サンタマリア:16 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

before

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「フッ…よく寝てるな。」

 

耳を澄まさないと聞こえない程の小さな寝息

 

俺が早朝目を覚まし身体を起こしても***は目を開けることはなかった。

 

「…ふぅ…」

 

アイツら随分飲ませやがって…。

 

作戦会議途中の俺の本命話

 

『柳瀬に本命とかありえねぇーし!!』

 

拓斗達は大騒ぎをし 何を喋らせようとする気か随分と酒を飲ませる。

 

『絶世の美女…にはほど遠いな。だけど胸を掴んで離さねぇんだよあの女…』

 

『リキくんがノロケてるよ、ちょっとぉどんな子だよ?!』

 

『普通の奴だよ。着てる服も持ってる物も普通だ。家庭も…顔もすげぇ庶民的な スタイルも特に何が目立っているわけでも無い普通~の奴。』

 

『性格か?性格がカバーしてんの?!』

 

『性格…まだ知り合って10日も経っていない。』

 

『ハァ?!』

 

「クック…」

 

昨夜のアイツらのクルクル変わる表情を思い出せば笑ってしまう。

 

実際俺自身可笑しい話だった。飲んだくれ気分良くしまさか会いに来るなんて

 

自分の行動が理解出来ない 俺は本当に

 

「…。」

 

この女に惚れている…何に惹かれたんだ、こんなに何に…。

 

薄明かりの中 ジッと動かないコイツのお陰で きめ細やかな肌を直視する事が出来た。

 

透明感溢れる肌…化粧なんて必要ないな こんなに綺麗だと…。

 

ソッと指先で頬の柔らかさとなでらかさに触れる。そして親指で血色良い唇を撫でた。

 

「…。」

 

…なんなんだろうな キスしたくなる…。

 

溺れる程の口づけなんてコイツが初めて。

 

・・・・

 

まだぼんやりとしか明るくはなっていない外の様子に部屋を見渡し時計を探した。

 

「…5時か…」

 

とりあえず一度帰って着替えて…飯は…

 

「…作っといてやるか。」

 

ピクリとも動かない***の髪を撫で ソッとベッドから起き上がる。キッチンに向かおうとしたが

 

「…フン。」

 

本当に芸術バカだな…

 

目に付いた本棚の美術本の多さに思わず笑った。

 

それこそ油絵入門、水彩画入門、西洋美術史、日本画の歴史…

 

「『絵画の見方』…。…」

 

分厚い美術本にはそれぞれにいくつか付箋が付けられていて。

 

「…。」

 

カタッ…

 

興味本位…本棚の前であぐらをかき、ある一冊を手に取る。

 

バサッ…

 

そのページを開き…思わず小さなため息が出た。蛍光ペンで線を引かれた画家の名を目にすれば

 

「…フン…」

 

そんなに好きかよ…?

 

「大正のダビンチ…」

 

本名と生まれ年 没年と…名画の数々の名と。

 

・・・・

 

カタッ

 

また違う本を手に取る。そして付箋のページを開けば

 

「…。」

 

これもか…。

 

大正のダビンチの自画像

 

「…ふぅ…」

 

多分 この調子じゃここに並ぶ美術本の付箋の全てはダビンチの情報なんだろう

 

変に胸がざわつく。

 

気にすることは無いのかもしれない。なぜならコイツは警察でも探偵でもないのだから。

 

だけど…大正のダビンチの情報をコイツは知識として持っている。

 

下手に俺が何かを口走り 正体がバレれば

 

「…。」

 

コイツはどうする?

 

カタッ…。

 

それ以上本を取り出す事はせず 棚に戻した。その時美術本とは別の段に小さな輝きを見つける

 

いかにも女が好きそうなクリスタル散りばめられた手の平サイズの宝石箱。

 

「…?」

 

だがその横の卓上カレンダーに目は奪われそっちを手に取った。そして

 

「…プッ…」

 

思わず笑ってしまった。なぜなら

 

連日 俺の名前ばっか…。

 

大抵カレンダーには予定を書き入れるもの もちろんそれも書いているんだろう

 

だけど日付下の空欄にここ何日か続く俺の名は 突然会おうと連絡を取る俺からしたら いつ書かれたものだろうと思う。

 

スケジュール兼日記

 

流輝さん、流輝さん、流輝さん…昨日は会う予定にしていなかったから空欄になっていた。

 

「ペン…」

 

傍にあったボールペンを手に取り 黒ではなく赤で

 

「『流輝さんお泊まり』…クック…」

 

昨日の空欄にそう書いた俺は…一人笑ったりして。

 

『19:30歓迎会 黒狐』

 

「アイツ来たことあるのか…」

 

『13:00美容院』

 

「クック…切りすぎたんだよな…」


カレンダーにはそういう予定も。知り合っていない時期だとしても***の様子や表情が浮かんで目尻が下がる。

 

だが

 

「…?」

 

これは…

 

『○○』

 

『△△』

 

『桜』

 

タイトルのような名の書かれた日に眉を潜めた。なぜならその名と日付に覚えがある。それは俺の予定…俺というよりブラックフォックスが


「…。」

 

その名の絵画を奪った日。


***は絵画の名でそれをカレンダーに追記していた。新聞やニュースで大々的に報じられているから知って当然


「…ふぅ…」

 

だとしても…カレンダーに書くほど?気になるのか?

 

俺とは知らずに俺の動きをカレンダーに残している 気にしている


コイツにとってブラックフォックスとはどういう存在なのか…それを思えば


なんとも言えない感情が胸を覆い目を反らした。


だが

 

20:00ティアラ搬出 伊吹ちゃん&お兄さんと食事』

 

「っ…」

 

それを目にし 息をコロして。


・・・・


パサ…パサ…


過去を…巡った。

 

『閉館日13:00〇〇搬入』


『〇〇展示初日』


『20:00〇〇搬入』

 

これは…博物館の…


「…。」


パサ…


来月のカレンダーを捲れば


20:00花水木搬入』

 

「…。」

 

…コイツのカレンダーからそれを知ってしまった瞬間

 

カタ…


罪悪感に襲われ…カレンダーを静かに棚に戻した。



 

next

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