夏の続きを、君と:25(吉祥寺恋色:佐東一護) | ANOTHER DAYS

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「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

before

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「行くぞーー!」


絶好の海日和 リュウ兄の声を合図に皆砂浜へ駆け出した。


「あっつ!」


ビーチサンダル越しの足の裏が熱い。皆がアタフタするなか リュウ兄はTシャツを脱ぎ捨て海に飛び込んだ。


バシャン!!


勢い良く上がった水飛沫に笑い声が上がる。いっちゃんもハルくんもタケちゃんも次々と飛び込み、水を掛け合って騒ぎ始めた。


「夏だなぁ。」


その皆の様子を笑いながら 私はテントの設置を始める。


「皆ガキだよねー。」


辛口のりっちゃんと共に。


「りっちゃんは海入らないの?」


りっちゃんは短パンの下にレギンス 長袖のラッシュガードを羽織り口元まで隠れるサファリハットまで被っている。


「うん。僕 日に焼けたくないんだ。もうすぐ発表会だし、日焼けしたピアニストなんてイヤでしょ。」


「なるほど。でもつまらなくない?」


「全然。皆んなが楽しそうにしてるの見るの好きだし。それに荷物番は必ず必要だしね。***ちゃんは…、」


りっちゃんの目が私の頭から足先までをなぞったら。


「僕と一緒で入る気なさそうだね。」


そう思われても仕方がない。私もりっちゃんと全く同じ格好なのだから。


「入る気はあるんだよ。むしろ入りたいよ。」


「いっちゃんに可愛い水着は禁止されたの?」


「絶対ダメだって。誰も見ないのにね。」


いっちゃんと付き合い始めて早数日


私はすっかり彼のワガママに振り回されていた。


「海水浴ってどんな水着を着るかも楽しみのひとつじゃない?それなのに。」


なんなんだ私の格好は。まるで監視員。


「いっちゃんと一緒に水着を買いに行ったんだけどね、」


『お前下着で泳ぐ気?』

『ハァ。背中開き過ぎ。』

『あのな、お前バカなの。肌出し過ぎ。』…


「私が手にする水着はとことん反対されて。」


色鮮やかな水着姿の女子たちが目の前を通り過ぎる。フリルたっぷり大きなリボン ドットとか、


「着たかったぁ。」


羨ましい限りだ。


「***ちゃんの水着姿楽しみにしてたのになー。」


「ちなみにラッシュガードを脱ぐことも禁止されてるから。」


「さすがいっちゃん、徹底してる。」


頬を膨らませる私をりっちゃんは可笑しそうに笑う。


「あ、***ちゃんシートを後ろにも敷いてね。…で、二人は上手くいってる?」


「んー?…」


拡げたテントの下 荷物を置きながら頬が緩む。そんなワガママで勝手ないっちゃんだけどぉ…


「うん…!」


なんか…ニヤつくほどいい感じなんだよね。


迷わず満面の笑顔で頷いた時、


「捕獲。」


「え?」


海のほう 真後ろから いっちゃんの声がした。振り向く間もなく


「うわぁ!!」


身体がフワッと浮いて。


「ちょっ…!」


気づけばいっちゃんの腕の中 いわゆるお姫様抱っこ


目を丸くする私にいっちゃんは悪戯に笑い、


「特別サービス。」


「ええ?!」


抱き抱えたまま勢い良く波打ち際に駆け出して…なんて、


え、ウソ!!


遠ざかるテント りっちゃんが大笑いしている。あ、もしかしてそれで後ろ向かせたの?!


「やだやだ降ろして!!」


「無理。」


そして向かう波際 ハルくんたちも大笑い、来い来いと手招きしている。


なになに、みんなで仕組んでたぁ?!


「待って待って!」


「せーのっ!」


「バカぁ!!」


バシャン!!


・・・・


海水がキラキラと太陽を反射しながら宙を舞う


いっちゃんと過ごす夏を表すならこんな感じだ。


「…プハッ!!もう最悪!!」


最高に素敵な夏だ。


・・・・


「疲れた…。」


「でも楽しかったね。」


夜、いっちゃんとタコ公園で落ち合う。付き合い始めてからの日課になっていた。


さすがに今日は体がヘトヘトだから無しかなと思っていたけど、メールが届き私は迷わず会いに来た。


「首の後ろ赤くなってる。焼けてるね。」


前屈みにベンチに座り込んでいるいっちゃんのうなじは赤い。


「ちょい痛い。お前は?焼けてない?」


「完璧ガードしてましたから。」


嫌味っぽく言う私をフンと鼻で笑い、また『疲れた〜』と大きく息を吐く。


「でもホント楽しかった。…あ、りっちゃんが発表会来てって言ってたよ。」


「あー…。お前行く?行くなら行く。」


「じゃ一緒に行こ。」


約束を交わすことで増えていく夏の思い出


「ヤバ…眠い。」


「フフ、大丈夫?」


心地良いこの場所も。


夜のタコ公園は静かで虫の鳴く声 風で揺れる緑の音だけが響いていた。見上げれば瞬く星 …


「…。」


まだ子どもの頃の約束のこと 話せてはいない。タイミングがなかなか掴めなくて、


「…え、」


肩にフワッと重みを感じた今も、


「…寝ちゃった?」


今夜も…また言えなくて。


・・・・


別に話してもいいような気がしていた。今の私たちの関係なら昔話として話せる気がした。


だけどもうすぐ…あと半月もしたら あの時と同じように私はここを離れる。いっちゃんと…また離れる、そう思ったら、


「…ハァ…。」


口にすることが辛くてイヤで。


完璧…落ちちゃったな…。


彼の体温と小さな寝息が耳に届く。ふと手と手が触れたら指先からも存在を感じる。


…ずっとそばにいたいな…。


あの頃の私もそう思っていたのかなって 見えない流星群を探しながら思った。



next

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