★教えてteacher:16 (誓いのキス:鴻上大和) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

before

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「おじさん、おはよ。」

 

「起きたか。よく寝たなぁ、もう昼前だぞ。」

 

「爆睡したぁ。」

 

昨夜ぼんやりとした瞼のまま部屋に上がり 布団に倒れ込む。重い瞼は一向に開こうとはせず 私はぐっすりと闇に落ちた。

 

そして迎えた朝。いや、お昼。

 

窓からは眩しいほどの陽射しが降り注いでいる。雲ひとつない青空 蝉は今日も絶好調だ。

 

「美味しそ~。」

 

用意されたサンドイッチとヨーグルトを久仁庵で食す。挽き立てのコーヒーの香りにホッと一息つく朝…いや、お昼なのだ。

 

「おじさんは食べないの?」

 

「俺はこれから出かけるから。」

 

久仁彦おじさんは昨晩マンションには帰らなかったらしい。二階は私が使っているわけだから多分お店にずっと居て 欠伸を何度もしているところを見るとどうも寝ていない。

 

思いっきり迷惑も心配もかけてるよね…。

 

「大和から電話があったぞ。」

 

わっ…

 

カチャ!

 

不意に聞かされた事実

 

こんなに動揺するとは思わなかった。カップをソーサーに戻し損ね危うく溢しそうになる。

 

「酒を飲んで起きないから泊まらせると話した。ここじゃなくてマンションにな。」

 

昨夜 久仁彦おじさんはどうこう言いはしなかった。私が泣くのをただ見つめ 私の決意をただ聞いていた。

 

どう感じたのか…分からないけれど とりあえず私の気持ちを落ち着かせることをまずは考えてくれたんだろう

 

大和さんと距離を置く。今の私にとってはそれが最善でそれが一番望んでいることだと分かっていた。

 

「ここだと大和が迎えに来るだろ。誤魔化したつもりだが、大和のやつ勘が良いからなぁ。様子が変だとは気づいたかもしれない。」

 

そして私の携帯を差しだし、肩を竦めた。

 

「朝から鳴り続けてるぞ。」

 

着信に受信 それは全て大和さんからだ。

 

『おはよう。起きたら連絡してくれ。』

 

『また昼に電話する。』

 

『お前まだ寝てんのか?あとで電話する。』

 

「…ホントだね。」

 

 昨日のことが夢だったら良いのにと思っていた。

 

だけど目覚めた場所が大和さんのマンションではないこと 隣に大和さんがいないこと…その現実が、

 

あの虹色の噴水と大和さんとアカリさんの抱擁は決して夢で見たものではないってこと

 

「…。…」

 

…ピッ。

 

実感させて 私は今更のように携帯の電源を落とした。

 

「マンションに居ると言ったし、店が休みなのも知ってるし…あ、今日は出勤するって言ってたな。何にしても大和が今日ここに来ることは無い。」

 

「うん…。」

 

「今夜も泊まってけ。」

 

話し合ったほうが良い、とりあえず会え、…などなど きっと言いたいことはあるはずだ。

 

だけどそんな事ひとつも言わない。 その優しさに甘える私は面倒な姪っ子だ。

 

「大和には俺から言っておく。じゃ俺は出かけるから。何かあれば連絡するんだぞ。」

 

久仁彦おじさんはポンと私の頭を撫で 店の出口に向かう。

 

「…あの、久仁彦おじさん!」

 

私はおじさんに駆け寄った。だって昨日から言ってない まだ言えていない。

 

「どうした?」

 

「…迷惑かけてごめんなさい。それと…ありがとう。」

 

改まって頭を下げればおじさんは優しい眼差しで私を見つめ返し首を横に振った。

 

「出来ることはしてやる。可愛い姪っ子が泣いてんだからな。」

 

「わ、もーー!」

 

笑いながら私の髪をわしゃわしゃと掻き撫でた。私まで笑ってしまった。

 

「いってらっしゃい!」

 

なんだか久しぶりに笑った気がした。

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「…どーいうことだ。」

 

翌日になってもオレの頭の中は疑問符だらけだった。

 

朝、***に電話をする。出なかった理由をまだ寝ていると安易に考えていた。だけど、

 

昼にかけてもでない。連絡するようメールも送ったがそれにも返信はない。その頃から胸がザワつき始める。

 

「なんで連絡が取れねーんだ…。」

 

おかしくねーか昨日から…。

 

そしてその疑問が不安に変わったのは

 

『***が風邪を引いた。今夜もこっちに泊まらせるから。』

 

昼過ぎに届いた久仁さんからのメールだ。

 

理由も理由だが、

 

なんで全部久仁さんからなんだ?なんで***は自分で連絡してこねーんだ…。

 

***がオレを避けている。それを決定づけた。

 

アイツに何かあったのなら 久仁さんがオレに知らさないはずはないと確信している。オレと久仁さんは随分昔からの付き合いだ、オレはある意味兄のように尊敬しているし オレ自身信頼されている自負がある。

 

口を噤むのだとしたら オレ同等もしくはそれ以上の親しい誰かからの頼みか、自ら庇っているか、しかない。そう考えれば

 

久仁さんも納得しての、この状況かよ?

 

案の定 そのメールが届いて以降 ***の携帯は繋がらなくなって。

 

「…なんでだ??」

 

久仁さんに電話をかけた。オレが今出来ることと言ったら 久仁さんを問い詰める事以外無い。

 

それなのに、

 

…ピッ

 

『もしもし。』

 

「もしもし大和だけど。」

 

『どうした。』

 

「ハァ…どうした、じゃねーだろ。***は。」

 

『寝てると思うぞ。』

 

「思うって…どういうことだよ、一緒に居るんじゃねーのか。」

 

『あいにく俺は外出中だ。悪いが切るぞ、相手が待ってるから。』

 

「ちょっと待……クソ、だから一方的に切るんじゃねー…!!」

 

アイツと繋がる手段も切られる。

 

わけの分からねー話なら久仁さんは***を説得なりすると思う。いくら可愛い姪っ子だとしても 間違いは間違いだと告げる人だから。

 

だけど、この電話の調子じゃ久仁さんは納得してんだ。もしくはオレに会いたくないとよっぽど***が駄々を捏ねている…

 

「なんでだ…。」

 

体の中が熱を帯びてザワつく。それは次第に暗い雲になりオレの胸を覆った。

 

・・・・

 

「マジで出ろよ…。」

 

補習授業を終え 早々に高校を後にした。居ても経ってもいられない衝動をどうすることも出来ず 連絡が取れさえすればと願いながら今日何度目か***に電話をかける。

 

「…ハァ…。」

 

全戦全敗じゃねぇかよ…。

 

相変わらず 電源が入っていないと冷めた返事しか返ってこない…。

 

~BBB~

 

「ッ…」

 

握ったままの携帯が着信で震える。慌てて画面を視界に入れた。

 

あ…。

 

…ピッ

 

『あ、大和?私。アカリ。』

 

一瞬のことだとしても アカリの明るい声はオレを平常心に戻し、

 

『そろそろ仕事終わった頃かなぁって。』

 

「よく分かってるじゃねーかよ。見てんのかよお前は。」

 

傾き始めた太陽に目を向けさせた。

 

 

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