2020年年中国と開戦した日本は中国軍航空母艦による首都東京空襲により壊滅する。核兵器が使用され、東京は廃墟と化した。この戦いで、同盟国アメリカは参戦しなかった。日本は見捨てられたのだ。遥達防衛省技術開発本部の面々は核爆弾の直撃時に昭和元年にタイムスリップした。皆、中国、アメリカへの復讐に燃えていた。皆、家族を東京空襲で亡くしたのだ無理も無い話だった。
防衛省技術開発本部がタイムスリップしたのは帝国海軍海軍施設内だった。遥達と帝国海軍軍人が接触すると、たちまち海軍上層部は大騒ぎになった。開発本部長「鳴海 晃」と海軍の連合艦隊司令長官、軍令部長とが会談を持ち、技術開発本部と海軍が協力する事となった。
技術開発本部は海軍内でJSDFと呼ばれる事となった。又、遥と隼人は海軍に配属された。
タイムスリップから16年、日本の産業界は急成長した。大規模な景気刺激策により好景気に湧き、旧史の製糸業に加えて化学繊維業界、重工業業界、造船業界、電気業界が急伸した。日本のGDPは旧史の3倍以上だ。世界では世界恐慌のまっただ中だったが、唯一日本だけがこの中から抜け出していた。それが米国やヨーロッパ等の国々を刺激する事になったのは皮肉だ。
日本は満州を軸に中国に経済帯を作り上げており、経済規模は大幅に増えた。
米欧の日本への危惧はあったが、彼らは日本と開戦迄は考えていなかった。日本が新興国とは思えぬ民主的な国家であり。信頼もあった為だ。しかし、鳴海晃が首相になると一転する、突然民主国家に独裁者が現れた。日本人が突然異端児となり、そしてついにアメリカへの開戦を選ぶ。
日本の参戦により、最も困惑したのが英国だった。欧州は冬将軍を味方にしたソビエト連邦と島国の英国が残されるのみで全てドイツ占領下だった。しかも旧史と異なり、空母8隻を擁するドイツ海軍に英海軍は壊滅させられており、ロンドン陥落は時間の問題だった。チャーチルはアメリカへ援軍を要請しており、ルーズベルトはこれを承諾していた。ドイツ軍の暴虐にアメリカ人も同情的だった。その為、旧史と異なり、比較的簡単に参戦できそうだった。英軍にとってもアメリカ軍にとっても日本軍との戦いは想定外だった。チャーチルは真珠湾攻撃の報知ってカナダへの亡命を決意する。
一方アメリカも困惑していた。しかし、真珠湾の機能を失い、事実上日本軍の侵攻を只黙って待つより無かった。残された貴重な空母2隻も真珠湾の補給機能が回復するまで積極的に使用出来なかった。真珠湾攻撃と同時に英領マレーとアメリカ軍基地ウェーク島が攻撃された。マレーには第2航空艦隊空母扶桑、山城、伊勢、日向、ウェーク島には第2航空戦隊飛龍、蒼龍が参加していた。
あっという間にアジアの諸国は日本軍に占拠され、日本海軍はインド洋まで足を伸ばした。
旧史の日本軍は第一弾作戦であるアジア解放の後の作戦を事前に考えていなかった。その為、第一弾の作戦が完成した後の戦略目的が未定となっていた。戦争において戦略無き戦いに勝利は無いという言葉がある。旧史における最大の敗戦、ミッドウェー海戦は戦略の無い状態での戦いだった。やはり、戦略無き戦いに勝利は無いのだ。
新史では既に第二弾の戦略目標が考えられていた。真珠湾攻略だ。アジア諸国に散らばる戦力は既に無力化されている。日本軍はポートモレスビー攻略後、米豪遮断作戦(主に潜水艦による通商破壊)を行い、その後実施する予定だった。
