珠里を珠算塾に迎えに行き、実家に行った。


「おばあちゃんと寝るぅ」と言う珠里。母は「珠里ちゃん泊まっていくって。あなたはゆっくりして来ていいから。明日の午前中はおじいちゃんとデパートに行く約束してたよ」と。

そうなんだ。
帰りの時間を気にしないでいいんだ。


「何かあったら携帯に電話してね。明日はお昼過ぎに迎えに来るね」と言い、私は実家を出た。


小学校の高学年にもなると私を追う事もなく、自分の足で行ける所へは行く。

淋しいような嬉しいような。


杉原さんと昔と同じ所で待ち合わせをしていた。


この近くを通る度に杉原さんとお別れした時の事を思い出した。


また同じ場所で待ち合わせする日が来るとは思っていなかった。


杉原さんが今乗っている車がわからなかった。
杉原さんも私の車がわからないだろうな。

駐車場に着いて車を停めてじっとしていたら一台の白い国産高級車が前に来た。

「さぁー」私は呼ばれた。


目の前の車は杉原さんだった。


あわてて車を降りて白い車に乗った。


「車がわからなくて…まさかこの車とも思えなくて」と言う私に「いつまでもスポーツタイプには乗っていないよ」と杉原さんが笑った。

「でも、何だかおじさんっぽいですよー、乗り心地は最高ですけど」と私も笑った。

「もうすっかりおじさんだよ。あれから何年経った?」

「さよならしてから12、3年かなー。私もすっかりオバサンだね」


「さぁは昔は可愛いっていうより綺麗だったな。今のさぁは、綺麗なんだけど、何ていうか毅然とした近付きにくい賢い女性っていう雰囲気かな」

「よくわかんないー。賢くないしね。杉原さんは顔のしわが増えましたっ」


そんなやりとりをしながら高速で20分、ステーキハウスに着いた。


「今日は再会のお祝いだからステーキとワインで乾杯しよう」
県内ではかなり有名なお店。

もっとシックな服装で来れば良かったと思った。


土曜日、パソコン学校も休みで日中はゴルフ練習場に行った。

杉原さんも来ていた。私は杉原さんがいる打席の近くで練習を始めた。

杉原さんが私に気付き近づいて来た。

「今日は一人か?」

「はい。」


まじまじと杉原さんの顔を見た。この人も年とったなぁ…あっ、私もだ。


「前とスウィングが変わってないな(笑)こうしてごらん」と私の真ん前に来て私の腕、肩を触りながらレッスンしてくれた。


ドキドキした。


でも、ゴルフの時の杉原さんは容赦ない。厳しいレッスンが続き私はヘトヘト。「じゃあ、後でな」」私のドライバーの飛距離を見て満足気に自分の打席に戻った。

その頃、私は勤めていた会社を辞めた。
日曜日も仕事で平日に休みだったので、日曜日が休みの仕事を探すことにしたのが一番の理由。
珠里は土曜、日曜は私の実家で過ごしていた。習い事も友達の所も同じ小学校区なので行けた。
小学校の高学年になっていた珠里。手先が器用で勉強もよく出来た。
私の子供にしてはかなり優秀であった。


失業中の私は時間があった。美和子とゴルフの練習をしたり出掛けたり、時には一人でゴルフ練習場に行った。
パソコン関連の資格を取ろうと学校にも通った。


そんなある日、杉原さんから携帯電話に着信があった。


「明日の夜、食事に行かないか?」


「子供いるし、どうしようかな…」と渋る私。


「実家でみてもらえないのか?」


「大丈夫だと思うけど…」


また杉原さんと二人で会ってしまったら私はきっと…

迷った。


本当は会いたい。


「なぁ、久しぶりにゆっくり話をしよう」


「わかりました。何時にどこですか?」


「昔と一緒だよ。6時でどう?」


「じゃあ、明日」


電話をきった。


明日は土曜日、夕方から珠里を実家で預かってもらってそのまま泊まってもいい。私も実家で泊まってもいい。


すぐ母に電話をし、「明日の夜、友達と出掛けから珠里をお願いします」と頼んだ。


私は、30歳半ば、杉原さんは50歳近く。


初めて杉原さんに出会ってから15年以上の月日が流れていた。