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「じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい。一護、頼むな。」
「ああ。」
翌日 俺は***を連れ出した。
昨日と打って変わっての曇り空 雲が薄く低くゆっくり流れている。
「今日は涼しいね。」
時折見える青空が夏って感じだが、暑いのはちょい休憩 風が若葉を揺らすなかなかのデート日和
…いや、ただの散歩か。
「夕ごはんまでには帰ってこいよー。」
ゲ、マジか。
「はーい!」
マスターの余計なひと言…。ガキじゃねーんだから、んな門限決めんなっつの。…も、だし、
「…。」
アイツらいねーよな…?
店を出てすぐ辺りを見渡してしまう。というのも、俺が***を連れ出した、なんてバレたら何言われるか分からねーからだ。
「一護ちゃん?なにキョロキョロしてるの。」
「ん…。」
なんだかんだ言ってくるに決まってる。んなのめんどくせーし、
「なんでもない。」
ぜってー付いて来るだろ…それはダルい。
「で。お前行きたいとこどこ。」
「えっとね…私が住んでいた場所知ってる?」
「ハイハイ。行くぞ。」
「あれ、商店街は通らないの?」
「帰りに案内する。色々面倒だから。」
「ん?」
「いいから行こうぜ。」
早く早くと急かした。 アイツらに見つかる前に…
「…。」
いや、まぁ別に…。
・・・・
「…お。」
昨夜アルバムを引っ張り出しガキの頃のコイツと対面した。そうそう、コイツだコイツ…プッ、泣いてるわ。え、俺のこと睨んでね?あー、俺はドヤ顔…泣かしたの俺かよ。
当時のことを思い出すと笑っちまう。
コイツの気を引きたくて意地悪したりイタズラしたり…嫌われていたかもしれねーよな。でも毎日のように一緒にいた…。
…んな幼なじみとまさかまた会えるとか。
「この道、知ってる気がする…。」
ワクワクドキドキ。表すとしたらそんな感じのコイツ。
「…。」
***だなんてな…。
横顔を見ながら、昨日の生意気な女が10数年ぶりの幼なじみだったとはと、昨日から何度もこの偶然を思う。
記憶に残ってたからあんなにも気になった。理由は分かったわけだから、もう構う必要ねーのに、
「…。」
誘ったのは…もう少し二人で話がしてみたかったからだ。
たとえば当時の俺のことをどんな風に思っていたかとか、再会してどう思ったかとか、いや…それもだけど、
コイツはなにが好きで嫌いで、どんな風な言葉を発してどう返すのか
どんなことでどんな表情をするのか
「もうすぐ着く。」
「ドキドキしてきたー。」
…コイツのこと、知りたいと思ったから。
・・・・
「たぶん、ここ。」
「うわ…懐かしい…。」
***の住んでいた低層マンションは住宅街の一角にある。このマンションも何度か…女の子だから家まで送るって、リュウ兄が先頭きってアイツらと来た記憶。
「うわぁ…。」
***はグルッと周囲を見渡す。
あの頃はただのマンションだと思っていたけど、会社の官舎?社宅…らしい。敷地入口のプレートでそうだと分かった。
「へー…。」
外資系の大会社じゃん…***の父さん、超エリートかよ…。
「…懐かしいな。」
口角を上げたままマンションを見つめる横顔に目を向けた。
「…。」
あの頃と違い目の前のコイツは落ち着いていて、大人びて、女で…知らない表情をたくさん持っている。
ほら、今の憂いを感じるその顔は写真に無かった。
「ありがと、一護ちゃん。」
***がパッと俺を見る。その瞬間胸が音を立てる。
「っ…。」
こういうことが昨日から多い。
最初は懐かしいだけだと思った。ガキの頃好きだった奴にたまたま偶然再会した…ただそれだけのことだから。
それなのに、コイツといると忘れたはずの音が胸の奥で鳴る。視線を合わせるだけで鼓動が速くなる。…そのくせ視線は追っちまう。
昨日から頭ん中バカみたいにコイツで埋め尽くされていて、
昔のガキのコイツじゃない。今目の前にいるコイツの顔ばかり浮かんで。
少し照れた声 目が合った時の一瞬の沈黙
「…。」
これは、懐かしさじゃねーわ。…
あの頃の甘酸っぱくて未完成な感情が、今の俺を焦ったく急かすから。
「ね、何処か分からないんだけど、ハートの形した模様みたいな?一緒に見た覚えがあるんだけど…。」
左右に首を傾げ、うーんと考えている…その横顔も初めて見た。
「…神社だろ。」
「神社?」
「天井の染みがハートに見えんだよ。行く?」
「うん!」
初恋は一度きりじゃないらしい。どうやら俺はまた始めちまった。
「雨降りそうじゃない?」
「ちょい急ぐか。」
10数年越しに、初恋ってやつをもう一度。
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