一方、アメリカ軍も真珠湾侵攻の可能性を信ぴょう性のある事項として検討された。だが、日本軍の真珠湾侵攻は少なくとも、1942年末(昭和17年)以降と計算された。5月現在、日本軍は未だポートモレスビー攻略を実施中だった。珊瑚海海戦の敗北により、ポートモレスビー失陥は免れないと考えられていた。当然、オーストラリアの脱落は時間の問題となった。アメリカ軍の太平洋艦隊司令ハルゼーは1943年以降、新型空母エセックス級を数隻参加させた上で日本軍の真珠湾侵攻を防衛を主とする戦略を立てた。しばらくは本格的な作戦を控え、真珠湾防衛に注力する考えだった。
しかし、ここに来て、政治的な理由により、理不尽で、戦略上意味の無い戦いを強いられる。アメリカ大統領からの要請だった。アメリカ大統領ルーズベルトは大西洋にておいても太平洋においても有力な戦果を得られず、大統領日の支持率が大幅に落ちている事を懸念した。このままでは、厭戦気分が台頭し、欧州、アジア共停戦せざるを得なかった。ルーズベルトが太平洋方面にて戦果を挙げようと考えたのは、単純にドイツ人より日本人の方が与し易いだろうとの安易な発想だった。
「ホワイトハウスは現場を知らない。」
ハルゼー麾下の参謀陣は、ホワイトハウスからの要請に苦虫を食んだかの様な顔になった。当然だった。日本軍は空母運用に長けており、多数の空母を保有している。何より、今回の戦争において空母は既に戦略兵器となっていた。戦艦の時代は終わったのだ。それなのに大統領は太平洋と大西洋の空母全てを投入しても勝てる見込みの無い、太平洋での戦いをしろというのだ。
「皆、前向きに考えろ。我々は軍人だ。命じられれば実践あるのみだ。政治の都合を忘れろ。とにかく日本軍を叩くことを考えろ。」
「イエッサー。失礼しました。軍人として誤っておりました。直ちに勝てる戦術を起案致します。」
アメリカ軍太平洋司令部は日本軍に対して本格的な反攻作戦を立案する。それは空母主導だが、必然的に投機的な作戦とならざるを得なかった。戦力差は歴然としていた。アメリカ軍の情報収集によると日本軍はあの戦艦扶桑級、伊勢級までも空母に改装しており、実に正規空母12隻を保有しているという結果になっている。正攻法で勝てるはずが無かった。この戦いが投機的な詭計を企てるものとなるのは当然だった。
作戦内容はミッドウェー島において戦艦を囮に日本軍空母を誘き出し、味方空母群にて日本軍空母を撃破するものだ。撃破する空母は1隻か2隻でも良かった。とにかく、何か戦果が欲しいのだ。幸い大統領は空母2隻を大西洋から回してくれる。
『太平洋での戦いは間違っていないのかも知れない。』
ハルゼーは参謀達が退室してから呟いた。参謀達は知らなかった事だが、既に英国王室、政府共ロンドンを脱出し、カナダへ向かっていた。ドイツ軍は波状に通商破壊戦に徹し、艦隊決戦は生じなかった。しかし、物資が困窮している英国は事実上戦闘継続が困難な状態だった。戦闘機を製造する処か戦闘機の燃料にも事欠いていた。英国は最後の艦隊運用と同時に政府要人と王室関係者を引き連れ英国を脱出していた。英国出奔作戦は多くの犠牲を出すも成功し、今、チャーチル達は大西洋洋上だ。
貴重な空母が2隻も太平洋に回されたのは必要が無くなった為だ。
作戦は6月上旬と定められた。
日本軍は何らかな作戦がミッドウエー島周辺にて行われる事を無線傍受にて特定していた。
しかし、作戦内容は全く見当がつかず、困惑した。だが、もっと困惑したのがJSDFと連合艦隊司令部だった。
