さて、「ヤシの木みたいな松」の番外編である。
「ヤシの木みたいな松」のステークホルダー(利害関係者)としては、周辺住民・地域住民・行政・工事業者が登場する。
本編において登場したのは周辺住民・地域住民・行政である。
本編においては、その三者の立場からこの問題を考察した。
しかし、経営者・事業責任者・プロジェクトマネジャー・現場リーダーの多くは、工事業者の立場に近いはずである。
したがって、この番外編においては、工事業者の位置で「ヤシの木みたいな松」の問題を述べてみたい。
工事業者は、登場人物の中でもっとも影響力が弱く発言力も弱い。
「言われたことを言われたとおり」にやれば良い立場である。
本件に関しても、「いかんともしがたい立場だった」「どうしようもなかった」と考えることが可能である。
しかし本当にそうだろうか?
「ヤシの木みたいな松」に直接手をくだしたのは、誰でもない工事業者である。
工事業者の在り方によっては状況を変える可能性はあったと考える。
工事業者の立場であっても創造思考型経営の思考様式や行動様式は持つべきである。
たとえば、工事業者が行政からの発注に対して反応的に対応するのではなく、そのリクエストの背景にあるものをじっくりと自らの頭で考えたらどうなったであろうか。
周辺住民の話しに耳を傾ける場や、地域住民と松並木の関わりあいを観察する機会をもったら何か違うことは起きなかっただろうか。
そうすれば、自分達の能力の範囲内で反応的に対応するのではなく、樹木の専門家に相談する等の行動も生まれるのではないだろうか。
そして、そこから創造的な解決案が生まれ、発注担当者である行政に提案することもできるはずである。
場合によっては、工事業者がリーダーシップを発揮して、この問題を創造的に解決するプロデューサー的な役割を担うことさえもできるかもしれない。
もちろん、工事業者の立場で創造思考型経営を行っても、成果に結びつかない可能性は高い。
発注者である行政から「余計なことを考えず、指示したことだけをやっておけばよい」と一蹴されるかもしれない。
住民たちからも、冷めた反応をされるかもしれない。
しかし、だからといって自分の使命を限定的にとらえて、受動的かつ反応的な立場に固定していては、未来はない。
「言われたこと言われたとおりにやる」業者なら世の中には山ほどいる。
そこには、競争上の優位性はない。
創造思考型経営をつづけていれば、短期的には結果が出なくても、それはいつの日か何らかの実を必ず結ぶ。
数年後に、世の中から選ばれている企業になっているかどうかは、それで決まるのである。
(了)