あなたに会いたくて:3 (吉祥寺恋色:Short:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

before

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ち、近い…っ

 

足元に転がった私のスマホ 彼が手を伸ばす

 

今思えば壁紙のこと心配しなよって自分に言っちゃうけど

 

この時の私はそんな事微塵も頭に無くて

 

…カッコいい…

 

魅取れていた。突然現れた目の前の彼にまたいとも簡単に視線を奪われていた。

 

コックさんのような真っ白いユニフォームに腰に巻いた黒いエプロン 首元には小さな赤いネクタイをしていて

 

少し長めの印象の前髪をピンで留めている…端麗な顔立ちを隠さず瞳に映す

 

「…。」

 

眉の形もキレイ 肌もキレイ…

 

スマホを拾い 埃を手の平で払った。

 

その長く上品な指先にまでも瞳は奪われる。そしてその

 

「…?」

 

画面を凝視する 眉間に寄った皺にまで。

 

 「…。」

 

「…あ…」

 

こんな風な私だったから そのままの表情で見つめ返された時にやっと

 

ヤバいッ!!!

 

ハッと我に帰った。カーッと身体が熱くなり冷や汗が出た。

 

バッ!!

 

「すいません!!ごめんなさい!すいません!!」

 

スマホを奪い取ったところがもう遅い

 

「それ…」

 

「ご、…ごめんなさい…」

 

もうリミット?この恋は呆気ない。

 

・・・・

 

「…。」

 

「…。」

 

どうしよう…っ

 

私たちを包む不穏な空気 息苦しい沈黙

 

体が硬直している。かと言って足はブルブル震えている

 

走り逃げ去れば私の顔なんて大して記憶に残らなかったろうに

 

体が動かなかった。恥ずかし過ぎて目をギュッとつむり時が過ぎるのを待つしかなかった。

 

彼はどんな顔してるんだろう きっと冷めた目で見下ろしている…

 

「…っ」


ソー…っと開けた瞼 次の瞬間


グイッ


「へ…っ?」

 

「通行人の邪魔。」

 

「え…」

 

腕を掴まれ すぐ脇の公園に一歩足を踏み入れさせられる。そして

 

「俺が壁紙とか…。」

 

きたっ!

 

またギュッと…瞼を閉じさせられる…。

 

「ごめんなさ…」

 

見ていない振りをして欲しかった。

 

既に熱を帯びた顔面がもっと熱くなる。スマホを握る手に力が入る。というか今掴まれた腕が熱い

 

「…すいません…ごめんなさい…。」

 

熱い熱い熱い熱い…。


・・・・


また訪れた沈黙の中で

 

このまま消えてしまいたいくらいの羞恥心が私の全部を覆っていた。だって呆れられて気持ち悪がられるに違いないんだから。

 

「謝ることじゃねーだろ。」


…え?

 

冷たい視線で刺されて 軽蔑されて

 

「俺に惚れてるって事だろ?」


あ…

 

…すぐに立ち去ると思っていたのに。

 

「まぁなんて言うか…。…どうも。」

 

ハッと顔を上げた。その声の優しさに…顔を上げた。

 

「まぁ…壁紙にしてるっていうのにはすげぇドン引きだけどな。」

 

「あ…」


変な女だと確かに思われている。だけど

 

「マジビビる…久しぶりにウケたわ。」

 

笑われてはいるけれど決してバカにはされていないんだって


そんな風に思えた嫌味のない笑顔をくれて。

 

「す、すいません…」

 

「だから謝んなよ。」

 

 微かに感じた頭上に光 私の気持ち 好意的に受け取ってくれたの?

 

…なぁんて

 

「っつか最悪なのはお前だろ。自己満足を見られるなんて。」

 

なわけない…

 

「事もあろうに片思い相手に見られるとか。」

 

まぁそうだよね…

 

「同情するわ。」

 

「はい…」

 

片思いだと告げられた事で上手に私はフられた。

 

あああ…。

 

やっぱりリミット この恋は呆気ない。

 

・・・・

 

「今からカラオケ行かない?…うん、駅で待ち合わせしようよ。」

 

吉祥寺からの帰り道 子供の頃からの男友達 つまりは気心の知れた幼なじみに連絡をした。

 

「…別に何もないよ。ただ暇だから。」

 

フラれたんだから憂さ晴らしに違いなかった。とは言っても私はどこか冷静で。きちんと現状を受けとめていて。


というか…むしろ心晴れやかだった。


「え、今駅前なの?じゃ良いや。私今吉祥寺だから1時間はかかるし。…良いって。またにしよ。」


その理由はなんとなく…いや、彼との最後の会話のせいに違いない。それは


「無理しなくて良いよ。1時間も待つってどんだけ暇人よ。待たなくて良いから。」


彼が私をサラッとフッた後


『じゃ。』


『…。』


『…はい。』


俯く私に差し出した自分のスマホ…。


・・・・


「だから待たなくて良いって!もうしつこいなぁ。」


駅のホームに立ってもまだ幼なじみとの言い合いは続いていた。


「もう電車乗るから切るね!ホント待たないでよ!」


強情なコイツ 昔っから変わらない。


・・・・


『…え…』


彼に差し出されたスマホの画面


『え、これ…』


驚き顔の私にニヤッと笑い


『俺も自己満。』


その一言を残し 颯爽と風のように消えた彼…。


『…そか…』


その瞬間だったな 私の頬が緩んだの。


『佐東さんも…片思いしてるんなんだ。』


なんだか彼が微笑ましく思えたの…。


明らかに隠し撮りしてたね 横顔の彼女。


・・・・


「もう切るから!バイバイ!」

 スマホの向こうしつこい相手にいい加減切ろうとした時


『オレが会いたいんだよ!』


「…え?」


耳を疑う一言にドキッと胸が音を立てた。


初めて言われた会いたい宣言


『…オレが会いたいんだって。』

 

呟くような宣言…。


小さな頃からの男友達 つまり幼なじみの言葉


いつもならハイハイって笑いごまかすのに

 

「…なにマジな声出してんのよ。」

 

ときめくのはどうして。


・・・・

 

「絶対待っててよ!」


電車が待ち遠しい。早く早く早く


佐東さんは今頃隠し撮りした彼女に怒られているのかな。


ケーキを嬉しそうに頬張る彼女はお店で電話をしていた彼女。


「電車来た!待っててよ!絶対よ!」


上手くいくと良いね。


高鳴る胸 ニヤける顔 到着した電車に飛び乗った。


「早く早く…」


あなたに会いたい。




★END★

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