「ミッドウエー作戦は中止したのだが。。。」
山本五十六長官は困惑していた。未来からの軍人から自ら立案したミッドウエー作戦に大敗した事を知っていた山本は歴史というものに対してある考えを抱いていた。
「もしかしたら、歴史を引き戻す力が働いているのかもな。。。」
これに対してはJSDFも同感だった。現状で日本軍がミッドウエー島を攻略する必要性は無かった。ポートモレスビー陥落は時間の問題だった。真珠湾攻略にはポートモレスビーを足がかりにするつもりだった。ミッドウエー島ではそもそも島が小さすぎて真珠湾攻略の足がかりにはなりえない。
連合艦隊は現状で稼働できる空母赤城、天城、飛龍、蒼龍、扶桑、山城、伊勢、日向の8隻を投入する予定だった。第6航空戦隊の紅鶴、蒼鶴の2隻は東京湾沖に展開していた。
アメリカ軍の陽動部隊は戦艦部隊2隊(戦艦8隻)を編成、そして主隊は任務部隊2隊(航空母艦4隻)を編成した。
指揮官は陽動部隊にリー中将、任務部隊はスプールアンス少将とフレッチャー少将を任命した。
昭和17年5月28日戦艦部隊2隊は真珠湾を出撃した。目標は東京湾だ。ミッドウェーを経由して東京を目指す予定だ。ミッドウェーを通過するのは敢えて発見される為だ。ミッドウェー周辺には日本軍潜水艦の活動が報告されており、基地機能の強化、特に航空機の配備を進めていた。日本軍により発見される事と先の海戦の反省より索敵の重要性を考え見て、ミッドウェーの索敵圏内に日本軍機動部隊を誘き寄せる計画だ。
昭和17年5月29日、潜水艦による情報により、少なくとも戦艦8隻を含む大部隊が真珠湾を出撃した事を連合艦隊司令部は知る。アメリカ戦艦部隊撃破の為、第一航空艦隊、第二航空艦隊を広島湾柱島より直ちに出撃させた。
旧史と同様第一航空艦隊には楽観的な空気が蔓延していた。敵空母は残り2隻だ。数に勝る日本軍が負けると考える者は誰もいなかった。
しかし、第二航空艦隊は違っていた。司令官の本田中将は平成出身だ。旧史を知っている。ミッドウェーがどういった場所か十分理解していた。
一方第六航空戦隊遥麾下の空母紅鶴、蒼鶴は東京湾沖で哨戒任務についていた。遥達の任務は万が一撃ち漏らした戦艦を撃破する事だった。
又、第一航空艦隊、第二航空艦隊出撃に先立ち、2個潜水戦隊をミッドウェー周辺に展開した。
6月3日ミッドウェー周辺に戦艦部隊発見の報を潜水艦よりもたらされる。
6月5日、第一航空艦隊、第二航空艦隊共ミッドウェー周辺に到達する。特に装甲空母を擁する第二航空艦隊はミッッドウェーに100kmまでに接近していた。ミッドウェーの周辺のより正確な索敵を行う為だ。
早朝4時15分第二航空艦隊より索敵機24機が発艦した。同時刻、第一航空艦隊よりも索敵機20機が発艦していた。第二航空艦隊はミッドウェー周辺を密に行い、第一航空艦隊はミッドウェー周辺を広く索敵した。
一方アメリカ軍はミッドウェー島より32機ものPBYカタリナ飛行艇が索敵の為、離陸していた。
そして、アメリカ軍機動部隊はミッドウエー沖150kmに潜伏していた。彼らに幸いしたのは、潜水艦隊に発見されていなかった事だろう。日本軍は空母がいるとは知らずにミッドウェー周辺を彷徨っていた。
同日4時30分、本田中将麾下の第二航空艦隊より、ミッドウェー島空襲の為の攻撃隊108機を発艦させる。索敵基地となる、ミッドウェー島を無力化する事が狙いだ。
同時刻、アメリカ任務部隊からもSBDドーントレス索敵爆撃隊が発艦した。
