進撃の連合艦隊【昭和16年 真珠湾攻撃】 | まもちゃんのブログ

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2020年中国と開戦した日本は中国軍航空母艦による首都東京空襲により壊滅する。核兵器が使用され、東京は廃墟と化した。この戦いで、同盟国アメリカは参戦しなかった。日本は見捨てられたのだ。遥達防衛省技術開発本部の面々は核爆弾の直撃時に昭和元年にタイムスリップした。皆、中国、アメリカへの復讐に燃えていた。皆、家族を東京空襲で亡くしたのだ無理も無い話だった。

防衛省技術開発本部がタイムスリップしたのは帝国海軍海軍施設内だった。遥達と帝国海軍軍人が接触すると、たちまち海軍上層部は大騒ぎになった。開発本部長「鳴海 晃」と海軍の連合艦隊司令長官、軍令部長とが会談を持ち、技術開発本部と海軍が協力する事となった。

技術開発本部は海軍内でJSDFと呼ばれる事となった。又、遥と隼人は海軍に配属された。

タイムスリップから15年、日本の産業界は急成長した。大規模な景気刺激策により好景気に湧き、旧史の製糸業に加えて化学繊維業界、重工業業界、造船業界、電気業界が急伸した。日本のGDPは旧史の3倍以上だ。世界では世界恐慌のまっただ中だったが、唯一日本だけがこの中から抜け出していた。それが米国やヨーロッパ等の国々を刺激する事になったのが皮肉だ。
日本は満州を軸に中国に経済帯を作り上げており、経済規模は今後も増える傾向だ。

この事態はアジア諸国を植民地とするヨーロッパにとっての懸念だった。又、アメリカ政府も危機感を強めていた。先のノモンハン事件はアメリカ及びソ連による謀略だったが、更に日本への両国の危機感を強めた。

米国民の反発は少なかった。日本はドイツと同盟を結ばなかった為だ。しかし、ノモンハン事件の失敗により、米政府の日本への危機感は極めて強い。

そんな中、昭和16年日本より、対英、米に対して鳴海ノートが突きつけられる。それはヨーロッパに対してアジア諸国の植民地を解放せよというものだった。当初アメリカ政府、アメリカ軍も政治活動であり、本気であるとは考えなかった。その為、アメリカは経済制裁処置を発動。その1ヶ月後日本軍は軍事作戦を展開する。旧史においては開戦、国家滅亡かの選択だったが、新史では自らアメリカに対して挑発状を叩きつけた。何故なら、鳴海達JSDFの人々は2020年の対中国戦において参戦しなかったアメリカに対して復讐をするつもりだ。一部のJSDFの人間以外は皆そうだった。

皮肉な事にこの鳴海ノートに対して国内メディアは紛糾した。この時代の日本人は決して好戦的ではなかったし、民主化されており、穏健派が多数を占めた。

JSDFの所長鳴海はこの時、日本国首相となっていた。民衆の代表であり、そして全軍の指揮官でもある。不幸な事に民主国家の日本は突然独裁者を作り出してしまった。鳴海の妻と子が東京空襲で亡くなっていなければこの様な事はなかった事だろう。

アメリカが最強国となったのは第二次大戦後からだ。全てはこの戦いからだった。鳴海はこの戦いにより、世界の覇権を取るつもりだった。既にヨーロッパではドイツ軍がヨーロッパのほとんどを掌握していた。制海権も取り、英国が陥落するするのは時間の問題だった。

アメリカは経済制裁処置を駆け引きに政治的な交渉を行おうと考えていた。しかし、アメリカはまさか民主国家である日本が突然戦線布告するとまでは考えていなかった。

開戦に先立ち、北海道、択捉の単冠湾に6隻の空母が集結していた。空母は「赤城、天城、翔鶴、瑞鶴、紅鶴、蒼鶴」の6隻。蒼龍、飛龍は別の作戦に投入されていた。扶桑、山城、伊勢、日向はマレー方面に投入済みだ。

6隻の空母が目指すのは真珠湾。旧史同様の奇襲攻撃を敢行する予定だ。だが、この奇襲攻撃の第一攻撃目標はアメリカ戦艦群では無い、真珠湾の湾港施設、ドックや重油タンクだ。日本が掲げるアジア解放にはアメリカ太平洋艦隊の足止めが必要だった。この作戦は旧史と同様だ。

