失恋記念日:37(誓いのキス:鴻上大和) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

before

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「ここ…。」

「あの日の部屋じゃねーだろうけど、同じタイプの部屋だな。」

大和に連れて来られた場所は あの夜過ごしたシティホテルだった。部屋も…私には同じに思えた。

カーペットは深く柔らかくて 洗練された家具とソファセットは猫足で

中央の整えられたキングサイズのベッドは 埋もれてしまいそうなほどの厚みがあって

「…同じ部屋だと思う。」

窓際に立つと都心の煌びやかな夜景を見下ろせる

この景色を見た覚えがない…あ、そうか私が見たのは朝焼けの…

「***。」

背後から名を呼ばれ振り返った…と、同時だった。

「…うわっ!」

腕を掴まれベッドに押し倒されたのだ。

「色気のねー声だな。」

えええーー…?!

想像したより ベッドはしっかりとした硬さがあった。つまり体が少し跳ねた。

「…なに…」

「なにじゃねー。」

大和は押さえ込むように馬乗りになり見下ろす。

「あの夜はお前のほうからベッドに誘い込んだけどな?」

意地悪な笑顔にカァーと顔が熱くなって…。

いきなり??あの夜もこんな感じだったの??

「お、覚えてないし…!」

「じゃなにを覚えてんだ。言ってみろ。」

見つめ続ける大和とは反対に目をキョロキョロとさせ落ち着かない私。それでも頭をフル回転させ記憶を辿った。

「…居酒屋で飲んで、二軒目も行って、街を歩いて…タクシーがつかまらなくて、…私がこのホテルに泊まりたいって…」

「だな。で?」

「…それから…。」

目を合わせればどこまでも頬が熱くなる。あの夜のことを想像すると泣きそうなほど恥ずかしくなる。

「…朝目が覚めたら、私は下着姿で隣には見知らぬ裸の男が背を向け寝ていて…」

「オレだな。」

「…朝日が眩しくて、ここがどこかも分からなくて、もうわけ分かんなくて、…慌てて部屋を出た…。」

「よく覚えてるじゃねーか。」

「覚えてないんだってば!… どういう流れで大和とそうなったのかとか、どんな風だったのかとか、」

「プッ…」

大和と一夜を共にした…愛し合ったと言うべきかどうなのか その時のことはスッポリ抜けている。

「酔ってたから全然覚えてないのっ…。」

大和は戸惑う私を見つめながら

「お前はしっかり覚えてる。」

そう言って優しく微笑んだ。そして、

「まー、付け加えるとするなら…。よっ…と。」

わ…

私の両腕を掴み自分の首に廻させた。私は耳まで真っ赤だろう。

「お前はこうしてオレを抱き寄せて、」

「もういい、もういい!」

「あの男の名を呼んだ。」

え…?…

スッ…と表情を失う私を大和は見つめ続ける。そして、

「笑ってんだけど泣きながらな。」

指先で頬に触れた。まるでなにかを拭うような仕草

それはあの夜 大和が私の涙を拭いたってことなの

「んな女、抱けると思うか?」

え…

「…え?」

耳を疑った。だってそれって、

「抱くわけねーだろ。あんなに悲しんでる奴をあれ以上傷つけられるかよ。」

あ…

大和は優しい笑顔で私を見つめ続ける。私はそんな大和の顔がぼやけ始めた。

「オレたちはなにもなかった。こうして…抱きしめたらお前は眠った。」

ギュッと抱きしめられたら、私は固く目を閉じて。

・・・・

花火を観ながらした会話を思い出す。

『敗者復活かなーって。』

『失恋した女を口説くわけねーだろ。』…

…ああ、そうだよね

あれが大和の本心。傷ついた心の隙を狙うような人じゃない 一夜限りの関係を望むような人じゃない

「…う……」

寄り添い守ってくれる…私はそんな大和だから好きになったんだ。

あの夜からずっと守ってくれていたんだね。

「ハァ…」

ヤバ、どうしよう涙を堪えきれない…

泣きたくないのに抱きしめ返したいのに

それなのに大和は涙に追い打ちをかけた。

「お前が好きだ。」



・・・・



「…は?」

身体が…震えている?吐息が震えている。ガバッと顔を上げれば

ウソだろ

「なんで泣いてんだ??」

***は顔を真っ赤にしてポロポロ涙を流していて。

驚き目を見開くオレに泣きながら笑う。そして、

「…嬉しい……りがと…。」

掠れる声でそう言って両手で顔を覆った。

「なんで泣くんだ、意味が分からねー!」

引っ張り起こししっかりと胸に抱いた。頭を散々撫で背を撫で 時に目を合わせては溢れる涙を拭う。

「泣くなよ…。」

泣かせるつもりなんて微塵もねーのに。

これはなんの涙?嬉し泣きか?いや、それは自惚れすぎか

「泣ーくーなー。」

同じリズムでポンポン背を叩けば

「…。おい…」

あの夜のように***の身体から力が抜けていく。小さな寝息が聞こえ始める。

「プッ…」

思わず笑っちまった。

「またおあずけかよ…。」

・・・・

あの夜とは違い オレは***を抱きしめ続けた。

「おやすみ…。」

宝物を得たような満たされた気持ちでずっと。


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