私の後に美和子がついてきていた。初心者でも周りに迷惑がかからないような打席をさがした。


私の足が止まった。


あの後ろ姿…


あの後ろ姿は…


間違いなく杉原さん。


私が中田とまだ結婚していた頃にいつも行っていた練習場で再会して以来。
駐車場で少しだけ言葉を交わした。あれから何年過ぎただろうか。


中田と別居し、離婚した。実家に戻り、パートから正社員で働き、実家を出た。珠里も小学生。色んな事があった。精神的にかなり追い詰められたり辛かったりした。


今、ようやく生活が落ち着いた。笑って過ごせるようになった。


目の前に杉原さんがいる。動けなかった。心臓がドキドキだった。
病室に美和子の旦那さんが入って来て、元気そうに明るく話す姿を見て驚いていた。


「ねぇ、ゴルフ始めようと思うんだけどどう思う?退院したらゴルフクラブ買いに行ってもいい?」と旦那さんに明るく話し掛ける。

「うん、ゴルフ、難しいだろう?大丈夫か?出来るのか?」と旦那さんは美和子に聞いた。


「さぁが付いてくれるから大丈夫。ねぇっ?楽しみぃ」とめちゃくちゃ明るい。

病室を出たら旦那さんが私に言った。
「ありがとう。迷惑かけるね。久しぶりにうれしそうに話ししてるよ。これからも頼みます。美和子は周りから注目されたいのかな?周りが美和子なしでもやっていけてるのが気にいらないのかな?って思った」


「それはあるよね、まあ、何でか美和子は私にはなついてるからね。でもちょっとはいい方向に向いてるかもね。私と出掛ける事が多くなるけど許してね。どっちみち、家にいても主婦らしい事はしないし、影響ないでしょ」と私は笑って言った。


美和子は急に以前のように明るくなり無事に退院した。


美和子の両親と旦那さんからあらためて私にお礼の言葉があった。
美和子に至っては「快気祝い持って来たよー」と私の家にやって来た。
「さんざん一人で騒がせておいて何が快気祝いだよ」と私はわざとぶっきらぼうに言った。


「ご迷惑、ご心配をおかけしましたぁ。これからもよろしくお願いしまーす」と美和子は悪びれる事なく言った。


次の私の休みの日に、美和子のゴルフ道具を買いに私達は買い物に出掛けた。


うれしそうにバッグや靴を選ぶ美和子。クラブは私が選んだものにした。


道具を買っただけでハイテンションな美和子。


「さぁ、練習場へ行こう」と張り切る美和子。私も久しぶりにゴルフの練習場に行く。「新しく出来た所に行ってみようか」と近くにあるが初めて行く練習場に向かった。