「どうしたの?」立ち止まった私に美和子が言った。


「二階の打席に行こうか」と私は再び歩きだした。


二階に行く階段の手前の打席に杉原さんがいる。


私はドキドキしながらも黙って横を通り過ぎた。


「さぁ、さぁじゃないのか?」


杉原さんだ。
杉原さんが私を呼んでいる。


私は再び立ち止まった。
美和子に先に二階に行ってもらい杉原さんの方に振り返った。


「さぁ…元気だったか?」


「はい」


「そうか、離婚したって?」


「はい。杉原さんは帰って来られてたのですね」


「うん、こっちにいるよ。ゴルフしてたのか?」


「たまーにです。練習も久しぶりなんです。」


「携帯電話持っているか?番号を教えてくれ」


「杉原さんの番号を言って下さい。私、今かけますから」と言い、自分の携帯から杉原さんの携帯に発信した。


「友達と来てるので…行きます」


「あっ、あぁ、またな、電話するからな」


「はい、それじゃあ」と私は美和子が待つ二階の打席に向かった。


美和子は「知り合いでもいたの?」と聞いて来た。
「うん、若い時の。久しぶりだったわ」と答えた。


美和子には杉原さんとの不倫と別れは言ってなかった。


わざわざ説明する必要もないとも思っていた。