風俗営業店の経営者に対して、従業員の本籍地や国籍を記載した名簿作成を命じていた内閣府令について、見直しを検討しているというニュースが出ていました。見直しの検討は、人権やプライバシーの保護が理由のようです。

 

労働基準法では、雇用している従業員の名簿作成を事業者に義務付けています。名簿への記入事項は、氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れの年月日などです。風営法の対象となる事業では、上記の他に本籍地や国籍も記入することになっています。

 

 

一方、日本には雇用対策法という法律があります。労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上を図ることを目的として定められている法律です。

 

雇用対策法では、外国人についても適正な雇用管理をすることを規定しています。第28条では、事業主が新たに外国人を雇用した場合や、雇用する外国人が離職した場合には、氏名、在留資格、在留期間などを確認して厚生労働大臣に届け出なければならないと規定しています。

 

つまり、外国人を雇うときには厚生労働大臣に届出をすることを義務付けています。但し、外国人であっても本人が日本人だと主張し、それを事業主が信じてしまうと、事業主は雇用対策法違反となってしまいます。このようなことを避けるには、事業主が労働者の国籍を確認できるような書類を提出させることは、当然のことだと思います。

 

また、雇用している外国人が離職した場合にも、厚生労働大臣へ届出をしなければなりませんので、社内の労働者に関する資料に外国人なのかどうかを記載することは必要なことです。そうしなければ、離職した人が外国人かどうかをいちいち調べなければなりませんし、外国人が離職したことに気付かず、届出もしなくなってしまう可能性があります。

 

風俗産業では、これらの外国人の雇用についての届出をしっかりとしているのでしょうか。風俗産業で働く外国人については、不法滞在者も少なくないと言われています。警察庁は、雇用対策法を事業主が遵守しているのかをしっかりと取り締まって欲しいですね。

 

記事では、人権やプライバシーの保護を理由に、経営者に義務付けていた本籍や国籍の調査を求めないことにすると書いてありました。しかし、国籍の調査をさせないようにしなければ、雇用対策法違反に問われる可能性があります。在留資格を持たない外国人の労働などが問題になっていますので、国籍と在留資格の確認は必ずやるべきではないでしょうか。

 

また、労働基準法では「国籍」「信条」「社会的身分」を理由として労働条件について差別的な扱いをすることは禁止しています。しかし、雇入れるときには「国籍」「信条」「社会的身分」を理由として雇わないことは、労働基準法で禁じていません。


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