連合艦隊 第一航空艦隊はひたすら真珠湾へ進んでいた。霧の中、前方の艦の点滅する灯だけが目標だ。隠密行動の為、無線封止の中での行動だった。

日本鳴海内閣はアメリカへ高圧的な交渉を展開、アメリカが首を縦に降るはずはなかった。一方、鳴海もアメリカがYesと言わせる気も無かった。最初から開戦の口実の為だ。日本海軍は12月8日早朝を攻撃予定日として交渉を行った。アメリカにヨーロッパ各国のアジア植民地の放棄を承認させる事だった。

1941年12月2日遂に日本は政治的交渉決裂を判断する。アメリカにはそんな気は無かった。辛抱強く、交渉する。ルーズベルトはアジア人に偏見はあったが、アジア人である日本がアメリカを叩きのめすつもりであるという発想自体が無かった。経済制裁で困らせて、適当な点で妥協するつもりだった。


17:30「ニイタカヤマノボレ1208」が大本営から機動部隊へ暗号電文が発しられる。

12月8日真珠湾攻撃の命だ。

第一航空艦隊司令官、小沢治三郎中将は旗艦「赤城」に坐乗していた。第一航空艦隊の司令官は南雲中将では無かった。司令官としての適正試験に彼は落ちて、現在は兵学校の校長となっていた。そもそも彼は砲雷撃戦のプロであり、航空畑は専門外だった。旧史の人事には問題があったのだ。

真珠湾攻撃の主目的は航空基地・敵飛行機、副目的は戦艦・空母だ。もっとも、空母はいないだろうという観測が多数を占めた。流石にアメリカ海軍も太平洋方面の戦力強化、主に航空機の戦力充実を開始しており、航空機運搬船(Air crafy carier)である空母が真珠湾に停泊中とは思えなかった。旧史と同様に。だが、今回の奇襲の目的は真珠湾の施設であり、戦艦では無かった。真珠湾の重油槽やドックを破壊すればアメリカ軍の活動能力を大幅に低下できる。戦略的に極めて重要であった。真珠湾を叩かなければアジア圏の欧植民地解放は難しい。この真珠湾奇襲が見送られ無かったのは一重にこの1点に尽きる。そうでなければ、この危険な奇襲攻撃は実施を見送られただろう。

攻撃回数は第二次攻撃までと予め決められた。理由は第三次攻撃は強襲となり、被害が甚大となる可能性が高かった事と真珠湾周辺に長時間攻撃を続ける事はあまりにも危険と考えられたのだ。潜水艦や敵空母の動向は不明な為だ。ヒットアンドウェイに徹する事とされた。

12月8日早朝、第一次攻撃隊が上空で戦闘陣形をとる。それは圧巻であり、力の象徴であると思えた。

午前1時30分第一次攻撃隊が進軍する。この1時間前、日本アメリカ領事館よりアメリカへ宣戦布告の書簡をアメリカ政府へ渡した。アメリカ政府は大騒ぎとなった。直ちに太平洋司令長官キンメルへ電文を送ったが、キンメルがこの電文を読んだのは。日本軍第二次攻撃隊が去ってからだった。

AM7:49第一次攻撃隊が真珠湾上空に達すると、攻撃隊指揮官淵田「全軍突撃」(ト・ト・ト・・・のト連送)を下命した。真珠湾は突然の訪問者に叩き起こされた。

たちまち、真珠湾の施設、滑走路の航空機や艦船から火柱が登った。艦爆隊は戦艦や対空砲火などの対空兵器を制圧、艦攻隊は水平爆撃でドックや油槽を攻撃した。戦闘機隊は滑走路の航空機を攻撃。

AM7:52淵田は旗艦赤城に対してトラ連送「トラ・トラ・トラ」を打電した。これは「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する暗号略号である。

第一次攻撃隊は実に360機もの規模になった。赤城以下6隻の空母は油圧式カタパルトを装備しており、攻撃隊のほぼ全てを同時に発艦させる事が可能だった。

奇襲となった第一次攻撃隊により、真珠湾のドック、重油タンク、滑走路等の施設は壊滅した。航空機もほぼ全滅していた。もっとも、航空機があっても滑走路が使用不能なため、離陸不能だが。。。

AM7:55戦艦アリゾナより空襲警報が発令された。そして、AM7:58アメリカ海軍の航空隊より「真珠湾は攻撃された。これは演習ではない」とかの有名な警報が発報された。

