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「…やんっ…」
「おいおい、喜ばれちゃお仕置きになんねーだろ。」
「喜んでな…んっ」
「イヤなのか?」
「イヤじゃ…ない…やっ…」
「クック…どっちだよ。」
「…意地悪っ」
流輝さんを睨み付けたって全然迫力はない。だってベ ッドの上 彼の動きに合わせて私の身 体は跳ね
「…やっ…」
声は跳ね…押しのけるどころか背を抱 き寄せて。
「はぁ…っ…」
火 照る体のせいで頬は桃色に染まっていた。
そのせいで瞳を潤わす私に 流輝さんは満足げな笑みを浮かべ何度もキ スをする
ギシギシと呻るベ ッド
絡 まる手足と早くなる呼吸と肌と肌のぶつかり合う音
それに加わる私の声と…全部が一つになって 私と彼を包み込んで
「…ッ…ハァ…絞 りだされそうだぞ。」
「…もぉ…」
甘いお仕置きに夢中になって。
・・・・
「お姫様、お水を飲まれますか。」
「いただきます…。」
グッタリした私を笑いながら半 裸の流輝さんがミネラルウォーターを持ってくる。
「体力ねーな。」
「流輝さんがあり過ぎなんだよ…」
寝不足が続いている体には堪えた…苦笑いを返しながら体を起こした。
「あの男のことだけど。」
「ん?」
ギシ
喉を潤せば 流輝さんは私の背後に体を滑り込ませ
「あの男って…阿笠くんのこと?」
「ああ。」
まだ衣服を身につけていない素肌の背をフワッと抱きしめた。
「お前が『白金の花嫁』の何かしら情報を持っていないと分かればそのうち消えると思うが…」
静かに…かと言って重みのある声で
「深入りするな。」
そう告げられて。
「…うん…」
顔は見えないものの真剣であろうその表情に頷き返す。…だけど
「…。」
流輝さんの忠告を素直に受け入れられなかった。だって少なからず彼が『白金の花嫁』をどうして探しているのかそれは知りたくて。
今までの絵画のように彼もまた裏ルートに廻そうとしている?もしくは何か特別な理由があるとか…
それを止めるのは曾孫である私しかいないって…
「でも…っ…」
言い返そうとした私を遮るように不意に顔を覗き込んだ。そして
「クック…また眉間に皺が寄ってる。」
可笑しそうに頬と頬を合わせ
「マジでボトックス打つぞ。」
チュッと…額にキスをして。
「『阿笠くんがどうして『白金の花嫁』を探しているのか知りたい』…って顔だな。」
流輝さんにはお見通し…私が納得していないことも伝わっているんだろう
「ふぅ…芸術バカだな。」
懲りない私にため息をつく。だから私は胸の内を吐いた。
「気になるよ。曾おじいちゃんの作品だもの。それに私へのプレゼントだもの…」
そう呟けば廻した腕にギュッと力を込める。そして少しの沈黙のあと
「お前は隙があり過ぎるんだよ。」
「え…」
そう言われた。
「そんな…私、ブラックフォックスのことを誰かに話す気は…っ」
「それを心配してんじゃねーよ。」
「じゃなに…」
耳元で低く囁かれていた声が頭上に動く。髪に頬を擦りつけキ スをされ…そして小さなため息のあと
「お前は俺が選んだ女だ。」
「え…」
そう…言われて。
振り返り目を合わせれば流輝さんは少しだけほんの少しだけ戸惑うような表情を見せる。けれど見つめ返された瞳は凄く
「俺がただの芸術バカに惚れると思うか?」
あ…
優しくて…まるで愛おしいなにかを見つめるような瞳で見つめて。
「俺をあまり心配させるな。」
「…流輝さ…」
こそばゆい気持ちになった。だってそれって妬いてくれたのって…
「フフ…」
思わず顔がニヤける。そんな私を彼が見逃すわけはなくて
「まだまだお仕置きが足りねーな。」
「え、わっ!」
ギシッ
バフッ!
あっという間に組み敷かれた身体はベッドに沈む
目を丸くしたまま見つめ返せば
「エロいのは俺の前だけで十分だ。」
ニヤッと笑われたら…調子に乗った事を後悔する羽目に…
「えぇ〜??」
眠るのはもう少し先 今夜もまた寝不足な夜。
…でも…良いかな。
・・・・
少しだけ 流輝さんを怒らせてしまった昨夜の私の行動
いくら恋人だからと言って その時々の全てを話す必要は無い。いい大人なんだし 私たちはお互いの行動を束縛し合うような性格でもない。
男性と食事をした 不本意だとはいえ キスを…した。
だけど阿笠くんに心揺らぐなんてないから
流輝さんとの関係に影響を及ぼすような心の迷いは全くないから
「…もう…流輝さ…っ…やっ…」
私こそ流輝さんに余計な心配させたくない。
昨夜の出来事を事細かく話す事はしなかった。
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