怖れていた事が現実となった。


すぐには杉原さんに問いただす事はしなかった。


杉原さんから電話が来た。いつもと変わらないない調子で「さぁ、食事に行こうか」と言った。


杉原さんに逢った。


単刀直入に聞けなかった。


いつものようにラブホに誘う杉原さん。
杉原さんを私と美和子とがシェアするの?
冗談じゃない。


その日は私は杉原さんには何も聞かず何も言わなかった。



私には勇気がなかった。
杉原さんに本心を聞く勇気、杉原さんから離れる勇気、どちらもなかった。



ある日の朝、杉原さんにメールを送った。


エラーになった。


メールアドレスを変えたようだ。それまでのメールアドレスは私が杉原さんと相談して決めて私が設定してあげたものだった。


すぐ杉原さんに電話をした。
「メールを送ったんだけどエラーになるの。アドレス変えたの?」と聞いた。


しどろもどろで「あっ、あぁ、何か変なメールが来るようになって変えたよ。今から何かメールするよ」と杉原さんが答えた。


メールが来た。


新しいアドレスを見て、私は唖然とした。


杉原さんと美和子の名前がミックスされたアドレスだった。


杉原さんは自分ではアドレス変更する事は出来ない。誰がしたのか一目瞭然。


明らかに、美和子は私と杉原さんを離そうと企んでいる。自分と杉原さんが付き合っているのを見せつけている。


情けなかった。
でも、美和子にそれを許したのは杉原さん。おそらく杉原さんはメールアドレスの意味がわかっていないだろうが。


私はそのアドレスに「その趣味の悪いアドレスは止めた方がいいと思います」と送った。返信はなかった。
杉原さんと美和子が連絡を取り合っている…


私の中で全く疑っていなかったはずもなく、常に不安だった。
私のいない所で、私の知らない間に…二人は…


恐らく、逢ってセックスもしただろう。


私はもう美和子をかばったり心配したりする必要もない。美和子は私を裏切った。杉原さんも。


美和子の旦那さんに長野での出来事を話した。


「そんな事があったんだ…でもおかしいとは思っていたんだ。美和子はいつもさぁさんの事をよく話していたのに何も言わなくなったんだ。長野の話も全然しなかったよ。いつもなら、さぁさんと出掛けた話をしゃべりまくるのに。長野から帰って来てもしばらく考え込んでいる様な感じだった」


「杉原さんと私はもう何年も付き合っているの。奥さんがいらっしゃるけど。まさか美和子からこんな仕打ちを受けるなんて夢にも思わなかった…」


「美和子はいつもさぁさんがうらやましいって言っていた。美和子は自分が周りから注目されていたいタイプだから杉原さんが長野でさぁさんを選んだ形になったのが許せなかったのじゃないかな…自殺未遂騒ぎをおこした時、あれだけさぁさんに親身になって助けてもらったのに…」


「美和子、夜とか出掛けたりしてるの?」


「俺も子供達も美和子が留守にしていても影響がないんだよ。出掛けるって言っても、勝手にどうぞって感じかな。でも、そんなには出掛けてないと思うけど」


「そう…杉原さん出張してるから」


美和子の旦那さんからの電話をきってから、私は何も手につかなかった。


その時の杉原さんの言葉を信じていた私。


杉原さんはまた出張先に行った。


電話やメールの連絡が少なくなった。


何かおかしい。


私は疑問を抱き始めた。


ある時、美和子の旦那さんから電話があった。


「杉原さんってどんな人?」


「どうしたの?」私は聞いた。


「最近、美和子によく電話がかかって来るんだ。美和子は寝室に行って長い間話をしているよ。聞いたら、長野に一緒にゴルフに行った人だと言っていた。美和子の電話の着信履歴を見たら杉原さんって人だってわかったから」


背筋が寒くなった。