同じ宗教でも、教義や信仰対象などの違いや歴史的な経緯によって分派することがあります。分派したものを宗派といい、キリスト教ではカトリックやプロテスタントなど、イスラム教ではシーア派やスンニ派など、仏教では天台宗・真言宗・浄土宗などの宗派があります。

 

イスラム教やキリスト教では、異教よりも異端の方が罪は重いという考えがあります。異教というのは、まったく異なる宗教のことです。イスラム教でいえば、キリスト教や仏教などは異教になります。異端というのは、神様の言っていることを捻じ曲げることをいいます。同じ宗教でも、経典に書かれていることについて、自分たちとは異なる解釈をしている人を異端とみなします。自分たちとは異なる宗派は、異端だということになります。

 

キリスト教では、聖書にはやっていいことや、やってはいけないことについて、細かいことまでは書かれていません。聖書の記述を読んで、どこまでは良くてどこからは悪いのかを人間が判断して決めています。しかし、誰でもそれを決められるわけではなく、中世のヨーロッパではローマ教皇だけにしか認められていませんでした。

 

異端とは神様の教えを捻じ曲げていることになるので、非常に罪が重いことになります。異端の宗派については、それを滅ぼすことはその宗教にとっては正義であるという発想があります。そのため、過去には異端と認めた他の宗派への虐殺が行われたことも少なくありませんでした。現在でも、イスラム教のシーア派とスンニ派の対立がイラクなどで問題になっていますよね。

 

 

イスラム教は異端には対して非常に厳しい態度で臨みますが、異教に対しては寛容な態度を取ります。それに対してキリスト教は、異端だけでなく異教についても厳しい態度で接していました。イエス・キリストを神として信じることが正しく、他のものを神と信じることは間違いであり、キリスト教以外の宗教を信じている人間をキリスト教に改宗させることや、他の宗教を信じている人間を殺して排除することは悪いことではないという考え方をしたこともあります。そのような考えにより、中世の中南米で大虐殺が行われ、キリスト教への改宗を強要させることになりました。

 

日本でも、戦国時代までは法華宗による山科本願寺焼き討ちや、天台宗による天文法華の乱などのような宗派の対立による武力衝突がありました。当時の宗教勢力は武力を持っていましたので、大名などの言うことを聞き入れない宗教団体も少なくありませんでした。

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