【作品分析①風刺劇】 | OPERA NOVELLA ~夢の舞台への軌跡~

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歌劇「ドン・パスクワーレ」
2024年7月21日(日)
ハーモニーホール座間・小ホールにて開催予定。こちらのブログ、Twitter、そしてfacebookページにてお知らせして参ります。どうぞご覧ください。

    歌劇〈ドン・パスクワーレ〉の本番までちょうど一ヶ月となりました💐ソリストの立ち稽古も始まり、幸せな時間を過ごしております☺️残りチケットは【20枚程度】です🎫迷われている方、ここの投稿で興味を持たれた方、是非ご観劇下さい😌
    私達が「一つの真の答え」を示します🤝

♪♪♪♪
    皆さんは歌劇〈ドン・パスクワーレ〉にどの様な印象をお持ちでしょうか?おそらく多くの方が【年寄りを騙す作品】だと仰るでしょう。私はこうしたイメージに、海外と日本とでは大きな差異があると感じております。今回はその違いについて、お話いたします😌

【コメディア・デラルテについて】
    まず〈ドン・パスクワーレ〉を語る前にイタリア地方※で生まれた即興演劇「コメディア・デラルテ」についてお話をせねばなりません。※まだイタリア王国が誕生していない為、イタリア地方と記載します


アントワーヌ・ヴァトー

「イタリアの喜劇役者たち」(1720)


    この即興演劇の誕生は16世紀中頃とされます。17世紀前半、当時の民衆は無教養で文字すら読めず、情報を入手、理解する手段がありませんでした。そこに着眼点を置いたコメディア・デラルテの劇団が、当時の時事問題を取り上げて風刺劇を行うと瞬く間に大人気となりました。※大河ドラマ〈光る君へ〉でも日本版コメディア・デラルテ【散楽】が登場していましたね

    上流階級の人達にとって煙たい存在だったコメディア・デラルテ。イタリア地方の政治情勢悪化と伴い、より稼ぎの良いパリへと亡命しました。その後、とある貴婦人を風刺したことが露呈し、ルイ14世によって1647年コメディア・デラルテの興業が禁止されました。

    その後、1715年にルイ14世が亡くなり、興業は無事再始動しますが全盛期から既に70年近くが経ち、即興的なイタリア的伝統は失われ、戯曲によるフランス演劇化が進みました。

【(休憩)こそこそオペラ話】
     この後、オペラ界ではペルゴレージ作、喜劇〈奥様女中(1733)〉がナポリで初演され、イタリア地方オペラvsフランスオペラの優劣を比べる「ブフォン論争」が起こりました。哲学者ドゥニ・ディドロ(1713〜1784)が母国フランスオペラではなく、イタリアオペラを褒め称えたのは驚きでした😳こそこそ🤫

【カルロ・ゴルドーニについて】

カルロ・ゴルドーニ


    その後、ヴェネツィア共和国でコメディア・デラルテの戯作家カルロ・ゴルドーニ(1707〜1793)が活躍します。彼は現在の演劇論の礎を築いたといっても過言ではありません。

    パリ演劇とイタリア地方の演劇に圧倒的な実力差を感じたゴルドーニは、質の悪い伝統的な即興演劇ではなく、パリ演劇の様により洗練された感覚を取り入れ、ヴェネツィアだけにとどまらずより広い範囲で活躍を試みました。

    ですが、〈トゥーランドット〉の作者である同じヴェネツィア共和国の劇作家カルロ・ゴッツィ(1720〜1806)と意見が対立し、ヴェネツィアを離れ、パリへと亡命。後のフランス市民革命に振り回され、極貧の晩年を過ごします。

【ガエタノ・ドニゼッティについて 】

ガエタノ・ドニゼッティ 

    ドニゼッティ(1797〜1848)もまた台本や演劇に対し、不満を抱いていました。歌劇〈ドン・パスクワーレ(1843)〉では作曲のみならず、台本にも口を挟む様になり、完成後、台本作家ジョヴァンニ・ルッフィーニ(1807〜1881)は名前を明記しないことを要望しました。当時は作曲家よりも台本作家の方が立場が上だったのですが、己の詩文を何度も何度も訂正されたことで苛立ちを覚えたのでしょう。

    時間を少し遡りましょう。テノール発声技法の変化に付いて行けず、ドニゼッティの新作で再起を誓ったフランス人歌手アドルフ・ヌーリ(1802〜1839)。ドニゼッティは彼からパリの演劇論を学び、手を取り合い、ナポリで歌劇〈ポリウート〉の開催を計画しますが、検閲に引っかかり中止となってしまいます。

    歌手ヌーリはそのショックのあまり自害をしてしまいます。ドニゼッティはカトリックのそうした厳しい検閲、ナポリの生まれでないことで満足した職を得られず、最終的に巨匠ロッシーニのスカウトによってフランス・パリに職場を移します。

【風刺の表裏】
今回お伝えしたかったことは
「どの時代も風刺的な行いをするのは決して容易ではなかった」

    皆さん、一度よく考えていただきたいです。歌劇〈ドン・パスクワーレ〉はフランスのパリで初演されました。舞台はカトリックの総本山ローマ⛪️話の内容は結婚詐欺や離婚、未亡人…etcです。カトリックの影響を真っ先に受けるイタリア地方で、この〈ドン・パスクワーレ〉が無事に初演されると思いますか?

    視点を変えてお話しするとしたら、映画〈ニューシネマパラダイス〉で、司祭が映画のキスシーンに検閲をかけ、フィルムを切るシーンがございました。この映画の舞台はシチリアでしたが、ナポリ、ローマといった教皇領だった地域は現在でも少なからず影響があります。

    現在、日本に生きる私達もです。昨今、汚職事件や裏金問題、世代、沢山の問題があります。その首謀者が痛い目に合うストーリーを可哀想だと思いますか?状況にもよりますが、行き過ぎた行いは是正しなくてはなりません。

    日本人は性根が出来すぎた人が多いのも事実ですけどね(私も含め😉🤣)。

【革命/維新】の意味の違いはトップが殺されるか生かされるかです。

フランス市民革命で、ギロチンに掛けられたルイ16世。

では、パスクワーレはどうでしょう?

     シェイクスピア四大悲劇の〈リア王〉と違い、周りによって改心し、人を許せる〈ドン・パスクワーレ〉だからこそ、大円団で幕を下ろせるのだと思います。

    ここまでご覧いただき、如何だったでしょうか?この作品の魅力を少しでも伝えられればこの上ない喜びです😌
    
    次は【女性の権利】についてお話ししたいと思います😉最後までご覧頂き有難う御座いました🙇🏻‍♂️

次回もぜひお付き合いください🍀

演出家・古川寛泰