サンタマリア:31 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

30超えたか…。私の予定とか予想とか適当だな。

 

before

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「だ、怠い…」

 

ハァ。

 

トン。

 

翌日 博物館の勤務に勤めながら 何度となく腰を叩き、回す。

 

まぁね…仕方ないよね 昨夜もだけど今朝も…ハァ 遅刻するって言うのに流輝さんお構いなし…

 

昨日とは打って変わっての晴天

 

中庭の芝生は陽に照らされ昨夜の雨粒をキラキラと踊らせる

 

「…やっちゃったよね…」

 

あぁとうとう私も大人の階段を上りきってしまった…

 

呟きながら昨夜の自分達を思い出してはいちいち頬を赤く染めていた。

 

…と言うか流輝さんは満足いく夜を過ごせただろうか

 

何度も何度もねだられたけど…それはイマイチ良くなかったとかそういう…

 

「ハァ~…」

 

もう恥ずかしいぃ…

 

今更 彼の下 淫 れた自分にジタバタしたってどうしようもない。

 

あぁもうしっかりしなきゃ!仕事仕事…

 

パチン

 

「あぁあぁあぁ~…」

 

仕事モードに切り替えようと頬を叩いた時だった。

 

「○○さん。」

 

「はいぃ?…あ。」

 

館長が手招きをする。その横には

 

「…達郎。」

 

刑事としての…幼なじみが立っていた。

 

・・・・

 

『花水木』の展示を一週間後に控えた今日 私はこの度の展示の担当責任者を任命された。

 

それはなんとも光栄な…胸躍る瞬間だったけれど 心はどこか曇りがかっていたのは否めなくて…。

 

「狙われるとしたら搬入時か搬出時だろうな。大抵そうだよ。こういうセキュリティの高い場所はその前後が狙われる。」

 

館長が私を達郎に紹介した後 達郎と二人まだ空っぽの展示室に向かう。

 

「ブラックフォックスの事だから この部屋の厳重さはもう調べているだろうし。搬入・搬出時はうちらも同行するし相当数の目を光らせるから安心しろよ。」

 

「…やっぱ来るよね、怪盗ブラックフォックス…」

 

呟き 『花水木』が飾られるだろう壁面を見上げれば

 

「あ~あ。…金儲けの為に、か…。」

 

「んな顔すんなって。大丈夫だから。」

 

私は随分と寂しげな顔をしたんだろう 達郎は私の横顔に笑い掛けながら

 

「ん…」

 

優しく 肩を抱いてくれた。

 

「…そういやぁさ。お前、男出来たんだってな。蘭子が言ってた。」

 

「えっ。」

 

親友蘭子にはノロケた恋物語。達郎が興味深げに顔を覗き込んだら

 

「…アハ。」

 

ここでもまた昨夜の情 事を思い出し…カッと頬は紅くなって。

 

「俺と結婚するんじゃなかったっけぇ?」

 

「もう!いつの話!」

 

子供の頃のおませな自分にまで恥ずかしくなった。

 

「マジらしいじゃんお前っ」

 

達郎はニヤニヤとしながら冷やかす準備万端。だから私は勘弁してと

 

「随分男前らしいって言ってたぞ?会わせろよっ」


「あーもう、まだ付き合って日が浅いの、そのうち…」

 

あ…。

 

この時 フッといつかの達郎の言葉を思い出す。そう あれは 博物館に見慣れない来客者がいないかと見回りに来てくれた時の事…

 

『最近、近づいてくる奴がいるとか。』

 

…最近…。最近なんだよね、流輝さんとの出会い…。

 

フッと心に風が吹いた時


「ま。上手くやれよ。応援してるから」


ポンッ

 

…あ…


肩を叩かれハッとする。それは昨夜の流輝さんへの違和感を思い出したからで…

 

背中…右肩…。

 

「…達郎、ブラックフォックスの誰かが…ケガしてるんだっけ?」

 

どうしてだろう 私は達郎に心の内を悟られないよう 敢えてなんでもない風を装い聞いた。

 

「え?ああそう。右肩な。なんでも金属パイプで殴りつけたらしい。でも重傷じゃないな。なんせケガを負わせた奴、その直後にボッコボコにやられてるから。」

 

フンと鼻で笑う達郎は背伸びをしながら室内を見渡し始める。

 

「金属パイプ…。」

 

あの浅黒くも見えたアザはどこかにぶつけたとかそういう不慮の何かではあり得ない位置

 

殴られた…誰かに?…随分と激しく…

 

あの頃 確か私達はなかなか会えなかった。そうだ、偶然柳瀬邸で出会って…

 

「あ…」

 

菊乃さん…救急箱…

 

玄関先でバッタリと出会った彼 記憶を辿ると背後の菊乃さんが救急箱を手に持っていたような

 

「…どうして…」

 

…そんな気がして…。

 

「た、達郎…」


壁を叩いたり扉を開けたり閉めたりしている達郎の名を呼ぶ

 

だけれど私の声は随分と震えていて…彼には届かなかったようで

 

だから私は少し大きな声で問いかけた。

 

「…ねぇ達郎、『桜』の時もケガしたんだっけ??」

 

あの時は…

 

「ケガって言うか警備の奴が顔を殴ったって。大したケガじゃ…あ、悪い…もしもし。」

 

「顔…」

 

職場からの電話だろうか。達郎は声を抑えながら部屋を出て行く。

 

私はその背をぼんやりと目に映しながら

 

『お兄ちゃんの口元見た?切れてたでしょ。』

 

「…え…」

 

伊吹ちゃんと流輝さんと…初めて食事をしたあの夜

 

あの夜は『桜』が盗まれた翌日

 

思い出していた。あの時の彼 微笑む口元に優しさを感じた その唇は

 

「…端が切れてた…」

 

しきりにナフキンで口元を拭う流輝さんの姿が瞼の裏浮かんで

 

「…まさか…」


私は…。

 

・・・・

 

流輝さんとブラックフォックスの偶然の一致は私の胸を一気に暗闇に染める

 

「…まさか…だよね…」

 

…トン…

 

『花水木』が展示されるだろうその壁に力なく縋らせる程。

 

 

 

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