★サンタマリア:33 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

ちょびっと★を…。なんせ流輝ですからね。

 

before

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「あん…ッ…」

 

思わず声を漏 らす私に 耳朶を口で挟 みながらクスッと笑う。その低く生ぬるく感じる息と声に

 

「お前の声やっぱ良い…。声だけで」

 

…私こそ…私こそだよ

 

「イ キそ…。」

 

「や…んッ…」

 

彼の魅力に心だけじゃなくて身 体までも奪われて。

 

この狭 いベ ッドに二人 折り重 なるように肌を合 わせる夜

 

どちらが先に求めたか…なんて間違えなく仕掛けたのは流輝さんなんだけど

 

「…ッ…ふぅ…なんだろな、お前は一体…」

 

「…う…」

 

応えた私こそ彼を求めている だからどっちでも …つまりどっちでも

 

「全然モ タねーよ…」

 

「…あ…っ」

 

ギシッ!

 

…どっちでも良い 抱 きしめられても 抱 きしめても。

 

・・・・

 

「次いつが休みだ?」

 

流輝さんはアパートに置いていた衣服を身に纏いながら聞いた。

 

「…しばらくはお休み取れないかも。」

 

「あ~…例の展示が始まるんだな。担当にでもなったのかよ。」

 

私は下 着だけを身につけベッドに横たわったまま

 

「ん…」

 

着替えている彼のシルエットを目に映しながら頷く。

 

「…そうなの。『花水木』の展示担当になったの。」

 

バサッ

 

彼がシャツを羽織る一瞬…後ろ姿に傷を確認しようと思えば出来たけれど

 

「…へぇ。…当分忙しいわけだな。」

 

敢えてそれをしなかった。むしろ私は見ないようにしていた。

 

「…怪盗ブラックフォックスが…」

 

この固有名詞を口にする事を どんなに躊躇ったか

 

「狙ってるかもって達郎が…あ、前話した幼なじみね、刑事なんだけど…それで…警備を厳重にするとかで…私担当だから色々打ち合わせとか…。」

 

声は震えている事に変に焦って おしゃべりになって…。

 

「ふ~ん。」

 

「明日からしばらくは…少なくとも展示が始まるまでは残業も多くて…会えない…と思う…。」

 

小声になったとしても この距離 雨音もない月夜

 

「あっそ。」

 

彼の耳にはよく届いただろう

 

「うん…。」

 

…だけれど…どこか伏し目がちな私だというのに 彼の反応は

 

「俺とは会わずに幼なじみと会うってわけだ。」

 

「え?」

 

え、そこ??

 

…意外なもので。

 

ベ ッドに腰を下ろし 髪を掻き上げる横顔は澄まし顔。だとしても

 

「刑事だかなんだか知らねーけど。そういや伊吹も言ってた。結構博物館に顔出してるようだな。」

 

「ああ…まぁそりゃぁ…」

 

って、ねぇ流輝さん その反応ってもしかして

 

ギシッ

 

胸 元を隠し 身を起こす私にはなんだか

 

「よく二人で会ってるのか。」

 

「いや…達郎には私と同い年の妹がいてね、どちらかというと彼女とはよく会うよ、新聞記者をしていて、スクープとか教えてくれてスッゴい面白くってっ」

 

「フン。」

 

「ねぇ流輝さん…っ」

 

「なんだよ。」

 

ねぇ…ねぇ、もしかして

 

「…妬いてる?」

 

「は…。」

 

興味津々の顔をしてしまったと思う。だって彼の反応が凄く…凄く凄く

 

「…なるほどな。これが嫉妬ってやつか。」

 

「え…」

 

嬉しかったから…。

 

「こういう感情は初めてだな。これが嫉妬…フン。やっぱりお前は大した女だな…っと。」

 

「わっ」

 

バフッ

 

ニヤつく私を一瞬目にしただろう直後にラリアート、なんて

 

「うぐっ…!ちょっとぉ!」

 

「クック…」

 

舌を出し笑う彼に私まで笑い返して。

 

・・・・

 

「でも展示が落ち着いたら少し長い夏休みを貰えると思うよ。」

 

「俺も休むか…有休貯まってるし。」

 

ギシッ

 

彼の腕枕 背をしっかりと抱き寄せてくれるから自然と彼の胸に頬を埋める事が出来た。

 

「夏休みに『スケッチ旅行』ってのも悪くねーな。」

 

「え?」

 

「一輪挿しじゃツマらないだろ。」

 

テーブルの上の紫陽花一輪…その脇に置きっぱなしにしていたスケッチブック

 

流輝さんは私が絵を描いていると気づいたのだろう。

 

部屋に入ってからその事実に全く触れなかったのに…不意にこんな風に言ってきて

 

「お前の言う 心に響く景色 探しに行こうか。」

 

「…っ」

 

私の心臓 ギュッと掴んで 離さなくて。

 

・・・・

 

本当は…右肩の傷のこと 聞こうと思っていた。

 

『桜』が怪盗フォックスに盗まれた夜 彼は何をしていたのか

 

私との出会いも…ただの偶然だった?博物館で働く私と付き合うことで貴方は博物館への出入りを不信に思われなくなった。

 

館長とは顔見知り 従業員の人数を知って シフトを知って 展示室への裏口を知って

 

…私が大正のダビンチの曾孫だってことも…知っているの

 

私を恋人にしたのも こうして胸を掴んで離さなくしたのも

 

全て…怪盗ブラックフォックスの…

 

ギュッ…

 

「どうした?」

 

「ん…」

 

考え出せば胸の中に嵐が巻き起こる。深い惑いや痛みが胸を覆って苦しくなる。

 

だけどそれを言葉にし ぶつければ現実になりそうで

 

「…ううん…。行こうね。」

 

顔を上げ流輝さんと目を合わせた。そうしたら彼はフッと

 

「楽しみだな。」

 

優しく…笑ったんだ。

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

「…。」

 

フッ…と俺の腕を掴んでいた***の手から力が抜けた。

 

「…寝たか。」

 

小さな寝息をたて 夢に片足を突っ込んだろうコイツの寝顔を見つめながら

 

「…。」

 

残り少ない『花水木』の搬入日までの夜を 数える。

 

展示担当が事もあろうにお前かよ…断れなかったのか…。

 

そう寝顔に問いながら 胸苦しくなった。

 

展示品が盗まれたとなれば 担当者は否応でも責任を問われるだろう

 

搬入時に俺達は『花水木』を手にする コイツは名画を瞳に映す事も出来ない。

 

「…。」

 

あの空っぽの展示室でコイツは何を想うのか

 

俺は…俺は素知らぬふりをして今と同じように抱き締める事が出来るのか

 

「…***。」

 

…チュ…

 

ソッと頬に触れ 額に唇を落とす。

 

「…絶対行こうな。旅行。」

 

コイツの胸の内なんて 分かりもせずに。

 

 

 

 

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