サンタマリア:18 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

 

なんだこのイチャカップル。

 

before

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「***さんっ!!」

 

「え?」

 

達郎と別れ 館内に戻ろうとした私をまた誰かが呼ぶ。

 

「あ、伊吹ちゃん!」

 

それは愛くるしい笑顔の少女 ある意味私と流輝さんを繋ぎ合わせた彼の妹だ。

 

「待って待って!」

 

駆け出そうとする彼女を止め 私こそ走り向かう。

 

伊吹ちゃんは足踏みをしながら待っていたけれど

 

「聞いたよぉ。お兄ちゃんと恋人になったんでしょ!」

 

傍に行けば満面の笑みでピョンピョンと跳ねた。

 

「あ…そう言ってた?流輝さん…」

 

こ、恋人…

 

頬が紅くなるのを自覚しながら彼女に歩行を合わせ館内に向かう

 

「ねぇ、今度うちにおいでよ!改めてお父さんにお兄ちゃんの恋人だよって紹介するよ!」

 

「ハハ…なんか照れる…」

 

腕を掴んで離さない 跳ねる度に彼女のロングヘアが揺れ優しいシャンプーの香りが言葉と共に私をくすぐる。

 

私の顔を覗き込んではフフフと微笑む彼女に こっちまでニヤケちゃって

 

「まさかわざわざ冷やかしに来たんじゃないよねぇ?」

 

なんてわざと厳しい顔して言ってみたりして。でも案の定迫力ゼロのようで

 

「も、なんだけど、***さんにお願いがあって来たの。」

 

「お願い?」

 

「うん、あのね…あ、ねぇ、それより…」

 

「ん?」

 

館内に入ったところで伊吹ちゃんは足を止めた。だから私は首を傾げながら彼女が振り返り見つめる中庭に視線を向ける。

 

「さっきの人…だれ?」

 

「え?さっきの人?」

 

「ほら。あそこのベンチに二人で座ってたでしょ…?」

 

聞きづらそうに瞳を揺らしながら…

 

「ああ、達郎か。」

 

「…だれ?」

 

伊吹ちゃんは私に声を掛ける前に来ていたよう

 

「幼なじみ。友だちっていうかな。」

 

達郎と話をしているあいだ待っていてくれたみたい。

 

「お仕事で来てね 久しぶりにおしゃべりしてたの。」

 

「幼なじみか…」

 

伊吹ちゃんは少し考えるような表情をしたけれど すぐにまたパッと笑顔を向ける そして

 

「なぁ~んだ。お兄ちゃん、もうフラれちゃったのかと思った。」

 

なんて…またクスクス笑って。

 

「何言ってんの。流輝さんは私には勿体ない人だよ?私がフラれるならまだしも私が振るとかないしっ」

 

「それノロケ?」

 

「もう伊吹ちゃん!」

 

達郎から怪盗ブラックフォックスが『花水木』を狙っているだろう話を聞いて 切なく寂しい気分になった。

 

だけれど 伊吹ちゃんの笑顔 そして流輝さんが彼女に私を恋人だと話をした…その事を知って

 

「ふつつかな兄ですがどうぞよろしくお願いします!」

 

「もう~!!」

 

凄く…凄く嬉しかった。

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

「クック…伊吹が冷やかすとか…。」

 

「うん。おませさん。」

 

***と食事を共にしたのは俺がコイツの家を訪ねた三日後の夜だった。

 

場所はコイツのお気に入りの店 鶏屋で。

 

久しぶり…と言っても三日ぶりだが カウンターに座る俺を見つけ頬を赤らめる。その様子を目にすれば俺まで頬が緩んだ。

 

そして隣に腰を下ろし…注文を始める横顔を見つめながらまた思う。

 

「…。」

 

…なんなんだろうな この感じ…。

 

俺自身、コイツへの自分の感情に戸惑っていた。

 

こんなにマメに女に接したことなんて無い。たったの三日 多忙でありながら会えない日々をあんなに長く感じるなんて。

 

会いたいなんて…思う事も口にした事もないのに

 

なんなんだろう 癒やし?決して俺を甘えさせているような言葉も行動もあるわけではないのに、


コイツとの時間が心地良い。

 

「相変わらずガッツくな、お前。」

 

「流輝さんこそ。ね、ホントにここ 美味しいでしょ?」

 

まだ出会って日は浅い。それなのにこんなにも俺の心を解すコイツの全て

 

「二日前…三日前かな、伊吹ちゃんが博物館に来てくれたよ。」

 

「らしいな。聞いた。」

 

まるでずっと心のどこかで求めていたかのような錯覚…俺達、どこかで会った事があるのか?

 

「***、手。」

 

手を繋ぐという行為に意味は無いとしても

 

「箸、持てない。」

 

「俺が食わせてやるよ。ハイ、あ~ん。…クック、***犬。」

 

「もうっ」

 

握り離せない俺は…。

 

・・・・

 

「伊吹が絵を?」

 

「うん。お給料は払うなんて言うんだよ。」

 

伊吹が***を訪ねた理由。それは***に絵の描き方を教えて欲しいと頼む為だった。

 

「時間が取れる時で良いから教えて欲しいって。良いよって言ったけど…もちろんお金は要らないよ、だけど私教える程上手くないんだけどな…」

 

「絵ねぇ…。まぁアイツ、読書か絵を描くかばっかりだったからな、ガキの頃。」

 

一度、イラスト付きの手紙を渡したことがあるらしい。そのイラストが素人が描いたものではないと伊吹は一目で感じ ***が美術大学卒だと知った。

 

「外出禁止の時期、よく窓越し鳥だとかそれこそ空だとか…キャンパスに描いてたな。」

 

「…ねぇやっぱり私断ろうか、上達したいならそれこそ絵画教室に…」

 

「お前が良いんだろ。キャンパスにそれらしい何かを描けば満足すると思う。それこそ俺の裸体とか…」

 

「もう、絶対ないから!」

 

「クックッお前が顔真っ赤にしてどーすんだよ??っていうか、彼氏の妹の世話とか、」

 

「え?」

 

「普通の奴ならやらねーよ。ありがとな。」

 

ギュッと…握ったままの手に力を込めれば ***はふと視線を手に移し恥ずかしそうに微笑む。そして

 

「伊吹ちゃんのこと、好きだから。私に出来る事があるならするよ。…あんまり出来る事ないけど。」

 

遠慮がちにそう言い 上目遣いで俺を見つめ…そんなコイツに俺は

 

「十分だ。…なぁ、好きなのは伊吹だけなのか?」

 

「え?」

 

「俺は?」

 

「流輝さん、酔ってる!!」

 

「酔ってねぇーよ。…クック、お前顔真っ赤だな…」

 

酔ってはいなかった。酔っては…いなくても

 

「可愛くて堪んねー。妹も可愛がってくれるし…お前、どんだけイイ女なんだよ!」

 

「絶対、酔ってる!!」

 

「酔ってねぇよ!」

 

酔ってるふり、しなくちゃ言えない台詞を吐くくらい…惚れて。

 

 

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