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「自分だけ待ってたと思ってんじゃねー。」
「…え?」
大和の腕のなかで聞いた言葉に耳を疑った。
「オレも待ってたからな、南口のツリーの前で。なんつーか…オレ達やらかしたな。」
「っ…。」
ウソ、そんな…。
情けなさそうに笑う大和に言葉を失う。そして10年前のクリスマスの日を思い出す。
ウソでしょ…だってあの日…。
・・・・
「もしもし?大和?」
『…ああ。』
10年前、大和からの電話越し 笑い声が聞こえたことを覚えている。
外にいるんだなって、クリスマスだから遊びに出ているのかなって他人事のように思った。
約束の時間から5時間経っている。もう来ないのは分かっているのに、それでも辺りを見渡し彼の姿を探す。
だけど予想どおり、
『別れるか。オレ達。』
…だよね。
大和はそう言った。
私は変に冷静だった。
お昼から待ち続けたせいで身体が冷え切っていて、とにかく早く帰りたいばかりで。
手が悴む 立ちっぱなしで足も疲れた。バカだなスカートなんて履いてくるんじゃなかった…。
「…。」
それでも待っていたのは、
「私に聞いてるの?…それとも私に言ってるの。」
体とは反対に心が求めて止まない。大和に会いたい、声を聞きたい、最後でもいいから大和に触れたい…そう願って止まなかったからだ。
『…別れよう。』
…分かっていたのに。
「…。」
せめてなにか別れとは違うひと言を残したくて『メリークリスマス』、なんて言ったな…。
電話を切ってからもしばらく動けなかった。降り始めた雪がニット帽に積もり始めているのに。
「ハァ…。」
涙は出なかった…私はいつ泣いたっけ。ああ、そうだ、引っ越した夜にやっと泣いた。
「…バイバイ。」
大和の携帯番号を消した時に、泣いたんだ。
・・・・
「***。」
あ…。
大和が私の名を呼ぶ。ハッとし現実に戻される。
え…これは現実?夢じゃないの…。
「ゆっくり話さねーか。」
何から伝えればいいのか分からない。後悔も悲しさも忘れたふりをしていた時間も。
戸惑い続ける私の手を引く。乗り込んだタクシーのなか その手はずっと繋がれたままだった。
・・・・
パタン
握り続けてくれた大和の手の温もりは現実を受け入れさせてくれた。だから大和のマンション 部屋に入ってすぐ、
「…大和。」
考えるより先に体が動く。伸ばした手を掴まれそのまま胸の中に閉じ込められた。
ハァ…。
さっき…ツリーの前でも思った。こんなにも覚えているものかと思う。胸の広さも抱き寄せられる強さも、安心してしまう自分の癖も。
私の首筋に顔を擦り付け大きく息を吐いた。ギューっと強く抱きしめられた。
「話より先に…欲しいって言ったら呆れるか?」
え…。
顔を上げた大和の真っ直ぐな瞳に見つめられて胸のなかが痛い。これをときめきと呼ぶなら私はずっと大和にときめいている。
「…。」
だって大和を想うたびにこの痛みを感じていたもの。
・・・・
「ね…10年前に会えてたら…私たちなにか変わってたかな。」
「さぁ…見当もつかねー。」
「…。そこはもっとあるでしょ。」
軽く肩先を叩くとフッと笑う。
「今、お前が目の前にいる。」
大和は優しい表情で見つめる。大好きなアーモンド色した瞳がくすぐったいほど甘い。
「それで充分だ。」
微笑んだまま触れるだけのキスをする。唇を挟むみたいに焦れったいキス
「とりあえずはもう…。」
「ん…?」
「シーッ、な?」
返事の代わりに私は背を抱いた。裸の大和を ベッドの上で。
私の身体を這うように大和が動く。唇を使って舌を使って指を使って 私を探る。
「…。」
大和…変わったな…。
こんな色っぽい顔知らない。こんなに溶けそうなキスも。
私たちは…空白の10年にこうして誰かと肌を重ねている。それはどうしようもないけど、
私は今大和に抱 かれてる…夢じゃないんだな…。
「っ…。」
変なの…泣けてきた。
「…***?」
「ううん…。」
私は今、しあわせだ。
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