第二次攻撃隊が発艦したのは旧史より遅れる事2時間AM10:54だった。第一次攻撃隊帰還後編成された為、旧史より大幅に遅れた。赤城ではこの時点での離脱は考えていなかった。第一次攻撃隊ではアメリカ軍戦艦を攻撃していなかった。全ては真珠湾の機能の停止を目標と考え、第一攻撃目標は真珠湾の施設のみだった。唯一の例外は艦爆隊の攻撃だった。爆弾では戦艦は沈まない。もちろん皆承知していた。しかし、アメリカ軍戦艦群の対空設備は重要な攻撃目標だった。だが、現在、戦艦の対空能力は消滅しており、味方戦闘機の援護も無い。丸裸な状態だった。これを見逃さない軍人はいないだろう。

第二次攻撃隊は約160機での攻撃となった。機数が大幅に減じたのは、稼働機の内、被弾していない機体だけを使用した為だ。ハワイで落ちた機体は救助できない。ハワイから早期離脱が予定された作戦で無駄に搭乗員を失うわけに行かなかった。

第二次攻撃隊の戦果は旧史より少なかったが、戦艦オクラホマ、ペンシルバニア、アリゾナ、ウエストバージニアが着底した。

「随分歴史が変わってしまった。」
遥は一人空母「紅鶴」艦橋で呟いた。真珠湾攻撃は旧史と同様行われた。しかし、旧史と異なり、追い詰められての開戦では無かった。必要の無い戦い。この戦いは鳴海以下JSDFの私戦だ。それだけでは無い、欧州線線では大きな違いがあった。皮肉にも遥達遣欧団のおかげで、ドイツは対英戦の可能性を考え、日本製空母6隻、自国製グラーフツェペリン級2隻、更に、戦艦テルピッツを開戦に間に合わせた。

その為、デンマーク海峡海戦において、戦艦ビスマルク、テルピッツ、重巡洋艦プリンツオイゲンらと英国海軍プリンスウエールズ、フッドが交戦。フットは轟沈、プリンスオブウエールズはビスマルクとテルピッツによりあっさり撃沈される。この時、プリンスオブウエールズより被弾したビスマルクは目的であった英海軍補給戦寸断作戦「ライン演習作戦」から離脱する事になる。

ビスマルクはテルピッツ、プリンツオブオイゲンと別れ、フランスへ向かった。これに対して復讐に燃える英国海軍は稼働中の全ての大型艦をビスマルク追撃戦に投入した。しかし、ドイツ海軍はビスマルク援護、というより、誘き寄せられた英艦隊を一掃する為、空母グラーフツェッペリン級2隻、日本製中型空母6隻を投入。英海軍はこの戦いにより、空母アークロイヤル、ビィクトリアス、戦艦キングジョージ5世、ロドニー、巡洋戦艦レナウンらを失った。この戦いにより、英海軍がインド洋に戦艦、空母を派兵する可能性は無くなった。アジアの植民地どころでは無い、本国の命運が尽きかけているのだ。

「アメリカ軍は残った空母をどう配分するのかしら?」

「どうされたのですか?」

参謀長の中村椿が問いかける。

「いや、ドイツ海軍の話しは知っているでしょ。アメリカ軍は大西洋と太平洋の両面作戦を強いられるわ、でも、手持ちの空母は7隻。太平洋のエンタープライズ、レキシントン、大西洋のサラトガ、ホーネット、ヨークタウン、ワスプ、レンジャーよ。大西洋の空母の何隻かは太平洋にくるでしょうね。流石に西海岸を丸腰には出来ないでしょう。

「そうですね。確かに、大幅に敵空母の数は増えますね。ああ、真珠湾で1隻でも空母を撃沈出来ていれば。。。」

「大丈夫よ。仮に大西洋の空母が全て太平洋に来たとしても、我が海軍空母の数的優位は変わらないわ。安心しなさい。」

「そうでした。本田司令の言う通りです。全部撃破すれば良いんですよね。こちらの方が数は上ですものね。」

「そうよ。」

『エセックス級が完成するまでは。。。』

心の中で思案する。そう、新史の戦略も旧史と同じだ。短期決戦、おそらく短期間で真珠湾を攻略しないとアメリカは和平に応じない。その間に新型空母エセックス級が月1隻のペースで量産される。力をつけたと言ってもアメリカの方が圧倒的な国力を持つことに変わりはない。

「ドイツ頼みかな。」

「えっ?今なんと?」

「いや、気にしないで、ドイツ軍が沢山アメリカ軍の空母を撃沈してくれたら、楽なのになー。なんて思ったのよ。」

「確かにそうですね。」

中村参謀長は笑う。

『ごめんね。本当の事言えなくて。』

中村参謀長は女性だが、平成出身ではない、遥は全てを話す事は出来なかった。


太平洋の新な歴史が1ページ進んだ。以前と似ているが異なる歴史をだ。