「ヤシの木みたいな松」と創造思考型経営(3) | 外部環境に支配されない経営術:創造思考型 経営コンサルタント 中村文彦

周辺住民からの「枝葉を切って欲しい」という要望を受けた行政は、ニーズに対して迅速かつ丁寧に対応はしていると思うが、自分の頭でちゃんと考えていない印象を受ける。


言われるがままに行動しており、受動的かつ反応的な対応である。


そのために住民の要請の根底にある本質的な問題を定義できていない。


これが今回の事態を招いてしまったと言える。



創造思考型経営においては、顧客から提示された要求に受動的・反応的に対応することは厳禁である。


顧客との対話や観察を行うことで、ニーズの背景や意味を探究し洞察し、その上で課題を再定義し、潜在的なニーズを顕在化させる。


なぜなら、人間というものは、自分の真の課題やニーズに気がついていなかったり、見落としていたりすることが多いからである。



対話や観察を行えば、顧客に対する共感が生まれ洞察が可能になる。客観性を保ちつつも、相手の立場や視点を得られるのである。(これが創造思考型経営における「インサイトマーケティング」である)



行政が周辺住民の声に深く耳を傾ければ、周辺住民のニーズは「安心して生活したい」ということであり、「枝葉を切って欲しい」というのは表面的なニーズであることに気がついたはずである。


対話をすることで、周辺住民には、松並木に対して被害者意識だけではなく、愛着があることも理解できたはずである。



松並木を自分の目でじっくりと観察すれば、周辺住民を含めた地域全体の住民と松並木との関わり合いも理解できる。


住民の松並木に対する思いや、住民が松並木から受けている恩恵も明確にすることもできる。


そうすれば、周辺住民だけでなく、この件に関しては市民団体をはじめとする地域全体の住民との対話が必要なことがわかるはずである。



そして、多くの地域住民が参加する話し合いの場を持てば、周辺住民やその他の地域住民の間にも共感が生まれるとともに、行政も自分自身がこの問題に大きく関与してることに気がついた可能性がある。(これが創造思考型経営における「ホールシステムアプローチ」である)


行政は、地域住民の生活や人生と深く関わりを持つ松並木に対して、自分たちが「管理外」ということで無関心であったことが、問題の本質であると再定義できたのではないか。


問題の本質を定義できれば、今回の事態に対しては、住民すべてのニーズを満たす創造的な解決策を生み出すことができたと考えるのである。



さて、樹木の専門家は「手の施しようがない」という判断を下しているが、現在の状態からでもできる創造的な解決策はあるはずだ。


次回は、「ヤシの木みたいな松」に対して少しでもポジティブな解決策を生み出すために、私なりの提案をしてみたいと思う。


(つづく)