日本軍、アメリカ軍共に刀を鞘から解き放った。
先に目標を発見したのはアメリカ軍だった。しかも発見されたのは対艦攻撃任務の小沢中将の第一航空艦隊だった。本田の第二航空艦隊は巧みに雲の下に隠れ続けていた為、発見を免れていた。本田はミッドウェーに空母がいることを前提に行動していた。一方、小沢は空母の可能性を捨ててはいなかったが、本田程秘匿性を考えていなかった。本田の方がミッドウェーに近く、先に発見されるのは本田の第二航空艦隊。普通に考えればそうだった。しかし、本田の航空艦隊は運良くアメリカ軍索敵きより逃れ、小沢の第一航空艦隊は発見された。
「小沢艦隊より入電」
「入電?どういう事だ?」
「小沢艦隊よりの打電内容を聞いて頂ければ。」
「教えてくれ」
『我、敵索敵に発見される。索敵機は空母母艦機。注意されたし。』
「やはり空母はいたか!」
「本田中将、予見されていたのですか?」
「いや、そういう訳ではでは無いよ。ただ、諸島に接近する場合、いると思って接近しないと危ない。こちらが発見されるのも時間の問題だ。」
「では対艦装備を整えますか?」
「嫌、兵装はそのままだ。」
「何故です?陸用爆弾では空母は沈められませんよ?」
「撃沈できなくとも、敵空母飛行甲板に1発でも命中したらどうなると思う?逆に、兵装転換している間に敵空母の位置が判明したらどうする?」
「それは!確かに。」
「そうだ。先ずは、敵航空母艦の無力化を考えよう。敵艦隊は小沢艦隊が仕留めてくれる。」
「中将、流石です。教本には載っていない。それなのに簡単に回答を出すなんて。」
「嫌、先日の東京空襲の時の反省会を妻としたんだ。これは戦訓だよ。」
「なる程、遥中将と相談されたんですね。」
「ああ、だが、それより小沢艦隊は大丈夫だろうか?彼らの空母は装甲されていない。」
「小沢中将を信じるしかないかと。」
「そうだな、小沢中将なら。信じるしかないか。それに敵空母はせいぜい2隻だ。」
「2隻?1隻の間違いでわ?山口多聞中将が珊瑚海で2隻撃沈していますが?」
「空母2隻の兵力で空母2隻が沈むと思うかい?」
「うっ。確かに。では、敵空母は2隻!」
「そうだ。将は最悪の事態を想定して行動すべきだ。」
「あのう、それでは、最悪4隻の空母がいる可能性がございます。」
「ううっ。」
本田は呻いた。
「気が付かなかった。もし、アメリカ軍が本気で空母を投入するなら!持てる全ての空母を投入していると見るべきだ。」
「加藤ありがとう。俺は重要な事を見落としていた。この戦い、厳しい。東京の第六航空戦隊に打電だ。」
「奥様ですね。」
「ああ」
本田はニヤリとすると
「怖いが、あれでも根は優しいだ。それに、今、上に話していても決定が出る頃には第一艦隊も第二艦隊も沈んでいるよ。」
同日6時30分東京湾沖の第六航空戦隊
「第二航空艦隊より打電あり」
「何ですって?嘘でしょ?第二艦隊はミッドウェーのど真ん中でしょ?ありえない。」
「しかし、暗号電文は確かに第二艦隊からのものです。それより早く内容をご覧ください。」
「それはそうね。真偽はともかく、内容は読まないと。」
遥は言葉に詰まった。そして、静かに覚悟をする。
「第一、第二航空艦隊を助けに行くわよ!」
「はあ?何をおっしゃっているのですか?あちらには空母が8杯もいるのですよ!」
「アメリカ軍にもし空母が5隻いるとしたらどうする?」
「そんな馬鹿な、アメリカに残された空母はあと1隻ですよ。何処にそんなに空母がいるのですか?」
