男女雇用機会均等法では、妊娠や出産などにより労働者に対して不利益な扱いをしてはいけないと定められています。
理学療法士の女性は当時副主任でしたが、妊娠を理由として副主任の地位を外されたのであれば、病院側は男女雇用機会均等法に違反することになります。
女性側は「降格を簡単に許しては女性労働者に萎縮効果を与える。努力を重ねて得た地位を安易に奪うことは許されない」と主張しているようです。妊娠を理由に降格することは許されることではありません。
しかし、この女性は妊娠したときに軽い業務への転換を希望していました。そして、翌月に副主任の地位を外されたということです。
労働基準法では妊産婦の保護をするために、妊娠中の女性が請求した場合は、使用者側は他の軽易な業務に転換させなければならないことになっています。
女性は軽い業務への転換を希望していましたので、病院側はそれを受けて負担の少ない部署に異動して副主任の地位を外しました。
ここで論点になるのは、軽い業務への転換により、副主任の業務の役割を果たせたのかどうかということです。
軽い業務への転換によって、副主任という責務が果たせないのであれば、副主任という役職は外すことはやむを得ないことです。
副主任という役職以外の業務について、軽い業務をすることになったのであれば、副主任から外したというのは男女雇用機会均等法に違反することになります。
この部分を判断するには、病院の規定で副主任の役割をどのように定めているのかを見なければいけません。1審の広島地裁では「女性の同意を得た上で、病院側が裁量権の範囲内で行った措置」と請求を棄却していたようで、2審の広島高裁判決もそれを支持したようです。
法律の面から見ると、同意の有無よりは軽い業務への転換によって、副主任という役割を担えるかどうかということが重要になります。副主任としての責務を果たせないのに、副主任という役職のままにするのはおかしなことです。
また、病院側も原告の女性に対して、負担が少ない部署に異動すると副主任の地位を外すこととその理由を、異動させる前に説明をする必要があります。その上で、女性が異動を承諾したのであれば、問題はなかったと思いますが、実際はどうだったのかは分かりません。
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