2020年中国と開戦した日本は中国軍航空母艦による首都東京空襲により壊滅する。核兵器が使用され、東京は廃墟と化した。この戦いで、同盟国アメリカは参戦しなかった。日本は見捨てられたのだ。遥達防衛省技術開発本部の面々は核爆弾の直撃時に昭和元年にタイムスリップした。皆、中国、アメリカへの復讐に燃えていた。皆、家族を東京空襲で亡くすたのだ無理も無い話だった。
防衛省技術開発本部がタイムスリップしたのは帝国海軍海軍施設内だった。遥達と帝国海軍軍人が接触すると、たちまち海軍上層部は大騒ぎになった。開発本部長「鳴海 晃」と海軍の連合艦隊司令長官「加藤 寛治」、軍令部長「鈴木 貫太郎」とが会談を持ち、技術開発本部と海軍が協力する事となった。
技術開発本部は海軍内でJSDFと呼ばれる事となった。遥と隼人は海軍に配属された。
タイムスリップから5年、日本には変化が出始めていた。大規模な景気刺激策により好景気に湧いた。旧史の製糸業に加えて化学繊維業界が業績を延ばしている。日本のGDPは年10%位の成長ぶりだった。
「はあ、暑い。又、朝か。。」
麻子は今日も憂鬱な朝を迎えた。
「あっ、なんか涙が、出てきた。」
麻子は奮進兵器開発課の課員だ。彼女の同僚は杉浦綾香と高村篤人だ。
最も、最近人と話していない。
「私って皆から見えない性格なのかな。」
彼女はそう喪女だ。何故か彼女は男からも女からももてない。というか認知されない。。。
彼女は努力家で、仕事熱心だ。最初はただ、熱心で、皆、自分の事を気にしていないと思っていた。しかし、それは違った、彼女は人から関心をもたれないのだ。
彼女は以外と奇麗だ。スタイルは特別良くも無いが、悪くもない。しかし、皆、気がつくと彼女の存在を忘れてしまう。クラスに一人はいる、そういうタイプの女性だった。
最近、同僚の高村と杉浦が仲良くなり、相対的に自分の存在が消えていくのを彼女は感じていた。
「昨日は誰かと話したっけ?」
自問自答する。記憶に無い。
「2人が2人だけの世界にいっちゃっているからな。しょうが無い。」
2人以外にも課員はいるが、残念ながら他の人々は2人以上に元々彼女に興味が無いからこの様な事態になった。今日も、孤独な朝を迎え、何故か涙した。
「私、何やっているのだろう。」
彼女が涙した理由。彼女は夢の中で、射撃指揮装置の電子装置の難題の夢を見ていた。真面目な自分。馬鹿みたいに真面目で、それでいて誰からも愛されない自分に涙したのだ。
「今日も研究だ。一人で。」
彼女が住んでいるのはJSDFの官舎だ。海軍の施設だ。この当時としてはとてもおしゃれな家だ。
西洋のベッド、机、いす、シャワーに、わざわざ輸入した洋式トイレ。窓はなんとこの時代にガラス製だ。キッチンは電気式のコンロを装備とかなり平成の時代に近い。もちろん、この昭和初期の時代の経済状況からいうと、信じがたい贅沢だ。しかし、海軍のこの平成人への配慮から、この官舎は作られた。
今日も洗面台で歯磨きと洗顔をする。鏡には魚が腐った様な目の女が映る。
「目が腐っている。」
以外と奇麗なのだが、確かに彼女のルックスは目が台無しにしていた。ただ、明るくなれば良いだけなのだが、彼女がそれを知るにはかなり時間が必要だ。
麻子は官舎を出るといつもの様に歩いて旧開発技術本部、今のJSDF本部へと向かった。
見慣れた赤煉瓦。JSDFの敷地は海軍施設内にあり、敷地の周りは赤煉瓦で埋め尽くされていた。JSDF本部が外部から見えない様工夫されているのだ。
JSDFの門の前に衛兵がいる、銃を持ち、警備中だ。麻子が通りかかると敬礼した。
良かった。見えている。彼女は少し、幸せを感じた。しかし、少しして落ち込んだ。
いつもの様にロッカールームで着替えると、研究室に向かった。
途中、高村とすれ違う。高村さんカッコいいな。そう思う。もちろん、彼が綾香の事を好きで、綾香も高村の事を好きなのは知っていた。邪魔する気はない。というか、高村様と私がなんて、なんて恐れ多いとさえ思っていた。
高村通りすがった後、
「あっ、鼻血でた。」
ちょっと、興奮しすぎた。彼女はその明晰な頭脳で高村と自分との間のラブシーンを数秒間に何通りも妄想した。結果の鼻血である。
「私って、本当、きもい女だな。」
自己嫌悪に落ちる。朝からヘービー級ボクサーのストレートパンチをもろに喰らった感じだ。
気を取り直して、研究に打ち込む。この時間が彼女にとって、一番幸せである。他人を全く感じないで済むのだから。
いつもの様にランチを食べる、もちろん一人でだ。
「美味しい。」
一日の最大の幸せを噛み締めた。
彼女は一人でもあまり気にしなかった。他の人に話しかけられたりするとかえって、きまずくなる。
一日中働いて、気がつくと夜の7:00位だ。
「もう、こんな時間か。。。」
今日も、誰とも口をきかなかった。昨日もだ。一体、いつからだろうか。。。
もしかして、私って、誰からも見えない、シックスセンス的な存在で、本当は存在しないんじゃ。
馬鹿な事を考え始めた時、突然、
「あら、麻子ちゃん。お疲れ様、今日はもう上がりなさいよ。最近打ち込みすぎよ。」
「そうだぞ、熱心なのはいいが、ちょっと、顔色が悪いぞ。」
綾香と高村が麻子に話しかけてきた。
「はい。」
麻子はとても嬉しかった。久しぶりの会話だ。それに、少なくとも、2人は私が見えている。いいんだ。例えシックスセンス的な存在でも、2人に見えていれば。。。
彼女は涙を拭った。
JSDF本部の門で、衛兵がたっている。敬礼するのかな、存在位は感じてくれるのかな?
それ以上の感動が待っていた。
いつもの様に衛兵が敬礼する。そして、
「いつもご苦労様です。今日も遅いですね。」
麻子は顔がほてるのを自覚した。そう、衛兵はイケメンだった。
にやつく自分を抑えられない事に腹立ちながらも、
「イケメンと話ができた。」
感動する。明日を生きる勇気がもててきた。そして、鼻血。
それだけではなかった。
「私、高村さんと綾香さんだけじゃ無くて、他の人からも見えるんだ。」
彼女はとても低いハードルを乗り越えて元気を取り戻した。
1ヶ月はテンション保てるな。彼女はそう思い、帰途についた。
「今日は射撃指揮装置の夢を見なくてすみそう。」