Rainy day:2(吉祥寺恋色:佐東一護) | ANOTHER DAYS

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「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

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「これお前の分。」


「待ってました!」


ケーキを食べ終える頃 いっちゃんはテーブルに2枚の写真を置いた。


それは七夕祭りでの私と彼のツーショット。私は浴衣姿 サトウ洋菓子店の前で撮ったものだ。


「二人とも変にガチガチだね。」


なんだか笑ってしまう。


一枚目はピースはしているもののお互いの表情は固い。だけど二枚目は


「あ、これ、おばさんが二人とも笑いなさい、もっとくっつきなさいって、」


あの時倫護おじさんまで茶化しに来て思わず笑っちゃって、


「なんかこの写真良い感じ!」


私もいっちゃんもなんだか緊張が解けて。


「まぁまぁな。」


いっちゃんも満更ではなさそう 顔を見合わせ笑い合う。


腕の触れる距離で撮った。


恥ずかしくてでも嬉しくて、


少しだけ私のほうへと傾げた首がなんだか随分優しい風で。


歯を見せニッコリなんてものじゃない。だけど優しい表情は私の胸を叩くあの穏やかな笑顔。


ジッと見つめてしまう私は


「…いっちゃんの笑顔、好きだなぁ…」


あ、ヤバい!


「え?」


心の声が漏れるなんてありえないでしょ


「こ、この浴衣、可愛かったなぁ。」


バカバカ!


私はアタフタしながらアイスティを飲み誤魔化す


「また来年も着たいなぁ。」


なんて話を逸らした。


「着れば。浴衣着たら出店のもの二割引きだしな。」


いっちゃんは気にも留めなかったのかゴロンとベッドに寝転がる。胸を撫で下ろしたけど、


「そうだよ、それなのにいっちゃん一人で何処か行くから。…あ。」


あ、これこそヤバい!


『ヤキモチ妬いたの、気づかなかった?』…


タコ公園でのあの時の私たち


私ってばバカ、なんでそれ言っちゃったの?


ハタッと目が合えばきっと同じ場面を思い出した私たち


「…。」


いっちゃんは 少しだけ瞳を揺らした。


・・・・


あの夜私は、いっちゃんといる時感じる高鳴りの理由を自覚した。


それから早見くんと別れる決意を…結局ズタボロにフラれて、沢山泣いたな。立ち直れたのは、いっちゃんに恋をしている この気持ちが心を温かくしたからだ。


七夕の夜のあの瞬間がどうかただの気まぐれではありませんように


そんな風に願いながら日々彼への想いは増すばかり


「…あ、雨、まだすっごい降ってる?」


でも、意気地なしの私に あの夜の理由は聞けない


私は慌てて腰を上げ窓際に立った。


ザーーーー…


「…あー、変わらず降ってる〜…。」


目に映る景色はさっきまでの灰色の風景と変わらない


「止みそうにないね…。」


ドキドキする…。


しばらく…雨が降る様子を眺めていた。と言っても意識は全部 斜め後ろ ベッドに寝転がっている彼に。


だけど、黙り込んでしまったいっちゃんとうるさいくらい鳴り始めた胸の音から逃げたくて


…かと言って、くぐもった想いを弾かせてしまいたいような そのタイミングを待っていたいような


「…止みそうにないから…もう帰ろうかな。」


心をいっちゃんに…敢えて触れて欲しいような。


ザーーーー…


…でも、


「…雷鳴る前に帰るね!」


心臓が、うるさい。


窓際から振り返った時、


「え…」


寝転がっている彼に手を掴まれた。


「…帰るなよ。」


え…。


目を合わせれば もっとうるさくなって。



next

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