「西海岸の空母はパナマを通れば簡単に太平洋にこれるわ。たった1隻で本当に我が日本軍に仕掛けると思う?第一航空艦隊をは母艦偵察機に発見されたそうよ。戦艦は囮よ。敵の狙いは我が空母軍よ!彼らはありったけの空母をミッドウェーに集めたのよ。」
「確かに、可能性はあります。。。」
「責任は私が取るわ。何より、私の夫があそこにはいるのよ!解って!」
「解りました。でわ。」
「そう。全艦両舷全速、最大戦速でミッドウェーに向かうわ!機関壊れても構わない!」
「承知しました。直ちに転舵、全速前進、目標ミッドウェー」
その頃、小沢中将の第一艦隊は危機に瀕していた。
小沢は思案していた。
「見つかったか。遠い方が先に見つかるとは私も運が悪い。」
「直ちに攻撃部隊の発艦開始。」
「え!まだ敵空母は発見できていませんが。。」
「だが、飛行甲板を見ろ。爆弾や魚雷を抱えた攻撃隊がいるぞ。あそこに万が一被弾したら。」
「確かに、そうだ、それに攻撃隊を発艦させないと迎撃部隊が発艦できない。」
「その通りだ。先の珊瑚海海戦でも山口多聞小将が攻撃部隊の扱いに困ったそうだ。幸い、我々はミッドウェーの事は忘れいいから、それがせめての救いだ。珊瑚海の戦訓は生かされた。」
小沢艦隊よりミッドウェーに向かって進軍する。途中、敵空母が発見されれば、目標に進路を変更する予定だ。そして、直ちに直掩機の発艦が始まった。
直掩機が総て発艦した頃、ピケット艦の初月より入電。
『敵機多数レーダーに捕捉。目標は第一航空艦隊』
小沢の判断は正しかった、もし、直ちに攻撃隊が発艦していたら、空母赤城、天城、飛龍、蒼龍は全艦撃沈されていただろう。だが、小沢艦隊は無傷では済まなかった。何故なら、敵攻撃隊は実に200機にも達した。小沢艦隊の直掩機はわずか36機だった。
結果、空母赤城、天城、蒼龍に爆弾が被弾、3隻は離発艦不能となる。幸い、魚雷の致命傷はなく、行動は可能だった。
「3隻の空母が一瞬で戦闘能力を喪失か、つくづく空母は脆い。」
「どうされます?提督?」
「旗艦を飛龍に移す、赤城以下3隻は駆逐艦を何隻か連れて戦場を離脱しろ。」
小沢は帰還した攻撃隊を収容するつもりだった。山口多聞や本田夫妻とも良く話していたが、第一航空艦隊の技量は世界一だ。その搭乗員を簡単に失う訳にはいかなかった。
「後は、本田、頼むぞ。」
その頃、本田中将の第二航空艦隊では第二次攻撃隊を発艦させていた。ミッドウェーへ向けてだ。目標はアメリカ空母群では無い。ミッドウエーの飛行場だ。第一次攻撃隊は効果不十分だった。旧史と同様、ハワイの時とは違い、強襲となった攻撃は激しい反撃に会い、十分な効果が出なかった。それに第二次攻撃隊はすでに陸用攻撃仕様となっていたし、敵空母の位置は未だ不明だった。
「良いのですか?このまま攻撃隊を進撃させて?陸攻撃用でも、空母の飛行甲板に命中すれば。」
「わかっている。だが、このまま艦載機を甲板上に待たせておいてもな。俺はビビりなんだ。それに、遥が駆けつける。」
結果的に本田の判断は正しかった。基地航空隊にはカタリナ飛行艇がと攻撃機が多数配備されていた。少なくとも、位置がはっきりしている敵を先に無力化した事は後に評価された。
第二次攻撃隊を収容する頃、ミッドウェー攻撃の成功の報告と敵艦隊発見の報告が同時に入った。
本田と第一航空艦隊の攻撃隊は直ちにその敵艦隊を攻撃した。しかし、それはアメリカ航空母艦群では無かった。リー中将の旗艦ワシントン以下、戦艦4隻だった。4隻の戦艦と水雷戦隊だった。
