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「***だろ。」
「***…」
ダテに一つ多く歳は取っていないって
「そうだ…***…***だよ、そうだ、***だ!!」
「おっとぉ!!どうしたハル、珍しいじゃねーかお前がオレに抱きつくなんて!!」
八田青果店の店先で、ギュウ~っと力強い腕と広い胸板に締め付けられるオレを他所に
「***…。」
ケーキを頬張っている彼女の写真に目を落としながら一護は微笑み呟くように名を呼んだ。
「一歩前進。」
前進なのかどうなのか分からないが 素っ気なくそう言う剛史だってどこか嬉しそうな顔をしている。
オレだって嬉しい。覚えているだろうとは思っていたものの 10年経っているんだ、忘れていても責められはしないというか。
「あ~、良かった。リュウ兄覚えてて良かったぁ~。」
更にその先に期待してしまうというか。
「なんだお前ら?急に***を懐かしがったりしてさ。」
自分から抱きついたものの息苦しさを覚え オレは胸板を押し返しながら
「捜そうと思ってね。」
その問いに答えた。
「捜す?」
「ああ。コイツがどんな風になってんのか興味がある。」
唇を舐めながら答える一護はすぐにまたその写真をリュウ兄に見せ
「コイツから何か聞いてねーかな。引っ越し先とか…連絡先、とか。」
「あ~…。」
リュウ兄は胸の前で腕を組み 眉間にシワを寄せた。そして
「オレは知らねーな…ちょ待ってくれ。聞いてみるから。」
一度店の奥に入り おじさんに聞いてみてくれて…だけど待ちながらもなんとなく諦めムード漂っていた。
「ガキだったからさ 俺たち…。」
「うん…。」
寂しいばかりで引っ越し先を聞くなんて余裕は…。
剛史の呟きどおり 案の定 リュウ兄は首を横に振りながら現れた。
「だよな…。」
剛史が頷きながら横目でチラッと一護に視線を向けたら
「そか…。」
一護は再び写真に視線を落とし 小さくため息にも似た息を吐いた。
「…?」
随分ヘコんでるよな。
オレはその時の一護が らしくなく落ち込んでいるように見える。
「まぁ…そうだよな。俺らが知らねーんだもんな。」
自分に言い聞かせるように言ってはみるものの 人捜しと言う名の遊びにしては随分と寂しそうな表情で。
「…。」
オレと剛史は 一護は彼女に対して10年ぶりの幼なじみへの興味だけではない、何か思う事があるんじゃないかと感じた。
「まだオレらもガキだったから、聞くっていう考えが浮かばねーよな。そこまで気が回らねーっつうか。離れるのが寂しいばっかだからさ。」
「だよね。ありがとリュウ兄。店の手伝い邪魔してごめんね。」
オレと剛史は笑顔で手を振り その場を立ち去ろうとする。
けれど一護は…トボトボと歩くコイツはやっぱり何か…。
「理人には聞いたのか?」
リュウ兄も一護の様子を見兼ねてか 背にそう声を掛けてきた。
「アイツは流石に覚えてねーだろ。」
「りっちゃんはオレ達よりまだ小さかったんだからさ。」
オレ達はそう答え 再度手を振ったわけだけど
「手紙書くっつってたぞ。」
「え。」
その発言に…オレ達三人揃って振り返ったわけで。
「アイツ、***の事大好きでさ。確か自分の名前が書けるようになったら***に手紙書くって言ってた気がすっけどな。」
リュウ兄の記憶力に万歳…そして
「書いたかどうかは知らねーけど…っておい~~~!!」
「リュウ兄ありがと!!」
一つ年下の理人の 厚かましさに万歳。
八田青果店の次は初音音楽教室。商店街を全力疾走キメるオレ達は
ガラッ!!
「理人ぉ!!いるかぁ?!」
「なになに。うるさいな、いっちゃん。なんだよ、ハルくんもタケ兄も揃いに揃って。」
ふんわりとした柔らかい髪を掻き上げながら教室から顔を出した美少年の頬を引きつらせた。
バッ!!
「コイツ!お前覚えてるか?!」
「はぁ??」
一護が目の前に付きだした写真にめんどくさそうな顔をする。けれどすぐに大きな瞳をパチパチとさせ
「懐かしい〜。」
写真を受け取り一人頷いた。
「***ちゃんじゃん。随分懐かしい写真持ってきたね。」
「…お前、すげーな。」
「どうしたの?」
「りっちゃん、***の引っ越し先とか知ってたりする?」
まさか まさかと
半信半疑聞いたオレはゴクリと息を飲む。期待を込めた眼差しで見つめるオレ達に理人はきょとんとしたまま
「知ってるよ。手紙出したもん。」
「マジで?!」
あっけらかんと答えた。
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