15.スタンバイとDH
クルーが出入りするオペレーションセンターには、クルー一人一人に、
メールボックスが用意されています。
そのメールボックスに、毎月月末、翌月のフライトスケジュールが入れられます。
日付が書いてある細長いスリップに、便名が書かれているもので、例えば、
3日~12日のところに ― F431 CPH ― と書かれていると、
431便コペンハーゲン往復乗務ということ。具体的には
TYO(東京)-ANC(アンカレッジ)-CPH(コペンハーゲン)-ANC -
TYO というルートです。
フライトから帰ってくると2~5日休みがあります。
長い便に乗務すれば、長い休みになりますし、短い便だと
2日ほどでまた乗務することもあります。
さらに、フライトスケジュールには、便名とH(ホリデー)以外に、
Sの文字が結構あります。
これはスタンバイということ。
フライトには乗務する人数が決まっていますから、誰かが欠勤すると
すぐ変わりのクルーを手配しなければなりません。
人間ですから病気もしますし、怪我もします。
家族や親戚の不幸なんてこともあるわけです。
それで、誰かが欠勤して、いつ呼び出しがかかってもフライトできるように、
スタンバって(待機して)おくわけです。
今のように携帯電話なんてありませんから、自宅に缶詰です。
スタンバイで呼び出される時は、どこへ行くか直前にしか分かりませんから、
私服は冬服も夏服も全部すぐに出せるようにしておきます。
呼び出しで長いフライトが入った時は、当初のスケジュールが
変わってしまうこともあります。
楽しみにしていた便が別の便に変更になってしまうこともありますが、
それはそれで、新たな楽しみにもなります。
それと、たまにスケジュールに DH と書いてあることがあります。
これ何の略だと思います?
実は Dead Head と言って、仕事をしないで飛行機に乗って移動することなんです。
便の関係でクルーが余ることがあったり、海外で欠員が出て、
東京から代替要員として現地に向かう時など、お客様と一緒に客席に座って行きます。
私服で行きますから、お客様にはわかりません、
と言っても雰囲気でクルーとバレバレなんですけど。
それにしても、Dead Head ってねえ。