横山やすしといえば一世を風靡した西川きよしとの漫才コンビ『やす・きよ』
だが、破天荒な芸人としても知られる。映画出演も多数あるが
今作は映画初主演である。原作は小林信彦の大ヒット小説で
製作には紆余曲折があったようでウキペディアにも詳しく書かれていた。
※主演2作目の『ビックマグナム黒岩先生』(1985年)も有名。
あらすじ
対立する暴力団島田組の島田組長(遠藤太津朗)を
襲撃し刑務所に入った元ボクサーのダーク荒巻(横山やすし)
は出所そうそう島田組に攫われ、殺されそうになり、
辛くも逃げ出すが、事務所につくなり唖然とする。
会長の須磨(丹波哲郎)の鶴の一声で『須磨組』は株式会社となっていた。
ダークを兄貴分の黒田(伊藤四朗)は温かく迎えるが、
ダークに新しく与えられた仕事は須磨組長の愛人であるスナックのホステス
ひとみ(甲斐智枝美)を歌手としてデビューさせスターにすることであった。
ダークは芸大出身の原田(桑名正博)とともにプロジェクトを進めるが…
重要な点
小林信彦によるベストセラー原作の今作は、
はじめに松竹で映画化の話が来て二転三転し、最終的には東映で映画化になったとのこと。
監督や主演も色々なキャストに変わったが最終的には横山やすしが快諾し主演となった。
監督は日活出身の『嗚呼‼花の応援団』『嗚呼‼花の応援団2役者ヤのぉー』を演出した
曽根中生が最終的に呼ばれた。監修は『仁義なき戦い』シリーズの笠原和夫が担当し脚本は
内藤誠と桂千穂が担当しているが大方の骨組みは笠原が書いたとのこと。
良かった点
ダーク役の横山やすしは動きにキレがあり、暴力(喧嘩)のシーンは一発OKだが
セリフはNG連発だったとのこと。ボートの操縦シーンは流石のカッコよさ。
原田役の桑名正博も歌手出身とは思えない演技の旨さ。痺れる2枚目でもある。
そしてヒロインの甲斐智枝美は前作『逃れの街』で演技開眼し、我儘なホステスから
スターに上り詰めていく女性を好演している。
悪かった点
主要な配役3人がフレッシュな顔ぶれになった分、脇を固める俳優陣は手堅く豪華。
わがままでぶっ飛んだ組長役の丹波哲郎、原作では主役のダークの兄貴分黒田役の
伊東四朗、スッポンのようにしつこい嫌味な刑事役の杉浦直樹などこちらは
丁々発止の演技で安心してみていられた。ラストもドンデン返し的な展開で
いい終わり方だった。かなりの力作で東映もシリーズ化を目指したが収益が物足りず
続編はなかった。松竹で作っていたらシリーズ化したかもとなど考えると楽しい。