サンタマリア:19 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

こうも毎日予定があるとなかなかな…。

 

before

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~♪

 

「だから財布を収めろよ。クック…またお前…あ、悪い。もしもし?…ああ。」

 

拓斗か。

 

俺の携帯が鳴ったのは ***と店を出たタイミングだった。

 

『早く帰れよな。』

 

「なんだよ。どうした?」

 

***は俺と少し距離を開け 夜空を見上げている。少し微笑んだのが分かって俺も見上げれば 今夜は随分と星がチラついて見えた。

 

『待ってるんだっつー。』

 

「なんだよ?」

 

携帯に答えながらも***を手招きし帰路に向かう。

 

それでも***は電話中の俺に気を使って 隣ではなく2・3歩後ろを歩いた。

 

僅かな距離だとしても さっきまで手を握っていた俺からしたら焦れったい…すぐに腕を掴んだが

 

『鈴蘭邸で明日パーティーだと。』

 

「…は?」

 

『潜り込むには丁度良い。明日の夜、作戦決行しようってヒゲが言ってる。』

 

「…。」

 

傍に引き寄せる前に…手を離して。

 

・・・・

 

『皆集まってるから。柳瀬、お前待ちだぞ。早く帰れっつの。』

 

「…ああ。」

 

最近…***と付き合い始めてから いや、部屋の美術本の付箋を見つけてからか

 

『桜』『鈴蘭』『花水木』…ブラックフォックスの計画にいまいち乗りきれない俺がいた。

 

それこそ使命バリに張り切っていたのに。リーダーにまでなって計画立てていたのに。

 

実行しないわけじゃない。したくないわけでもない。

 

なにかが俺を躊躇させる。それがなんなのか 分かるからこそ

 

「…分かった。」

 

自分に苛立ちもして。

 

カツッ…

 

立ち止まり 首を傾げる***を見つめ返しながら携帯を切った。

 

プツ…

 

「…。」

 

しっかりしろ…

 

「ふぅ…」

 

自分に喝を入れたとしても ため息をつく俺は相当ダサい。

 

・・・・

 

「どうしたの?」

 

「…悪い。職場に戻らなけりゃならない。」

 

「え、これから?」

 

携帯を握りしめたまま黙る俺に***は眉間に皺を寄せた。

 

「俺が居ないと回らねーんだよ。」

 

「忙しいんだね…あ、お酒抜けてる?お水売ってないかな…」

 

顔を覗き込んだのち 周囲を見渡し自動販売機を指させば

 

「待ってて。買ってくるから。流輝さんはタクシーをつかまえてて。」

 

「…っ」

 

背を向け駆け出そうとする***を

 

グイッ

 

「へ?」

 

「要らねーよ。」

 

「え?」

 

手を掴み引き留める。そして店の脇 路地裏に連れ込み

 

「なに…えっ…」

 

「このままバイバイはツレナいんじゃないか?」

 

驚いた顔をするコイツに有無を言わさずすぐに唇を奪い…。

 

・・・・

 

「…ハァッ…」

 

明日…計画通り俺達ブラックフォックスは『鈴蘭』を手に入れるだろう。

 

だけどコイツには見せてやることができない。手元にある『桜』さえも

 

…もうすぐ展示予定の『花水木』さえも。

 

コイツが愛してやまない画家の名画を俺は手に入れる。曾じいさん達の願いの為 顔も知らぬ曾孫の為にだ。

 

大正のダビンチの曾孫は俺達を待っているんだよな?美術品が好きであの名画が好きで大正のダビンチが託した指輪を大事に持っているんだよな?

 

もしそうで無かったら?***のほうがあの名画を愛して止まなかったら…

 

「…ハァっ…」

 

そう思ったら…。

 

ッチュ…

 

絡めた唇が音を立てて離れてもまだ物足らなかった。

 

「…この店美味いけど…」

 

狭い路地だから***の背を外壁に押しつけたほうがキスをするのは楽だと思う。

 

だけど俺は敢えてそれを避けた。…そのほうが

 

「お前の手料理とか食いたいかも。次はお前んち行くよ。…その時、」

 

体全部で抱きしめてコイツを感じることが出来る。つま先立ちをしなくちゃならないコイツからしたらしんどい体勢かもしれないが 胸と腕とで身体全部を包み込める。

 

「お前も食うからな?」

 

・・・・

 

簡単に痕の残りそうな肌 柔らかさに優しさを感じる曲線

 

「分かったな。」

 

首筋に顔を埋め大きく息を吸い、吐く。そうしたら

 

「…ん…。」

 

頷いたような…首を横に振ったような

 

「…ん?」

 

チュ…

 

首筋へのキスは押し当てたような 吸い付いた…ような。

 

乱れた呼吸に額を合わせれば鼻先までもぶつかる。目の前の瞳が瞼を閉じる事でまた

 

「…」

 

重ねる唇を求められた気がして。

 

「…お前なんでこんなに…」

 

俺はなんでこんなに?…声に出す前に

 

「ッ…」

 

コイツの唇がいつまでも甘くて むしゃぶりついた。

 

・・・・

 

ガララッ

 

「リキくん、遅っ!!」

 

「おいおい、本命とデートかぁ?マジで流輝惚れてんのかよ…」

 

「うるせ。ハイハイ、着席。」

 

「偉そうなんだっつー!」

 

皆 冷やかしも程々に すぐにテーブルに拡げられた屋敷の地図に目を戻す。

 

…そして俺も

 

「次のターゲットは『鈴蘭』だ。明日の20時」

 

ネクタイを解きながらその輪に入り

 

「ミッションスタートだ。」

 

パチン

 

指を鳴らした。

 

 

 

next

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