日本人に「あなたの信仰する宗教は何ですか?」と聞くと、「無宗教です」と答える人が多いのではないでしょうか。普段は意識していなくても、葬式の時には仏教の形式で行うことから「仏教」と答える人もいると思います。

 

しかし、多くの日本人は自分でも知らないうちに神道的な考えを持っています。代表的なものが「穢(けが)れ」と「言霊(ことだま)」です。

 

 

皆さんは、家庭で使う箸・茶碗・お椀・湯のみなどを、家族共通で使うのではなく、家族それぞれのものとして決めて使っていませんか?

 

フォークやスプーンなどの洋食器であれば、誰用とは決めずに共通で使うのに、和食器については各自決めた物を使っていることが多いと思います。そして、他の家族のものを使うのは抵抗があるし、自分のものを他の家族に使われるのもあまりいい気がしないと思います。しっかり洗ってあっても、なんとなく他の家族の和食器は使いたくないという気持ちを抱く人は多いのではないでしょうか。

 

これは日本人が「穢れ」というもの感じているからだと思います。「穢れ」は汚れとは異なります。汚れは物理的なものですが、「穢れ」は気持ち的なものと考えると分かりやすいと思います。死・病・罪なども「穢れ」であり、怒りや憎しみや恨みなどの負の感情も「穢れ」だと考えられています。

 

 

もうひとつの「言霊」というのは、どのようなものなのでしょうか。「言霊」とは、言葉に霊的な力があるという考え方です。

 

例えば、翌日に川原でバーベキューをやる予定があるときに、誰かが「明日は雨が降る」と言って実際に雨が降ると、言った人を責めることがあるかと思います。雨が降ると言ったから、雨が降るというわけではないのですが、「あなたが雨が降ると言ったから雨になった」と言う人はいるのではないでしょうか。

 

旅行に行く前に「旅行先で死にますよ」と言われたら、非常に悪い気分になりますよね。それを聞いた人は「縁起でもないことを言うな」と言う人も出てくるかもしれません。そして、実際に旅行先で死んでしまったら、「あんなことを言うから死んでしまったのだ」と周りから責められることになります。

 

その他にも、受験生がいるところで「落ちる」「すべる」などと受験に失敗するような言葉を言わないように気を付けることも「言霊」の影響だと思います。

 

 

「穢れ」については、江戸時代などに比べて現在では気にしない人が多くなったかと思いますが、「言霊」についてはまだ多くの日本人の意識の中に残っているような気がします。日本で他国のようにキリスト教が普及しなかったのは、神道が日本人の中に根付いていたことも要因のひとつではないでしょうか。

(宗教についての他の記事)
○ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は兄弟みたいなもの?
○イスラム教徒はなぜ戒律を守るのか?
○宗教の宗派って何?
○ユダヤ教を信仰する人=ユダヤ人?