「チッ!囮の方か!」
攻撃の報告を聞いた本田は思わず険しい顔となる。アメリカ軍空母は1隻も撃沈できていない。
しかも、第一航空艦隊は3隻が戦線離脱だ。第一航空艦隊の攻撃隊を収容した飛龍は程なく戦線を離脱する。
「撤退か?」
「中将、奥様より入電。」
「加藤、一応、第六航空戦隊と言ってくれ。ちょっと恥ずかしいだろ、私用電話じゃないんだ。」
「すみません。流石に、いっぱいいっぱいで。」
「それで、内容は?」
『我、31ノットにてミッドウェーに進撃中』
「31ノットだと?」
遥の紅鶴、蒼鶴の最大戦速は30ノットだ。
「遥らしい。」
「どうゆう事ですか?」
「嫌、妻のジョークだよ。」
「こんな時に豪胆ですね。流石、本田中将の奥様だ。」
「いや、流石なのは遥の方だよ。俺は随分遥から学んだ。」
「では、どうします?」
「遥が来るのは明日の朝だ。作戦は明日、仕切り直しだ。一旦戦場を離脱する。」
本田の第二航空艦隊は一旦離脱する。
その頃、アメリカ軍のスプールアンス少将とフレッチャー少将は不十分な戦果に落胆する。
万を辞して放った、200機もの攻撃隊の戦果は命中弾多数但し、撃沈無しだった。
二人は戦場を離脱するかどうか話しあった。もし、日本軍空母に撃沈艦があれば歴史は変わったかもしれない。彼らの目的は日本軍空母を撃沈する事だった。しかし、それを果たしていない。
離脱したくても離脱出来なかった。リー中将のワシントン他、戦艦4隻と水雷戦隊が犠牲になっている。ここで退くわけにはいかなかった。
昭和17年6月6日日本軍空母6隻とアメリカ軍空母3隻の間に戦闘が起こり、アメリカ軍空母ヨークタウン、レンジャーが撃沈される。日本軍の損害は軽微で、ほぼ完勝となった。
空母ワスプは夜間に日本軍潜水艦に発見され、撃沈された。アメリカ軍は結局、1隻の空母も撃沈できず撤退する。
「敵の基地を気にしない場合、簡単だな。」
「そうね。あなたの言う事も偶には正しかったわね。」
「偶にはとは酷いな。」
「2回も攻撃したんだ。それに俺の部下は優秀だ。あいつらが成功したと言ったんだ。」
「まあ、現場の人が判断したなら確かね。」
「なんか俺の判断だとダメに聞こえるのだが。。。」
「まあ、想像の通りよ。」
「酷いよ遥」
2人は空母扶桑司令官室で歓談していた。空母2隻を屠った後、直ちにミッドウェーを後にした。
「ところで、ミッドウェーを完全に沈黙させてのはどうやったの?旧史でもアメリカ軍は簡単に滑走路を復旧していたわ。それなのに何故?」
「ブルドーザーさ。アメリカ軍の飛行場復旧の早さは重機を持っていたからだ。重機も徹底的に破壊させたんだ。」
「なる程、だからミッドウェーは沈黙したのね。」
「どうだ。俺だって、やる時はやるんだ。」
「確かに、これは艦隊全体に通達しないとね。でも、私達大丈夫かしら?」
「わからん。俺に第六戦隊の指揮権は無い、勝手に空母を2杯も動かしたんだ。何らかなお咎めはあるかもな。」
「私も同じよ。」
「すまない遥。」
「いいのよ。あなたに死んでほしく無いの。それに、世界中の人が信じなくても、私はあなたを信じるわ。」
「ありがとう。遥」
二人の戦果は絶大だった。事実上、この戦いで雌雄を決した。だが、軍人は個人の一存で動かしていいものでは無い。二人の処遇がどうなるのかはまだ、わからなかった。
「取り敢えず。生き残った。」
「ええ、それが一番大事よ。」